運搬屋と装備品
食事を終え魔王の元へと向かう。
そこにはセレスに抱きかかえられた魔王と護衛役のフェーン。
そして義手を付けたドワーフが居た。
「おっ、アンタが新人か?
今回は人間族か。よろしくな」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
ドワーフは義手の手を差し出し、それをヤマトは握る。
義手に初めて触るヤマト。てっきり冷たいものだと思っていたが、思っていたよりも温かい温度に驚いた。
「こやつには魔王軍で鍛冶屋をしてもらっておる。
鍛冶屋と言っても、武器や防具の製造だけでなく、様々な道具の開発改良までじゃがな」
「大将に頼まれれば何でも作りますよ。
こう見えて、ワシはドワーフの中ではインテリなんですわい。
まぁそうは言っても、大将の知識量には敵いませんがね」
そういうとガハハっと大きな声で笑い始める。
豪快な、という言葉が似合う男性だと感じた。
「それで今回はヤマトの装備一式が出来たということで、お主に来てもらったんじゃ」
そういうとセレスは装備一式を台においた。
装備とは言ったものの、鉄製のものではなく、何かの獣の皮のように見える。
「これはもう少し北の大地にいる大型の獣の皮を使っておるんじゃ。
軽い割に丈夫で、大抵の飛び道具ぐらいでは傷つくことは無かろう」
「そうなんですね、ありがとうございます」
そう言って装備を手に持つ。確かに重さは通常の皮の装備と変わらぬほど軽く、それでいてしっかりとした作りに思える。もちろん弓矢で撃たれてみないと耐久がどうであるかはわからない。
「あとは対炎、対電、対氷、その他諸々の付与魔法も付けてある。
勿論過信しすぎることは無いように。
あくまでワシらは旅をすることが目的じゃ。
敵の不意打ちを防止できればそれでよい。
戦闘になればお主の魔法で逃げることが最優先じゃからな」
そういう理由もあってあくまで皮装備なのだろう。
戦闘を避けるだけの時間が稼げることを優先した。
「まぁ、他にもその装備には色々とギミックがあるみたいなんだがな。
正直、ワシにはわからん!!
もし聞きたければあのロボットに聞いてみるといいさ」
「ロボットですか?」
そういえば魔王軍にロボットも居たことを思い出す。
「それともう一つ。
これもお主に渡しておこう」
そういうとセレスから一本の短剣を渡される。
先程までの特注品とは違い、年季が入っているように思えた。
「あくまで護身用じゃ。無暗に使うでないぞ」
「これって―――」
「ワシが使っておったものじゃ。
切れ味は間違いない」
魔王は言う。
「けど―――」
「この身体ではもう振るうこともできないからな。
ならば他の者に使わせた方が、このナイフも嬉しいじゃろう」
魔王はどこか思い出に耽るように言った。
まだまだ聞きたいことは多かったが、ドワーフの声で遮られる。
「それじゃあ大将、ワシはこれで失礼するぜ。
また何か頼み事があれば何でもいってくれ!!」
「あぁ、期待しておるぞ」
そういうとドワーフは部屋から出て行った。
もうお開きなのだろうか。
そう思っていると魔王はヤマトに言う。
「それじゃあヤマト、ゲートを繋げてくれ」
「えっ、今からですか?」
既に夜と言っても問題ない時間になっている。
今からどこに行こうというのだろうか。
「場所は今日行ったゴブリンの領地内ならどこでも良い。
ゲートの大きさは手が入るぐらい。出来るか?」
「えぇ、それは出来ますけど」
ヤマトのゲートは、ヤマトの指定した大きさに出現させることが出来る。
ヤマトは言われるがまま、手のひらサイズの小さいゲートをゴブリンの国の領地へと繋げた。
「これがお主の魔法の一番恐ろしい使い方じゃよ」
そういうと魔王は何かを取り出した。
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