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運搬屋と人間の国に行く前に

「ヤマト、今日のお昼にでもワシと一緒に人間の国に行ってもらうが良いか?」


 角の折れたユニコーンに乗った、ヌイグルミの魔王は言った。


「はい。大丈夫ですが、人間の国に一体なんの用が?」


 正直な話少し警戒していた。

 人間の国を侵略したり、偵察したり―――。


「そう警戒するでない。前に言った通り人間の国に攻め込んだりはしない。


 少し根拠のある話をするなら、ワシらはお主と敵対する行動はとれぬ。

 もしお主が敵に回れば間違いなく壊滅するからな。


 そしてワシらにはお主と同じ魔法を使える人間が、どれぐらいいるかもわからぬ。

 お主を殺したからと言って、他の者が使えるなら意味がないからな」


「………そうですね。すみません」

「いや、警戒するのはもっともじゃ。


 そう言った意味でも、今回行くのはお主とワシだけで

 他のメンバーはここで待機してもらう」


 魔法の使えない魔王と、人間であるヤマトだけが行くなら、滅多なことにはならないだろう。

 獣人のフェーンや、サキュバスのセレスが行った場合、人間の国を壊滅することは造作もない。


 それと同時に、魔王の護衛という意味ではヤマトは心もとない。

 ゲートを作るだけの能力なのだから。


 だが護衛を無くしてでも人間の国という、魔王にとっての敵国に行くというのは、

 本当にヤマトに気を遣っているということなのだろう。


「わかりました。ちなみに目的は?」

「食料と物資の調達じゃ。

 お主のご飯もそうじゃが、フィアや他の仲間にもいい物を食べさせたいからな。


 今まではこの近辺でとれた野草や獣を狩るしかなかったからな」


「なるほど。それでしたら、喜んでご協力します」


 やはり魔王は仲間のことだけを考えているようだった。


「それじゃあ、お昼に迎えに行くからそれまで楽にするがよい。


 あと……あまり無知な若者に変なことを吹き込むでないぞ?」


「っ―――/////」


 帰り際に言いづらそうに言う魔王の姿が、よりヤマトを動揺させた。


「どういうことでしょうか?」


 盲目のエルフ、フィアは首を傾げながら

「人間の国に行くんですね。楽しんできてください」


 っと無邪気な言葉を紡いでいた。

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