運搬屋 魔王と会話する
「信用できるわけないじゃろ。そんな言葉を」
魔王は吐き捨てるようにそう言った。
その瞳には敵意が見える。
ただまだ行動に出ていないのは、いくらか弁明の機会を与えてくれているということなのだろう。
「待ってくれ。信用できないのはわかる。
確かに俺は貴方を殺したパーティの一味だった。
だが今日、俺はそのパーティーを追放された。
貴方を殺したことに何の罪は無いとは言わないが、
俺はもうアイツらに協力するつもりはない」
「なるほどな。お主も群れから追放されたのか……」
魔王の目が青色から緑色へと一瞬だけ光る。
何か魔法を使ったのだろう。
こちらの心だったり、嘘を見抜くものかもしれないし、
もしかしたら過去や未来を見る魔法かもしれない。
もしくはヤマトを殺す呪いや、洗脳するモノの可能性もある。
だがヤマトは嘘は言っていないし、そして魔王のことも信用していた。
彼は追放された魔物を守っていた。自分の命を犠牲にしてまで。
そして今にして思えば、魔王が直接人間の国に危害を加えた話も聞いたことは無かった。
人間の国が自衛の為に一方的にしたことなのだろう。
俺たち冒険家は敵の背景など気にすることはない。
正義か悪かは考えず、報奨金のままに依頼をこなす。
「罪滅ぼしだと思ってほしい」
そう、これは紛れもないヤマトの善意だった。
追放された魔王軍の魔物たちを、無事に新しい拠点を見つける手伝いをしたい。
そこに人間の国の思惑だったり、ヤマト自身の利益があるわけではない。
だからきっと魔王も信じてくれ―――
「大体お主の考えは理解できた。
本当に我々を助けたいということなのだな。
自分自身も追放された身だから、その辛さはわかると。
だから手を貸してやろうと。そういうことなのだな」
「はい。そうです」
魔王にやっと俺の気持ちが伝わってくれたのだろう。
すっと、胸をなでおろした。
だが、魔王は大きく息を吐き、そして――
「我々を馬鹿にするのも大概にしろ!!」
「!??」
魔王は怒声を飛ばした。
ヤマトには意味がわからなかった。
馬鹿にする?そんなつもりはこれっぽっちも―――。
「罪滅ぼしだ?追放された者を助けたい?
我々はお前のそんな自己満足の為に、助けられるつもりは毛頭ない」
「待ってくれ。誤解だ。
俺は本当に―――」
「ならば尚のこと悪い。
お主は自分に自信が無いから
他人を助けることで存在意義を見出そうとしておるのだ」
「そんなことは―――」
無いと言いたかった。
だが心のどこかでそう思っていたのかもしれない。
ユージにパーティを追放されて、自信がなくなって…。
自分の存在意義を見失っていたのかもしれない。
盲目のエルフの少女に声を掛けた時に、
危険を冒してまで話す必要ななかったはずだ。
俺は誰かを助けることで―――。
「お前は強い。他人に自分の存在意義を求めなくてもいい程に。
能力もそうじゃが、お前の意思は紛れもなく本物じゃよ。
だから自信をもっていい」
そう言って魔王はヤマトの頭を優しく撫でた。
今まで恐れていた魔王という存在は、
まるで父親のように優しかった。
「ワシのことや、魔王軍のことは気にする必要はない。
お前に助けられずとも、ワシの仲間はちゃんと生き延びてくれる。
じゃから、お前は自分のやりたいことをやるべきじゃ、ヤマト」
魔王は息をつき、真剣な目でこちらを見つめる。
「改めて問うぞ。
魔王を倒し、パーティを追放された、自由な身のお主の
本当にやりたいことはなんだ?」
「俺の本当にやりたいことは………」
ヤマトは深く考えた。
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