運搬屋と魔王の思惑
「故郷を追放された者の集まり?」
「はい、そうですわ」
城から出る準備をしているをしている、このモンスターたちが、
自分と同じように、追放されたというのか…。
「彼らは群れから、なんらかの理由で追放された者たちですわ
彼らの様子を見ていれば、それが不当な理由だったと大体想像がつきます」
モンスターの様子を見ていたら何があったのか想像させられた。
彼らの世界は人間の世界よりも、ずっと弱肉強食であり、多分弱い者に容赦がない。
「魔王様はそうしたハグれ者たちを集め、自身の庇護下に置きました。
魔王軍とは名前だけで、実際には寄せ集めの烏合の衆なのです」
ヤマトは痛くなるほど、自分の手を握りしめた。
「ですからどうか、見逃して頂きたいのです。
見ての通り、我々では貴方には到底かないません。
魔王様が救った命をどうか殺さないでくださいませ」
サキュバスは深々と頭を下げる。
格下の俺に対し。命の恩人を殺しただろう相手に対して。
これ程屈辱なことは無いだろう。
あのフェーンという獣人と同じように殺しに掛かりたいだろう。
それでも感情を殺して、仲間の為に頭を下げているのだ。
「わかった、約束する。君たちのことは王国には伝えないし、危害は加えさせない」
「ありがとうございます」
サキュバスは再度頭を下げた。
だがヤマトは心配だった。
本当に彼らを旅に出させても大丈夫なのかと。
サキュバスやフェーンという獣人なら大丈夫だろう。
大抵のモンスターや人間相手なら十分勝つことが出来る。
では盲目のエルフなら?片翼のドラゴンなら?
そもそもあれだけの大所帯を、どれだけ移動させるのだ?
期間は?宛てはあるのか?
もし無いのなら――
「―――っ」
唇を噛む。
このまま魔王城に居座ることを提案しようとした。
だがそれもダメだ。
魔王を倒し安全だと判断した今、国の人間がここに来るはずだ。
彼らが穏便に済ますはずがない。
もし戦争なんてことになれば――互いに無事に済むはずがない。
動いてもダメ。止まっていてもダメ。
「八方ふさがりだ」
自分たちがやった行為に、苛立ちを覚える。
だが今はどうしようもないことであり、
あの時にはわかるはずのないことだ。
今ならどうして魔王が俺たちに殺されたかわかる。
たった一人で挑んだのか理解できる。
魔王はわざと殺されたのだ。仲間を守るために。
彼の勝利条件は仲間を守ること。
もし俺たちのパーティーを殺せば、軍が出動し全面戦争になっていた。
魔王軍の実力を考えれば、人間軍は完敗しただろう。
だが仲間を無傷で守れたか?
恨みを買って、復讐されたかもしれない。
では戦わずに逃げればよかったのか?
それも無理だ。俺のスキルの所為で逃げ切ることは絶対に出来ない。
もし城に住み着く魔物を発見することが出来なければ、俺たちは周囲をくまなく探し回っただろう。
そうなれば傷ついた彼らに追いつき、戦闘が起こったかもしれない。
『魔王は自分を殺させることで、俺たちを満足させたのだ』
実際パーティーを追放させられなければ、俺は改めてこんな場所には来なかった。
王宮も祝祭でしばらくは調査に来なかっただろう。
何より魔王を倒していれば、他の魔物が居ないことを疑問とすることはなかった。
当然、魔王軍を追いかけて探すようなことはなかった。
ヤマトはどうするべきか深く考えた。
そして決意した。
「俺は君たちに協力する。君たちが安全に次の拠点を探せるようにサポートするよ」
「えっ!?」
それは意外な申し出だったようで、サキュバスもその隣で手を繋いでいるエルフの少女も驚いた様子を見せた。
だが同時に困惑してもいた。
当たり前だろう。敵が協力すると言っているのだ。
不信に思わないはずがない。
「信用してもらえないのはわかっている。
だから信用してもらう為に―――
俺は魔王を生き返らせるよ」
ヤマトのスキルは、一度でも行ったことのある場所に通じるゲートを作る能力。
それは天国だって例外ではない。
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