運搬屋と女性たちのベッド
「ヤマト様、貴方は今夜はここで寝られてください」
セレスはヤマトを寝室に案内した。
中は部屋の半分を占拠するほど大きなベッドが一つ置かれているだけ。
そしてベッドの上には魔王軍の仲間だと思われる魔物たちが眠っていた。
問題はそれが見た感じ全て女性であること。
「部屋を間違えてません!?」
「いえ、こちらで合っていますよ。
ここは私も寝ている部屋なのですが、今日は魔王様と夜を共にするので////」
そう言うと顔を赤らめ息を荒らげるセレス。
あぁ、邪魔をするなということなのだろう。
「けど女性しかいませんよ。
他に男性の部屋とかは―――」
「あるにはありますが、結構キツイと思いますよ?」
「キツイ?」
匂いとか絵づらとかなら、まだ我慢できるが……。
「魔物たちって女性は繁殖や家の中のことをやるのであまり脅威にはなりませんが、
男性ってほら。狩りとかを中心にしますからね。
寝ている間に攻撃されたり、毒が出てきたり、
もしかしたら片腕を食べられることもあるかもしれませんし」
魔王軍の仲間たちを思い出した。
確かに女性は比較的人形な姿をしているが、
男性に関しては魔物という言葉が似合う姿をしていた。
「それでも大丈夫でしたら――」
「いえ、ここに寝させてください!!」
流石にこんな所で死にたくはない。
「まぁ、ここなら安全ですよ。
女性で特に戦闘能力の低い娘たちを集めていますので。
ですので襲ってもいいんですよ。
私としては仲間が増えるのは大歓迎ですので」
っとサキュバスらしい怪しい笑みを浮かべる。
いや襲うって、人間の世界では普通にアウトだから。
襲った上で普通に仲間として認めてくれるのだろうか。
そんなことしません。と念を押した上で部屋に入った。
彼女の言う通り、部屋の中の女性は言い方はわからないが『安全そう』ではあった。
間違っても触れるだけで刃物が刺さったり、気づいたら燃えてたり、夢の中から一生覚めなかったりはしなさそうだ。
その中には盲目のエルフ、フィアの姿もあった。
彼女もベッドに仰向けで眠っていた。
他の娘たちもベッドに不規則に眠っていた為、隙間がそこしかなかったことと、
どうせ一緒に眠るなら少しでも顔を知っている相手の方が良いということもあり、
ヤマトはフィアの傍で眠ることにした。
眠ることにした、とは言っても目を瞑ってすぐに眠れるものではない。
することもなく目を瞑っている。
すると突然腕を掴まれた。
「!?」
目を開け腕を見る。腕を掴んだのはフィアだった。
彼女はヤマトの腕を抱き枕のように掴んでいた。
起きる様子もなかった。
「セレスさま……」
そのような寝言が聞こえた。
きっといつも彼女とこのように眠っているのだろう。
起こすべきか、どうするべきか。
起こしたからと言って、このスペースでは離れることも出来ない。
悪い気はしないしこのままにしておこう、というのが純粋な男子の考えだった。
「まぁ、悪いことをしているわけじゃないしな」
っと自分に言い聞かせる。
そのままフィアに抱きしめられながら心地の良い眠りに着こうとした。
だが更に寝言が聞こえた。
「お父様………お母様……」
「!?」
フィアの他に魔王軍にはエルフはいなかった。
離れ離れになったのだろうか。
魔王は追放された仲間が多いと言っていた。
彼女は家族に追放されたのだろうか。
盲目であることも、それが理由だと―――。
「いつか必ず助けに行きますから………」
彼女の悲しく弱々しい言葉を聞いて、ヤマトは眠ることが出来なかった。
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