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愛の告白は突然に

 

 いよいよ定期テストまで後一週間となった。

 話があるとイーノックに呼ばれた。

 いつもと雰囲気が違う。重ための空気を感じ、何事かと少し緊張した。


「いよいよ来週だな」

「うん」

「大丈夫。トリッシュの頑張りを毎日見てきた俺が太鼓判を押すよ」

「毎日、根気よく教えてくれてありがとうございました。イーノックのお陰で何とかなりそう」

「何とかなってもらわないと困るな。トリッシュ、もし君がこの1年間の評定で無事に『優』 以上取れたら、俺と結婚を前提に交際してくれないか」


「えっ!?」


 何のドッキリかと思ったが、イーノックの表情は真剣だ。


「なっ、わ、私たち、出会ってまだそんなに……」

「時間は関係ない。俺には君しかいないと思うからだ。グズグズしてて逃したら、絶対に後悔する」

「んなわけ、」と全力でつっこんだ。


「なわけ、ないって。イーノックにはもっと美人でお金持ちのお嬢様で、頭のいい人がいくらでも……!」


「そんな平凡な女には興味ない。非魔法使いの両親から生まれて地方で育ったにも関わらず、非凡な魔法の才能があって、全く気取ってなくて、素直で可愛らしい君がいいんだ。血も遠いし」


 唖然とした。

 これは愛の告白……!

 なのか?


 こんなにかっこ良くて、名家の跡取り息子で成績優秀、オールA級ハイスペック魔法使いのイーノックが、私のことが良いって?

 ウソだ、何か絶対に間違ってる。誤解だ。


「イーノック、前にも言ったけど、私が凄い魔法が使えたのは災害時の一度きりよ。あれでみんなに凄く期待を持たせちゃったけど、ご期待に添えるかどうか。可愛くないし素直でもないわ。イーノックの周りが、綺麗なお嬢様ばかりだから、毛色の違う生き物が目新しくて見えて、いいなと思ってくれたのかも。それはそれで嬉しいけど、見慣れると変わるわ」


「君のそういう冷静なところもいいね。俺のこの情熱が、一時の気の迷いではないということを証明するためにも、一年という期間を設けた。この一年間の成果がお互いに示せたら、婚約してほしい」


 ん、どういうこと?

 そう言えば、私が「この1年間の成績評定で『優』以上を取れたら」っていう条件付きだったんだ。

 何で、付き合って下さいと言われる側が条件を出されるのか……いまいち腑に落ちないけれど。

 確かに、優以上取れなくて特待生から外されるような婚約者は、イーノックに相応しくないだろう。

 例えイーノックが良くても、 周りが絶対に認めない。というより、


「旦那様と奥様が、きっと反対するわ。お二人には何も言ってないんでしょう?」


 イーノックのご両親はそれぞれ国の重要機関の重役に就いているため、ほぼ職場に住んでいるようなもので、自宅には帰って来ない。


「話すよ。明日親戚行事があって、久しぶりに顔を合わせるから。ちょうど良い機会だから、このことを相談するつもりだ。きっと2人とも賛成してくれると思う。納得させる自信はあるよ」


「明日、夜?」

「朝から昼すぎ。学園は休むよ」

「親戚行事って、私は……」

「行かなくていい。俺はいないけど、いつも通りランチはジョセフに届けさせるし、生徒会室で食べるといいよ。鍵を渡して置くから」


 ぎょっとした。


「それは駄目。生徒会室はイーノックだから貸してくれているのよ。イーノックがいないときに勝手に使えないわ」


 イーノックと一緒でも肩身が狭いのに。

 セリーナたちが学園から去り、ランチは再びイーノックと取るようになった。

 クラスで一緒にいるメンバーを失い、周りから完全に浮いてしまった私を、お昼休みになるとイーノックが迎えに来るのだ。


 学園のキングにわざわざ迎えに来させていると噂になるのも恐ろしくて、生徒会室で落ち合うようになった。

 ウィレミナ様とはたまーに学園ですれ違うが完全に無視されている。


 一度イーノックに、私たちが一緒にいるとウィレミナ様がいい気分がしないのではということを伝えてみたが、


「トリッシュは、ウィレミナの気分を害するか害さないかが、自身の行動を決める基準なのか?」と尋ねられた。


「君がウィレミナの顔色を窺う必要はない。気に入らないことがあれば、俺に言ってって、ウィレミナ様には言ったから。トリッシュは気にしないで、堂々としてて」



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