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運搬屋とゲートの使い方

「ヤマト、次は先程ゲートを作った近くに作ってくれ」


「えっ、はい!!」


 魔王の指示に、ヤマトは言われるがままゲートを作り出す。

 そして魔王は火のつけられた爆弾を再度ゲートへと投げ入れた。


「閉めるのじゃ」

「はい!!」


 今度は躊躇することなくゲートを閉めることができ、爆弾の強力な破裂音も聞くことはなかった。


「今頃ゴブリンの国は大変なことになっておるじゃろうな」


 魔王はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 その様子に本当に今は味方でよかったとしみじみ思えた。


「それで、これは何をしているんですか?」


 あくまで殺傷能力の無い爆弾だ。

 ゴブリンの国を攻撃しているというわけでもないのだろう。


「ヤマト、先程ゲートを作った場所の近くに、2㎝程度のゲートを作ってくれ」

「2㎝ですか?」


「もしかしてゲートの大きさに下限はあるのだったか?」

「いえ、作ることは出来ますが………」


 全く目的が理解できない。


 だがヤマトは言われた通り2㎝程の大きさのゲートを作り上げる。親指と人差し指で作った円のような大きさ。

 これでは先程の爆弾すら入れることは出来ないだろう。


「それでいい。

 これがお主の魔法の強味の二つ目じゃ」


 魔王はそういうがイマイチ理解できない。


 だが魔王はそんなヤマトをよそに、そのゲートに目を近づける。


「なるほど、なるほど。

 ゴブリンめ、予想通り慌てふためいておる」


「あぁ、なるほど」


 そこで初めて魔王のやっていることを理解した。


「お主の魔法は、ゲートの外からゲート先の光景を見ることが出来るからのー。

 視線と通るだけの小さいゲートを作れば、いつでもどこでも、一度来たことのある場所なら目視することが出来る。


 これほど強力な情報武器はそうそう無いからな」


 魔王はフフフっと不気味な笑い声を出した。


 ヤマトにとってゲートは移動する為の能力だと考えていたので、これは盲点だった。

 そしてゲートの先の光景が見えるのならば―――。


「試しにやってみるかのー」


 魔王はペンを取り出す。


「ヤマト、今作ったゲートの15㎝上、20㎝右奥にゲートにこのペンが入るゲートを」

「はい!!」


 ヤマトが指示通りゲートを作る。

 そしてすかさず魔王はゲートに対し、ペンを突き刺す。


「ムガァァァ!!!」


 ゲートを通してゴブリンの叫び声が聞こえる。

 魔王はペンを引っこ抜くとヤマトに指示を出す。


「ゲートを閉めるのじゃ」

「はい!!」


 ヤマトはゲートを閉めながら自分のユニークスキルが恐ろしくなった。


「ヤマト、お主は勘違いしておる」


 そうヤマトは勘違いしていた。


「お主の魔法は物を移動させる為の非攻撃魔法なんかではない」


 戦闘に参加できない能力ではなかった。


「お主の一度行ったことのある場所ならば、一方的に情報の取得と攻撃を仕掛けることの出来る、反撃不可能の超遠距離攻撃魔法じゃよ」


 魔王は血の滴ったペンを握りながらそう言った。

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