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海辺のゴーレム

 

 週末、海辺の別荘で一泊二日の合宿が始まった。イーノックとの魔法の特訓だ。

 特訓はマンツーマンだが、別荘ではイーノック付きのボーイ、コリンも一緒だ。


 二日目、コリンの用意してくれた朝食を取ったあと早速砂浜へ出た。

 まずは体を温めるために散歩をして、軽くストレッチ、そしてジョギング。

 そのあと小休憩をして瞑想し、精神統一をする。それから6級程度の魔法から始めて、現時点で私が使える最難度の1級魔法までを実践する。


「いいね、その調子。今日は実戦形式で特訓しよう」

「実践?」

「実際に戦う方の実戦。俺が使役する使い魔と戦って」


 使い魔と戦うと聞いて腰が引ける私に、イーノックは「大丈夫、手加減するから」と言った。


「母なる大地の精霊よ 月に満ち臨み生まれたし大地の胎児 我が真理の下 強靭な肉体に宿り不屈の魂を以て使役せよ 泥人形ゴーレム


 目の前に現れたのはゴーレムだ。

 馬鹿でかくて、岩山のような身体をしたモンスターだ。

 今までもイーノックが呼び出した使い魔を見たことはあるが、それは小鳥の姿をした可愛いものだった。こんなごついモンスターを目にするのは初めて。


「ほら、戦って。ゴーレムには痛覚がないからロボット相手だと思って、遠慮なく。まずは砂塵で防御魔法」


 イーノックがコーチのように指導する。

 砂塵の防御魔法は、砂の粒をベールのように周辺に纏っておき、物理的攻撃が来ればそこに砂粒が集中して壁となる。

 サッカーゴールにボールが飛んできたときのセーブのようなものだ。

 周りにぐるりと壁を作っておくよりも魔法力の消費が少なく、こちらからの攻撃の邪魔にならない。


 イーノックの指示に従い、砂塵の防御魔法を発動させた。これは3級レベルの魔法なので私にも使える。

 防御魔法が発動したのを見届けてから、ゴーレムが大振りのパンチを繰り出してきた。

 動きがスローなので、どこにパンチが来るか分かりやすく、防御魔法で受け止めることができた。

 だけどそのパワーは凄まじくて、受け止めた衝撃で壁が割れてボロボロっと崩れた。


「駄目、弱い。もっと硬く。魔力を込めて」


 イーノックの指示が飛んで来る。

 それからボクシングのスパークリングのように、ゴーレムがパンチを繰り出しては、私が防御魔法で受け止めた。

 壁が割れては強度を上げ、割られない壁を創る。


「いいよ、いいよ! 防御はその感じで。次は攻撃してみよう」


 イーノックコーチの指導も熱を帯びてくる。


「そこで弾丸! ハンマー! 風、トルネードと組み合わせて! コンボ決めてっ!」


 ゴーレムは崩しても崩しても復元して、元通りになる。

 へばっているのは私だけだ。

 だけどなかなか良い戦いを出来ていて、実戦の勘みたいなものが身に付いていっている気もする。まあ全部、イーノックに言われるまま動いているだけだけど。


「そろそろ休憩しようか」とイーノックが言い、ゴーレムの動きがピタリと止まった。

 うんと返事をして、イーノックのそばに行こうとしたとき、イーノックがバタりと倒れた。えっ!?


「イーノック! 大丈夫!? イーノック!」


 膝から崩れ落ちて砂浜の上に倒れたイーノックに駆け寄り、そっと触れた。

 どうしよう、きっと魔力を消費しすぎたんだ。ゴーレムの使役を解かなくちゃ。

 召還者が使役魔法を継続できない状態になった場合、使い魔って自動的に任が解かれるんじゃなかったっけ?

 どうなんだっけ。学園で習ったことを思い出そうとするも、軽くパニックになっていて思い出せない。


 とりあえずコリンに知らせなくちゃ。

 別荘までは走って5分だけど、このままイーノックを置いていって大丈夫だろうか?


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