表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/33

学生の本分は勉強ですから

 

「まさしくトリッシュのことだな」


 自分の価値を正しく分かっているイーノックは、私の価値を見誤っている。


「イーノック、私は全然優秀じゃないわ。S級の魔法が使えたのは、あの災害のときだけ。火事場の馬鹿力だったんだわ。普段の調子では、及第点を取れるかも怪しいわ。座学も全然ついていけないし。みんな6歳やそこらで魔法学園に入って、ずっと勉強してきたのよね。土台が違うわ、ついていけない」


 学園に転入して1ヶ月が過ぎ、感じていたことだ。

 学費が浮くと喜んで特待生制度に飛び付いたものの、早くも勉強についていけない。

 この調子で定期テストを受ければ、あまりに成績が悪くて、特待生から外されるんじゃないかと不安だ。

 勉強の悩みを打ち明けると、イーノックはすぐにこう言った。


「分かった。じゃあ一緒に勉強しよう。俺がトリッシュの家庭教師になるよ。平日の夜は家で座学を、休日には外で実践的なことを。俺がマンツーマンで教えれば、絶対に身に付くよ」


 そ、それはとてもありがたい申し出だけど、腰が引ける。

『絶対に身に付く』とまで言われたらプレッシャーが大きい上に、ウィレミナ様の顔がよぎるからだ。

 イーノックとはなるべく距離を置いて、ウィレミナ様を刺激しないように気を付けていたのに。


「それは悪いわ。イーノックにそこまでしてもらうのは」

「遠慮は無し。トリッシュの後見人になっているうちの親も、そうしろと言うだろうね。万一トリッシュが落第して、特待生から外れるようなことがあれば、うちの面子に関わる。トリッシュには権利と義務があるんだよ、ラングフォード家の一員として。やることはちゃんとやってもらわないと」


 う、それを言われると言葉がない。

『学費と生活費が浮くからラッキー』だけで済まない。

 そのための結果を出さなくてはいけないのだ。


「……はい、頑張ります」

「はい、良く言えました」


 どっちが年上だか。

 大人びた顔で微笑み、イーノックは言った。


「努力する人間は美しい。好きだ」


 努力を始める前から、プレッシャーばかりがかかる。

 3級以下の人間は交流価値がないと言い切るイーノックの評価基準は高い。

 頑張っても、そこまで至らなかったらどうしよう。私のS級認定は、まぐれ当たりみたいなものだから。


 本当に定期テストまでに何とかしなくっちゃ。困るのは私だ。

 こうなったら背に腹はかえられない。

 ウィレミナ様がどうとか、言ってられない。


「イーノック先生、何卒よろしくお願いします」

「うむうむ、苦しゅうないぞ」



 翌日から心を入れ替えて(?)勉強に精を出した。

 学生の本分は勉強ですもんね。さあ勉強勉強!


 あの断罪劇があり、セリーナが退学してから、他の友達2人も学園を去った。

 1人になった私は、クラスで腫れ物を触るような扱いだ。

 いや、触らぬ神に祟りなしだ。


 私に何か起こればイーノックが乗り込んで来ると、みんな学習したのだ。

 ラングフォード家の跡取り息子であるイーノックは、皆に恐れられている。


 イーノックのご両親を始め、ラングフォード一族は、国の重要機関の重役に就いていたり、大資産家だったりする。

 彼らの下で働いていたり、援助や融資をしてもらったり、仕事を依頼してもらっているのが、みんなの親や親族なのだ。

 だからイーノックのご機嫌を損ねることは御法度だ。


 私はイーノックの親戚とはいっても血は遠く、ラングフォードの姓を捨てて縁を切った家出人の曾孫だ。

 事情がありイーノックの家に下宿しているが、イーノックと親しい仲ではないと周りに強調していた。

 だから、私への嫌がらせの対応にイーノックが出てくるとはみんな予想していなかったのだろう。私も驚いたし。


 結果、みんなを騙したような形になってしまった。

 虎の威を借る狐になりたくない、クラスに友達が欲しいとイーノックを遠ざけておいて、結局イーノックに頼っている。



Wヒーロータグ付いてますが、いつになったらタイトルの『食堂のお兄さん』出てくるねんと自分でも思う今日この頃。

タイトル変えたほうがいいのかしらー。

てかヒーローは1人に絞ったほうが良いのかしら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ