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夏期ワークショップ

 


 夏休みはたっぷり2ヶ月ある。始めの2週間と終わりの2週間は王都で過ごし、残りは実家に帰省することにした。

 夏休み間際の学園掲示板には、夏休み中に開催されるイベントや特別講座の案内が張り出されている。

 実家に帰省するしなあ、一緒に参加するような友達もいないし……とぼんやり眺めていると、声を掛けられた。


「トリッシュ様も興味がおありですか? パン作り」

「えっ?」


 声の主を見ると、同じ学年の女生徒だった。ただしクラスは違うし、知らない顔だ。

 ピンク色のくるくるカールした髪は短いショートカットで、ボーイッシュな髪型をしているのにとても女の子らしい雰囲気の、小柄な子だ。

 両手で抱えているノートから片手を離し、すぐ目の前の掲示板を指した。


「これ。楽しそうですよね~。わたし、一度パンをこねてみたかったんです。一緒に参加申し込みしません? ここで同じチラシを眺めていたのも何かの縁ってことで。あ、わたしはアニーって言います。同じ12年生で2つ隣のクラスです。この学園には去年編入してきました。仲良くしてくださいね」


 にこっと人懐こそうな笑顔を見せるアニーに一瞬気後れしたが、差し出された手を慌てて握った。


「よろしく、こちらこそ。パン作り講座……確かに楽しそうね」


 日程を見ると、夏休み入ってすぐの土曜日だ。実家へ帰省するまでにまだ日がある。

 イーノックは夏休みに入ると仕事をすると言っていたし。


「一緒に参加したいわ。アニーが良ければ是非」


 パン作りにも興味が湧いたし、何より友達ができるかもしれないチャンスだ。

 こういう予感は第一印象で決まる。アニーとは仲良くなれそうか気がする。


 予鈴が鳴り、私たちはパン作り講座へそれぞれ参加申し込みすることを約束して慌ただしく別れた。

 次の授業が始まってしまう。


 その後夏休みに入るまでの間、アニーと校内で何度か話をした。

 アニーはさらっとした性格で、急にベタベタと接近してくることもなく、イーノックと一緒にいるときは軽く手を振ってくるだけだ。


「誰?」とイーノックが眉をひそめた。

 友達と答えて良いか自信がない。


「アニーよ。夏休みの1日講座に一緒に申し込みをしたの。クラスは違うけど、仲良くなれたらいいなと思ってる」


「ふーん、まあ……前のトモダチよりはマシか。見たとこ3級だが。害は無さそうだ」


 言い方。

 イーノックの望む、交流すべき人間の基準『魔法レベル二級以上』は、クラスに一人いるかいないかだ。

 しかもそれはこの魔法学園のレベルが高いからであって、世間一般的には三級で十分エリートだ。


「何の講座? 俺に黙っていつの間に申し込んだんだ」

「パン作りよ。1日だけの講座だし、要るのは材料代だけだから、相談せずに決めても良いかと思ったの。駄目だった?」

「いや、いいよ。申し込む前に一言ほしかったけど。作ったパン、俺にもくれる?」

「上手くできたら」



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