表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/115

運搬屋 サキュバスと話す

 赤い髪と翼、色白で淫靡な姿をした女性は、人間の国では見たことの無い、物語の中の生物サキュバスだった。


 俺は初めて見たし、多分人間の国で実際に見たことのある者もいないだろう。


『体を自由に動かしていいですよ』


 またも脳裏に直接語り掛けるような声がした。

 だが今度は体全身に血が巡るように、力を入れることが出来る。


(サキュバスの放った言葉に強制的に従わされるのか…?)


 俺は背筋が凍りついた。

 そんなものチートそのものじゃないか。

 死ねと言えば自害し、仲間を殺せと言えば同士討ちさせられる。

 そして彼女もまた、俺たちの倒した魔王の関係者なのだろう。


 ここで先ほどの疑問がより強くなる。

 どうして俺たちは魔王を倒すことが出来たんだ?


(今はそれよりも…)


 悠長に考え込んでいる時間はない。

 ゲートを使って逃げなければ。

 そして王様にこのことを伝えなければ。


 もし彼女たちが魔王の敵討ちをするつもりなら、間違いなく我が国は亡びる。


 俺は迷わずにゲートを発生させる。

 だが―――


『私たちの話を聞いてください』

「くっ………」


 ゲートにくぐることは出来ず、そのまま閉じてしまう。


「今の貴方を帰す訳にはいきません。話をちゃんと聞いてもらわなければ」

「…わかった。話を聞く」


 口が勝手に動いてしまう。

 身体も彼女の話を一言一句聞き逃さないように、集中してしまう。


 ただ幸いなことは、こうして意識自体は保つことが許されている。

 意識がなく傀儡のようになっていれば、対策を考える時間すらなかっただろう。


 ヤマトは目線をサキュバスに向けたまま立ち上がる。

 振り向くことは許されないが、どうやら獣人族の女性は気絶しているようだ。


 サキュバスの方をじっくりみて気づいたが、なにやら抱きかかえるように、人形?ぬいぐるみのような物を持っていた。

 コアラのような………だけど翼と小さな角が生えている。

 人間の国には無い品物だが、十分子供受けしそうなそんな人形。


(もしかして、この人形がサキュバスの力に関係しているのか?)


 わざわざ敵の前に持ってくるのだからそれなりに理由があるはずだ。


「もしかしてこの人形が気になりますか?」

「!!?」


 サキュバスはヤマトの心情を見抜いたように言い当てる。

 これもサキュバスの力なのか!?


 サキュバスはゆっくり近づき、その人形を近づける。

 マズい!!

 もし彼女の力があの人形を介して使われるのだとすれば、近づけば近づくだけ―――。


 だがヤマトは依然として動くことは出来ない。

 ヤマトの体は『彼女の話を聞かなければならない』のだから。


 サキュバスはヤマトの目の前にその人形を突き出すと、妖艶に笑った。


「そうですよね、そうですよね。このプリティーでキュアリーな魔王様人形。とっても気になりますよね。あぁーもう、大好きで大好きで/////」

「………」


 そう言ってサキュバスは人形に自分の顔をくっつける。

 文字だけ見るなら子供が大好きな人形を抱きしめるように見えるが、相手はサキュバスであり人間的な年齢で見るならお姉さんと描写する姿だ。


 人形の顔と自分の顔を、見方によっては唇と唇をくっつけて、体をくねらせる姿は妖艶であり、いかがわしい行為でもしているように見えた。

 現に彼女の体は火照っており、息遣いは荒く、小刻みに媚声を上げていた。

 

そして悶々とした匂いを放つ。


(マズい!!)


 俺は気づくのが遅れてしまった。

 相手はサキュバス相手であり、敵なのだ。

 敵の目の前で遊んでいるはずがない。


 物語の中のサキュバスは相手を魅了し、意のままに操るつまり―――――――


(………)


「あっ、すみません。人形を見ていると滾ってしまいました。では話の続きをしますね」

「………」


「それでは話の続きですが、どうか私たちのことを見逃して頂きたくて」

「………」


「私たち魔王軍は明日をもってこの城から出ていきます。勿論人間の国とは別の方向にです」

「………?」


「ですのでどうか、襲撃せず、不可侵でお願いしたいという………話聞いてますか?」

「はい、聞いてます!!」


 っと口は勝手に動く。が、意識は全くそちらに向かっていなかった。


 先ほどの言葉での行動制限は効いている。

 だが人形を使った魅了については、体に違和感を感じない。


「その前に一つ聞きたい。さっきの人形を使った攻撃は?」

「攻撃?いえ、お恥ずかしい話、この人形を見ていると感情の高ぶりが抑えられなくて……もちろん貴方様に危害を加えるようなものではなありませんよ

 ほら愛らしくて……////」


 そういうとまた、いかがわしい行為のように身体をくねらせた。

 大丈夫なのだろうか、この人は…。


 っと、そこで彼女の先ほどまでの言葉を思い出す。

 明日にはここを去るから見逃して欲しいと。


 違和感を覚えつつも、サキュバスは話を続ける。


「旦那さま――魔王様は貴方のことを非常に警戒してました。貴方に掛かれば、魔王軍は壊滅すると。だからもし見つかった場合、抵抗せず降服し、逃がしてもらうように説得しなさいと」

「………」


 彼女の言葉に確信する。

 どうやら魔王軍は、ヤマトの力を過大評価していると。


「まぁ、仕方ないか」


 このチャンスを逃す手はなかった。

昨日、誤字の報告を頂きました。

ありがとうございます!!

わかる範囲はこれからも直していこうと思いますので、

どんどん指摘いただけたら助かります!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『面白かった』


『続きが気になる』


と思った方は、広告の下にある☆☆☆☆☆からの評価、


ブクマへの登録をよろしくお願いします!!

また感想や改善点も書いていただけたら、作者の励みになります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ