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運搬屋、勇者パーティーを追放される

初投稿です。

どうか一話だけでも読んでいってください

「ヤマト、荷物持ちしか出来ないお前は今日でクビだ」


 行きつけの居酒屋で、冒険者パーティーのリーダーであるユージは言った。


 突然の宣告にヤマトは激しく動揺し、

 思わず手に持っていたグラスから液体をこぼしそうになる。


「ちょっと待ってくれ。冗談だよな?俺たち魔王を倒した仲間だろ?」


 俺たちはつい先日、魔王として賞金を掛けられていた怪物を倒していた。

 魔王を倒すには、俺の力も、そして俺だけではなく仲間たちの力があったから成し遂げられたと思っている。

 誰一人欠けてはいけなかった。自信を持って言える、最高で最強の仲間たちだったと。


 だがユージの言葉にそれが自分の独りよがりだったことを知る。


「お前は魔王討伐に役にたってなかっただろ。俺たちの後ろで荷物の番をしていただけ。そんなお前にも報奨金を与えられるのが気にくわないんだよ」

「…そうだけど」


 ユージの言葉は正しかった。俺は確かに魔王討伐に役に立っていなかったかもしれない。


 攻撃を担当していた者、戦闘のサポートをしていた者。だが俺は道中の運搬屋として働いていた。


 確かにそれに対して後ろめたい気持ちはあった。何か自分でも戦闘に役に立てないかと。だが付け焼刃に魔法を覚えても、仲間たちの足を引っ張ることを理解していた。


 だから俺は荷物持ちに徹していた。


「わかった。俺には報奨金は要らない」


 だからユージに言われる前に、俺は報奨金を受け取るつもりはなかった。


 それでも、こんな酷いことを言われても譲れないものが俺にはあった。


「だけど俺との約束は果たしてくれ」

「約束?」

「そうだ。俺がパーティに加わる時にした約束だ」


 それは地図には載っていない未知の世界を旅することだった。

 この世界ではまだ人間が足を踏み入れている場所は少ない。国の周りを一月ほど馬車で移動した範囲。それ以上の場所は誰も行ったことは無く、地図の外には何があるのか誰も知らない。


 俺の夢は、この世界の果てを見ることだった。

 魔王を討伐した暁に、最高の仲間と世界を旅する。そんな夢。

 俺はユージのパーティに入る時、そう約束をしていた。


「はぁ、お前まだそんなこと言ってんの」


 ユージは鼻で笑う。


「そんなことをするわけねぇーだろ。魔王を倒した賞金で生活に困んねぇーだから」

「そんな…約束と違うじゃないか」


 俺は打ちひしがれた。


「知らねぇよ、そんな約束。契約書でもあんのかよ」

「………」


 もう俺にはどうでもよかった。

 今までどんな扱いを受けてもこのパーティーを続けていたのは、この夢があったからだ。


 だが夢を馬鹿にされた今、パーティーに居続ける理由はない。


「わかった。もう金輪際関わらない」

「おう、そうしてくれ。もっともお前になんて用はないけどな」


 ヤマトは立ち上がると荷物をまとめて居酒屋を後にした。


 ヤマトは居酒屋を出て裏路地に入る。

 月明りの当たらないこの場所なら、人目に付くことは無いだろう。


「ゲート」


 ヤマトが言葉にすると目の前に木製の扉が出現する。

 扉の中は絵の具を混ぜ合わせたように混沌とし、

 液体が入っているかのように波紋が広がっている。


『行先、魔王城、大広間』


 次にそう告げると、混沌とした絵の具は規則正しく配置されなおす。

 そして一瞬で石畳の部屋が目の前に広がる。


「つい一日ぶりか」

 ヤマトは躊躇うことなく、扉の中に入る。

 文字通り扉をくぐるだけで別世界の光景が広がっていた。


 石畳の上に赤色の絨毯が広がっている。

 大きな柱が何本も連なり、その奥には荘厳とした玉座が置かれている。

 ただそれら全てにヒビや亀裂、焼け焦げたり破壊された痕が残っている。

 なぜならつい先日、この場所で戦闘があったのだから。


「勢いでこの場所に来たけど、これからどうしたものか」


 特にここに来た目的があったわけではない。

 ただあの町に居たくなかった。

 ユージ達に出会うかもしれない。それが嫌だっただけだ。


「主を失った城か。もの寂しいものだな」


 その最たるものが玉座だった。もう主に座られることの無い、存在意義の無い品物。


 興味本位でそれに座ってみる。


「うわぁ、ケツが痛いな」


 材質の問題なのか、魔王の種族の問題なのか。人間が座るには、地べたに座るのと変わらない程に硬かった。

 玉座から見る光景。勇者をどんな気持ちで待ち構えていたのか。


 そんな物思いに老けていると正面の扉が開かれた。


「!!?」


 咄嗟に身構える。魔王軍の残党か?

 念のためにゲートを目の前に出現させる。

 もし敵なら俺一人では勝てない可能性が高い。


 ゆっくりと開かれる扉から現れたのは―――

 美しい金髪のエルフだった…。


~勇者パーティー視点~


 ヤマトを追い出した翌日、勇者パーティ御一行は王宮の玉座前にいた。


 目の前にはこの国を統治する国王。

 初老の王は蓄えた白い髭を触りながら、勇者たちに言う。


「よくぞ北の魔王を討伐してくれた」

「勿体ないお言葉」


 勇者パーティは膝をつき、敬意を表す。


「長々と話をしても迷惑だろう。早速報奨金を…」


 そこで王は何かに気づいたようで、疑問を述べた。


「はて、貴殿のパーティにはもう一人いた覚えじゃったが。そう荷物運びの青年が」

「我々のことを覚えてくださり、光栄です」


 リーダーのユージは昨日のことを得意げに語る。


「彼の能力は我々最強のパーティには不要だったのでパーティから追放しました。戦闘に役に立たない荷物運びなんて、王様の前に出すのも恥ずかしいですから」

「なっ…」


 王は絶句し、手に持っていた杖を落とした。

 固まった王様の時間が再び動き出すのに、20秒ほどの時間を有した。


「ばっ、ばかもん!!お前は何をしたのか理解しているのか!!」


 それは先ほどまでの品と教養のある国王ではなかった。

 感情のままに勇者パーティに罵声をくわえる。

「あれほど有用な能力の者を追放したじゃと!!

彼の能力はこの国で一番強く、敵に回れば―――」

「待ってください、王様。お言葉ですが流石に過大評価が過ぎます」

「お主が自分の力を過大評価しすぎなんじゃ。又は彼の力を過小評価しているか」


 王様は文字通り頭を抱えた。顔からは見てわかるほどに汗を掻いている。


「連れ戻してこい」

「えっと…」

「連れ戻してこいと言ったのだ。早く、必ず、何としても。

 彼の能力が失われるわけにはいかない。まして敵に寝返られたらこの国は亡びる」

「亡びるって。あいつにそんな力はありませんよ。その時は我々が必ず打ち取って…」

「お前らごときに倒せる相手ではないわ。

彼を連れ戻すまで報奨金はない。

いや、彼を連れ戻せなかった場合、

お前らをこの国から追放する。

期限は30日、必ず見つけてこい」

「そんな…」


 かくして未知の世界を魔王軍と旅する運搬屋ヤマトと

 運搬屋を見つけるまで国を追放された勇者パーティの旅は始まる。


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