運搬屋と涙
「嘘だろ………」
魔王の魂が消えた瞬間を、天国側からヤマトは見ていた。
甘えた考えを持っていた。
そう痛感させられた。
こんなことになるなら、生き返らせるなんて言うべきでなかったのだ。
天国から指示してもらうだけでも十分だったはずなのに……。
自分の所為だ。
魔王軍を助けたいなんて言う自己満足の為に、魔王を殺したのだ。
ゲートの前の彼らにとって、大切な人の二度目の死を経験させてしまった。
合わせる顔が無い。
いっそ彼らのいない場所に飛んでしまうと思う程だった。
だけど出来ない。どんなに合わせる顔が無かろうが、謝らなければならない。
許してもらえるかはわからない。罪滅ぼしだ。
ヤマトは無気力なままゲートをくぐろうとした。
だがその前に何者かが立ちはだかる。
赤い髪をしたサキュバス。セレスと呼ばれた女性だった。
あぁ、追ってきたのか。責め立てる為に。
殺してくれるかな。そうしたら許して―――
「辛い思いをさせてしまいましたね。
ごめんなさい。そして――
ありがとうございました」
セレスは優しくヤマトを抱き寄せる。
抱えられていたコアラに似た人形が、ヤマトの頭を受け止めた。
そこに人形があってよかったと思えた。
ヤマトの涙を全て受け止めてくれた。
「ごめんなさい。助けられなくて」
「いいのです。私たちは、再び魔王様に会えた、それだけで満足です」
そういったセレスの声は少し震えていた。
彼女の顔を見ようとした。
だが顔を上げようとすると、より強く抱き寄せ顔を上げさせてはくれなかった。
「貴方は私たちの仲間です。
魔王様が言ったのです。
ですから誇ってください。
夢に向かって進んでください。
それが私たち魔王軍の存在意義なのですから」
セレスの言葉に安堵した。
一体何度同じことを繰り返すつもりだったのだろうか。
罪滅ぼしではない。自分に自信を持たなければならない。
存在意義を他人に預けれはならない。
夢の為に、進まなければならない。
「わかりました。
これからよろしくお願いします」
だから涙を流すのはこれで最後にする。
それはきっと彼女も、そして他の魔王軍のみんなのも同じだろう。
ただ今だけは―――。
その時、抱き寄せた人形が動いた気がした。
『面白かった』
『続きが気になる』
と思った方は、広告の下にある☆☆☆☆☆からの評価、
ブクマへの登録をよろしくお願いします!!
また感想や改善点も書いていただけたら、作者の励みになります




