運搬屋と勇者
「クッソ、やっと見つかったか。
余計な手間を掛けさせんじゃねーよ」
「ユージ…」
ヤマトの前に現れたのは、かつての仲間であり、
ヤマトをパーティから追放した元凶である、ユージだった。
ヤマトは動揺していた。どうして彼が?
そして見つけたとは?
その様子をヌイグルミの魔王は静観していた。
「さっさと来い。お前の所為で国王様がお怒りなんだよ」
「どういうことだよ。俺はもう、パーティから抜けたはずだろ?」
ヤマトの記憶では今日が魔王討伐の報酬を国王から貰う日だった。
既にパーティを抜けたヤマトには関係のないはずだった。
もしかして――。
ヤマトは淡い期待をしていた。
パーティを追放したのは何かの間違いだったと。
サプライズで何かを用意していたのではないかと。
ユージはあの時こそカッとなって怒ったが、
後で言い過ぎたと後悔していると。
そう思った。そう期待せざる得なかった。
「知らねぇよ。国王様はお前なんかが俺たちよりも強いとかほざくんだだよ。
それでお前をパーティに入れないと報奨金をやらないとか言いやがる。
この国で一番偉いからって、滅茶苦茶なことを言いやがって
お前なんて何の役にも立たないクセに」
ユージの言葉にヤマトの期待は打ち破られる。
そうだ、間違いなんかではないのだ。
彼らのヤマトに対する侮辱は、昨夜が初めてではないのだから。
旅の最中もずっと冷遇していた。
それが表に出た。それだけの話。
「ヤマト。俺たちの役に立たなくてもいい。
だが俺たちの邪魔をするな。
わかったら、さっさと国王様に謝りに行くぞ。
勿論、お前の報奨金は俺たちが頂くからな」
ユージはヤマトの腕を無理やりに引っ張ろうとした。
それは道具を引き寄せるように、乱暴で相手のことを気にしてはいない。
「待ってくれ」
そんな言葉にユージが耳を貸すことは無い。
今も、今までも。
「待たんか、小童」
そういうとヤマトを掴んでいた手が叩き落とされる。
「いっ―――!!」
ユージは咄嗟に手を放し、ヤマトの方を睨みつけた。
「痛ってーな。俺に逆らうのかよ」
その様子にヤマトは唖然としていた。
ユージの手を叩いたのは、ヤマトではなかったのだから。
「聞いておけば、ワシの仲間を侮辱に侮辱を重ねおって。
見ているこっちも、ハラワタが煮えくり返るところじゃい」
ヌイグルミはヤマトの肩の上でドスの聞いた声を放っていた。
「今すぐ謝れ、無能。
ワシの仲間を侮辱したのだ。
それなりの覚悟はできておるよな?」
それはまさしく魔王そのものだった。
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