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059 屋敷に行く前の寄り道


 「では、出発だ」

 王子を先頭に宿屋を出る。

 「でも、その前に……寄り道」

 

 

 通りに出た王子は、先ずは武器屋に寄った。

 「すいません……どうでしょうか?」


 王子を見咎めた武器屋の主人は、少し面食らった顔をした。

 主に後ろの三人の大人にだろう、そちらをチラチラと見ている。

 が、それでも仕事は忘れては居ない。

 「出来てるよ」

 

 「早いな」

 その返事に王子は驚いた。

 二・三日は覚悟していたのだが、わずか一日で出来るとは。


 「一昨日も言ったが、殆どが有りモンだからな」


 「壊れた世界樹の槍をって言っていたな」

 

 「そうだ」

 親父は店の奥に一度引っ込み。

 「少し待ってろ」

 そして、手には王子の発注した王笏が握られていた。


 

 「柄の部分がそのまま世界樹の槍と同じ……」

 王笏を指して、説明を始めた親父。

 「石突きもそのまま使用している、これは元からミスリル製だ」

 次に王笏の頭を指差して。

 「ヘッド部分は一から造った、これもミスリルだ」

 

 王子はそのヘッドをマジマジと見る。

 細い針金細工で、リンゴを模した鳥籠の様なモノが付いている。

 中には青い色をした石が三つ入っていた。

 「これは?」


 「それは、アルミラージの魔石だ」

 ふん! と、鼻を鳴らした親父。

 「たまたま手に入ったんだ……中々珍しいぞ、滅多に手に入らん」 


 「アルミラージ……か」

 王子は後ろを振り返る。


 「一昨日、ギルドに納品したヤツかな?」

 マルタが笑って、そんな王子に答えた。

 「結局、回り回って私達の所に帰って来たのね」

 店の親父の持つ王笏のヘッドに顔を近付けて。


 「え! お前さん達が持って来たのか?」

 マルタの言葉に驚いた親父。

 

 王子とマルタは同時に頷く。

 ゼノ達、大人三人はただ黙ってみている。

 もう既に役に成りきっているのだ……本職だけど。

 エウラリアは単純に反応に困っていた。

 倒したのはゼノ達だけど、一緒にギルドに持っていったのは確かだし……嘘は言っていないけど。と、そんな感じだろう。


 「でも、なんだか……」

 マルタは、やはり笑いながら。

 「赤ん坊が持つ……ガラガラみたい」

 

 それを聞いた王子もその王笏をマジマジと見た。

 そして、ヘッドの部分をつついて見る。 

 カラン……と、音がする。

 自然と下唇が突き出す気がする……。

 確かにガラガラだ。


 「いやいや、この三つの魔石が自由に動く事が大事なんだ」

 親父は慌てて説明。

 「アルミラージは電気を帯びる性質が有る」

 親父は王笏を立てて、石附で地面をトントンと叩いた。

 籠の中の魔石がカラカラと音を発すると、青い光が瞬きだす。

 「こうすれば、魔石同士がぶつかって電気を発生させる事が出来るんだ」

 ヘッドの部分でバチバチと電気が走っている。

 

 「アルミラージって、そんな原理で電気を造ってたんだ」

 へーっと感心したマルタ。

 「何処にそんなの持ってたんだろう?」


 「角の根元に有るんだよ」

 親父は自分の額をつついて。


 「ふーん」

 顎に手を当てて考え出したマルタ。

 「今度……バラして見よう。どうせ食べる時には解体するのだし」


 それを慌てて止める親父。

 「止めとけ、素人が魔石を取りだすと危ないぞ」

 

 「?」

 なぜとそんな顔に成るマルタ。


 「体の中に魔石を閉じ込めて置けば、魔石が何かの拍子に突然に発動するのは防げる……魔物を倒しても、事故防止にも魔石はそのままで運ぶんだよ」


 親父のその言葉に、王笏のヘッドに纏った電気を見て納得する王子。

 「成る程……ポケットか鞄の中で、その状態は危ないか」


 「そうだ」

 大きく頷いた親父。


 マルタも理解したのか肩を竦めていた。


 「で、その電気なんだが……」

 王子は王笏を指して。

 「魔物にも有効なんだろうけど……どう使う?」


 「そりゃあ、こうして電気を溜めて」

 親父は王笏を横に振って。

 「叩いてバチッとだ」


 「叩くのか? 電気を飛ばすとかは出来ないのか?」

 アルミラージは丸い電気の玉を飛ばしていた様だが。


 「お前さん……そんなスキルを持っているのか?」

 親父は王子を指差して。


 少し考えた王子。

 飛ばすスキル?

 だが、考えてもそんなモノは持っては居ない。

 「無いな……」


 「なら、飛ばすのは無理だな」

 笑って答えた親父だった。


 「まあ、どうせ叩くのは同じだ。少しの追加攻撃が付いてくると思えばそれで良いか」

 と、王子も納得。

 

 「電気は少しでは無いとは思いますが……」

 それまで黙って居たガスラが、控え目だが声を出す。

 「電気は全身に痛みを与えますし……何よりもマヒが付きますから」


 「そうだぞ……電気攻撃を甘くみちゃあいかん」

 親父も大きく頷いた。

 折角に造った王笏擬きを安く見積もられたんではたまらん。とでも思ったのだろう。

 頷きは何度も繰り返された。


 「確かにそうだな」

 王子も合わせて頷いて、王笏を受け取ろうと手を出した。


 その手に王笏擬きを手渡した親父は、王子の足下を探す。

 「ときに……人形達はどうした?」

 

 王笏に帯びたままの電気をどうしようかと考えていた王子は、少しビックリ。

 「ああ……人形修復のままだった」

 生き返ってから、そのままで居たのだ。

 神父は人形は自力で直せとと言っていた。

 そして、それを聞いた王子はスキルの ”人形修復” を思い出して、意識を集中してみれば、確かにそこに人形が有ると感じられた。

 ただ、大きく損傷をしているだろうと……出すのが躊躇われて居たのだ。

 でも、流石に一晩を置けば大丈夫だと思いたい。

 でないと、今後の戦闘の先頭に出すのが躊躇われる。

 

 王子は地面に向けて、念じて見る。

 光の魔方陣が走り出した。

 そして、そこから人形二体が現れる。

 赤色の服も、青色の服も綺麗に修復されて、顔や腕にも傷や汚れは見えない。

 完全にまっさらな状態だ。

 でもそれが少し不安を誘う。

 「大丈夫かい?」

 王子は人形達に声を掛けた。

 

 人形達は頷いて、可愛い声を上げる。

 「大丈夫!」

 「元気に成った」


 「良かった」

 王子が心配したのは、新品の状態に成って……王子との使役関係が切れる事だったが、それは杞憂の様だった。

 以前にも人形修復はしているのだけど、今回はその時間が長すぎた……そして、何より王子がその事をコロッと忘れて居たから余計にだ。

 いや……忘れていたわけじゃあ無い。

 大事な仲間だから……修復にユックリと時間を掛けただけだ。

 

 そんな誰に言い訳をしているのかわからない事で頭が一杯の王子に、武器屋の親父が声を掛ける。

 「相変わらずに可愛いな」

 人形を見る親父の目尻が下がっていた。

 

 そんな親父を見てマルタが引いているが、たぶん親父は武器として人形を見ている気がする。

 武器として見れば、プペとアンは可愛いのだろう。

 見た目もだけど、自分の意思を持った武器だ。


 そのプペとアンの持つ足軽蟻の槍を、親父は指差して。

 「その槍も少し強くしてやろう」

 そう言って、ポケットから小さな青色のリボンの様なモノを出してきた。

 それを、人形達の槍の先に巻き付ける。

 「これもアルミラージの魔石の粉が練り込んで有る……王笏擬きを造った時の欠片を粉にしたんだよ」


 青色の服を着たプペは嬉しそうだ。

 赤色の服を着たアンは微妙な顔。

 それはそのリボンの色が違うと思っている様だった。

 

 そして、それに気付いた親父は……頭を指で掻く。

 「一つは赤色の方が良かったか……」

 唸った親父は。

 「じゃあ、今日の夕方にもう一度来てくれ、その時に赤色のリボンを巻いてやるから」

 

 それを聞いて、少し機嫌を直したアンは、ジッと王子を見上げた。

 王子もそれに頷いて返してやる。

 武器屋の親父が言うのだ、赤色のリボンにも何かの力を宿させるのだろう。

 青が電気なら赤は……なんだろうか?

 「楽しみが増えたな」

 その王子の言葉にアンはニコリと微笑んで頷き返してくれた。


 

 「さて、今度こそは屋敷だ」

 王笏を持って、王子の格好も着いた。

 もうこれ以上の準備は出来ない。

 後は……乗り込むだけだ。

いかがでしたでしょうか?


面白そう。

楽しみだ。

続きは?


そう感じて頂けるのなら、是非に応援を宜しくお願いします。

ブックマークや★はとても励みになります。

改めて宜しくです。

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