運搬屋 エルフと出会う
扉を開け、目の前に現れたのは金髪のエルフの少女だった。
(エルフがどうして…)
エルフは自国からあまり出ない種族だ。
そしてこの魔王の城の周辺にエルフの国はない。
迷い込んだのか?つい先日まで魔王のいた城に?
ヤマトは無数の疑問を首を振ってふり払う。
今考えるべきは、彼女が敵かどうかということだ。
扉が開かれると、エルフの少女はカツカツと靴を鳴らし、玉座へと近づく。
ヤマトは開かれたゲートを盾にし彼女を見ている。
違和感があった。彼女は何の躊躇いもなく近づいているのだ。
彼女が何者にしても、目の前に見知らぬ人間と、本来有り得ない位置に門があるのだ。
それに対して彼女が疑問を口にすることも、驚くような反応を見せることもない。
痺れを切らしたヤマトは声を出した。
「これ以上近づかないでくれ」
「!?」
エルフの少女はビクッと身体を上下させた。
まるで今までヤマトの存在に気づいていなかったように。
「すみません。誰もいないと思っていて。私、帰りますね」
そういうとエルフの少女は慌てた様子で振り返り、足を進めようとした。
だが彼女が足を踏み入れた場所は、丁度先日の戦闘でレンガ程の大きさの瓦礫が散乱していた。
それは見ればわかるものだった。
だがエルフの少女の靴は瓦礫の上に乗り、そのままバランスを崩し転んでしまう。
「いたたっ…」
「大丈夫か!?」
思わず敵である可能性を忘れて、彼女の傍に駆け寄る。
「すみません。うるさかったですね」
そう言って立ち上がろうとする彼女の瞳は、透き通るような青色をしていて、
何も反射させてはいなかった。
「もしかして目が…」
「………」
エルフは薬に対して高度な知識を持っていると聞いている。
老化の遅い身体と、薬の知識のおかげで病気になることはなく、長寿な種族であると。
そんなエルフの少女が盲目なのだ。外傷が無いにも関わらず。
そしてこんな辺鄙な場所に、盲目なエルフがいる。何か事情があるに決まっている。
「人間の国にならすぐに行ける。そこで助けを求めれば…」
彼女を連れてゲートに入ることは出来る。
彼女が何者かはわからないが、こんな場所よりも暖かくて安全な場所で話を聞いたほうが賢明だろう。
だが彼女は突然震えだした。
「人間の……貴方は人間なんですか!?」
その声色は恐怖と絶望が込められていた。
どうして人間に?我が国とエルフの国は別段敵対しているわけではない。
もしかしたら、人間の盗賊が彼女を攫ってきたのか?
「待ってくれ!! 俺は盗賊では―――」
ヤマトが口に出した瞬間、それは現れた。
突風が吹いたのかと思う速度。
気づいた時にはヤマトの両手は拘束され、首筋には冷たい刃物が押し当てられた。
目の前にはまだエルフの少女がおり、依然として震えている。
では俺を拘束している『人間』は何者だ?
「お前、魔王様を殺した人間だな」
女性の声色だった。そして鼻から伝わる匂いは、少しだけ獣の匂いがした。
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