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Sil-ENT 静かなる玉座  作者: 寺田卍丸
第一ノ章 サンビタリア王国編
3/17

第ニノ話 笑顔。

この時間、老骨には少々厳しすぎます。

まだ状況を整理しきれていない。

俺はかつて王の資質を持つものとして玉座争奪戦を繰り広げて、ナイトメ家に記憶を改竄されて偽りの生活を送らされて、黒い霧に襲われて

「あぁぁぁぁ!何から何まで理解できねえよ!まずなんだよ玉座争奪戦って!」


「本当に何も知らないのね。」


それはないでしょ天使さんもとい悪魔さん。

こちとら今置かれているどうしようもない現実を叩きつけられて絶望の縁にいるというのに。

はいそうですか、分かりました俺、王になります〜。

見たいな馬鹿げた発想にすぐ展開できるほどの順応性は生憎持ち合わせてないんだよ。


「私に憐んでほしいとか、慰めてほしいとか思っても無駄だから。」


はい、閻魔大王確定。悪魔止まりなんて優しすぎました。こんな絶世の美少女なのにこの性格じゃ台無しだぜ。本当に神様は馬鹿だな。本当に神様は…。


「んで、玉座争奪戦っていうのはなんなんだ?」


「先代の王なき今、この世界は大きく五分割されています。その各国々から王の資質を持つ者たちがその玉座を狙います。」


「でもなんで、その玉座に皆が皆固執しているんだ。玉座に座っただけで王になれるって言うなら分かるけど、世界中の人々を納得させないと支配した王とは言えないだろ?」


「玉座の在処は特定されていません。ですが、各国々は力で他国を制圧していくことによって自動的に全ての国を制圧した者が真の王たる者として考えています。」


おいおい、マジかよ。なんて脳筋な奴らの集まりなんだよこの世界。本当に俺が元居た現実って古くてお堅い奴らの集まりなのね。

先代の王がいたってことは俺が御伽噺だと思い込んでいた話も本当の話ってことか。

そこまで記憶が改竄されているってことは…。

もしかして俺って…。


「おい天使ちゃんいや、閻魔大王様。もしかして俺って強かった?」


自分で聞くのも恥ずかしいがまずは俺の強さを知らないと始まらない。王の資質を持つ俺がそんな記憶を改竄される程、厄介で最強な男だったのかもしれないしな。


「強かったです。ですが、お馬鹿でどうしようもなくて、それにいびきはうるさくて。歯は磨かないし、お風呂もしっかりと入らないし、それに」


「いやいやいや一言どころか二言、三言多いから。まず強さだけで良かったから。そんなに生活面のだらしなさを指摘されると結構心にグサグサきてるから!」


まぁでもまんまと記憶を改竄されて悠々自適に何事もなかったかのように何も知らない今の俺を見れば、本当に馬鹿でどうしようもないやつなのかも知れないな。

でもこの閻魔大王様はなんでこんなにも冷静なんだ。久しぶりに俺と会話するんだろ。

旧友な感動の御涙頂戴的なストーリーがあってもいいじゃないか。


「お前は俺と久しぶりに会えて、感動とかしないのか?」


「しませんよ。ましてや貴方ですもの。」


「結構辛辣だね閻魔大王様…。俺のライフはもう0よ…。」


「それに貴方をずっとこの部屋で見てましたから。」


「おいおい、こんな狭い白い空間の中で一人寂しく俺を眺めてたのかい。まったく恋する乙女みたいに可愛いことしてくれるじゃないか。」


「一人じゃないわ、貴方もこの部屋に居たのよ。」


助けてあげてください、神様。本当に何も理解できません。俺がこの白い部屋で居たって?

もしかして俺、この壮大な人生の偽物思い出話達をこのちっぽけな白い部屋の中で繰り広げてた訳?

幻覚超ヤバいじゃん。マジ最強じゃん。マジ天下無敵じゃん。


「まぁ落ち込むことじゃないわ。結構貴方を見ているだけでも可愛かったわよ。一人であんなことまでして。若い男っていうのは結構お盛んなんですね。」


「ちょーっと!ストーップ!ナイトメ家殺すナイトメ家殺すナイトメ家殺す!末代まで呪って殺す!幻覚の中でそういうことをやっていたとして断じて俺は普段からそういうことに勤しんでる訳では…。」


「まぁ話を続けるわ。」


あぁ、やっぱり冷静なんだ。普通ならあまり触れられなくて喜ぶところなんだろうけどこの状況じゃ僕の心がどうしようもなく報われません。


「貴方は王になれるとして、玉座に座り叶いたい願いはある?」


ここにきて、真面目な質問ですか。さっきの話は無かったことでおさらばですか。

まぁそれでいいんだけども、これ以上深掘りしてほしい訳じゃないけども。まぁいいや。


「王とか資質とか玉座とか。俺は何にも分かんねえし興味はないけどさ。争い事もなくてさ、貧富の差もないほんでもって無表情で冷徹な君が横で笑ってくれる。そんな幸せで静かな世界にしてみたいかな。」


俺は俺の思うままに答えた。嘘偽りのない、自分の気持ちで。


「本当に、昔から貴方は変わりませんね。」

その言って青髪の少女は初めて俺に笑顔をくれた。

その笑顔はどこか懐かしくて。


とても悲しい感じがした。


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