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032 パワーレベリング?


 大剣を振り回して、王子とマルタを守るリサ。

 その剣を一振りする度に蟻の死体が増える。

 

 ガスラは魔法を放ちながらにそこに合流した。

 派手な魔法ではない、マルタでも使える火の玉のレベル上位版だ。

 最初の魔法でもあるそれは、レベルさえ上げればとても有効な攻撃手段に成るようだ。

 簡単で連射が効いて、速さが有るからか。

 遠くの敵、近くの敵と確実に撃ち抜いている。

 一撃で倒せる威力では無いが、数発当てれば良いだけだと数を撃ち込む。

 初級の魔法なのだから魔力の消費も少ないのだろう、ばら蒔くのにも一切の躊躇が無い様だ。

 永遠と撃ち続けられる?


 「ギャッ」

 王子とマルタの間に蟻が走り込んできた。

 その顔を火の玉で焼いたガスラ。

 目がやられたのか、その蟻は槍を滅多矢鱈に振り回して始めた。

 

 トドメは?

 王子はガスラの方を見ると。

 ガスラはニヤリと笑って見せる。

 そして別の蟻を撃ち抜いた。


 目の前の蟻を見て、焦った王子。

 コイツはどうするんだ!


 このままで放っておく事も出来なと。

 「マルタ!」

 叫んで桧の棒を突き出していた。


 マルタも目は瞑ってはいるが、火の玉を連発し始めた。

 焦ったのはマルタも同じ。

 王子の呼び掛けに攻撃を始めた。


 一匹の暴れる蟻を王子とマルタは挟んで攻撃をする。

 すぐ近く魔物だが、飛び道具はチャンと狙って欲しいと飛んで来る火の玉を見る王子。

 射程距離は2m少しだから、王子に届く前に消えるのだが、それでも向かってくる魔法は怖いものが有る。

 

 と、そのマルタの火の玉が王子にまで届いた。

 右頬を掠めて耳の横でハジケる。

 マルタの足は動いていない。

 イキナリ射程距離が伸びたのだ。

 何故?

 と、考える間も無く目の前の蟻が崩れ落ちる。

 「レベルが上がった?」

 トドメを刺したのはマルタ?

 

 「ガスラ! 遊んで無いで真面目に」

 王子の背後のリサが叫ぶ。


 「何事も経験だろう?」

 その声音はとても軽い。

 「ホレ、もう一匹」

 ガスラは顔を焼いた蟻を蹴飛ばして、王子達の間に転がした。

 もちろんまだ生きている。

 瀕死なのだろうが、動いて足掻いている。


 王子はその頭を、おもいっ切りに蹴飛ばした。

 蟻の頭は首からもげて、胴を離れて転がっていく。

 一瞬、コイツは弱いのかと錯覚する程にアッサリとだが……しかし、そん筈は無いと思い直した。

 さっきのマルタと同じで、ガスラが弱らせたからだ。

 足下の二体の蟻の死体を見ながら、そう答を見付けた。

 ガスラは王子達に経験値をくれたのだ。

 レベル差が有ってパーティーが組めないからこういう形に為っただけ。

 

 「お嬢ちゃん、魔法を撃つ時は……目を開けて」

 笑いながらにマルタに指摘するガスラ。


 「俺達を強くしてくれている?」

 自分の耳にだけ聞こえる程の小さな呟き。

 それは好意でか?

 有難いお節介でも有るが、それ依りも一匹でも多く倒した方が良いのでは?

 リサも遊ぶなと叫んだ。


 「そろそろゼノも終わったか?」

 ガスラは説明をするような口調で告げる。


 そのゼノは、丘の頂点に到達して。

 蟻の巣穴に丸い玉を投げ込んでいるのが見えた。

 そして、急いでこちらに走ってくる。


 「くるぞ」

 ガスラはもう一度。

 

 と、その言葉と同時に地面が揺れた。

 巣穴の出入口から火柱が上がる。

 遅れて爆発音が響いた。


 「キャ」

 驚いて座り込むマルタに。

 

 「爆発する魔法を呪符で固めた爆弾だ」

 笑うガスラ。

 そして、走ってくるゼノにさっきと同じ丸い玉を投げる。


 走りながらにそれを受け取ったゼノは、手元で一枚の札を剥がして……今度は適当の後ろに投げる。


 ゼノの後方で爆発が起きた。

 土が爆ぜ、爆炎を上げて群がる蟻達を弾き飛ばした。


 「魔道具?」

 王子が呟いたのにも丁寧に返事を返すガスラ。

 「魔法を魔法使い以外が使える様にしたモノだ」


 魔法で飛ばす事は出来ない様だが、投げる事で爆発させられるのか。

 ガスラの話とゼノの行動では、そう結論付けた王子。

 なら、いずれマルタにも作れるモノなのだろう。

 そう考えると、ガスラはマルタに魔法と呪符の使い方を教えているのかも知れないと思うように為る。

 リサは王子に蟻の弱点を教えてくれた。

 思い過ごしの気のせいかも知れないが、見せてくれたのは有難い。


 なら、その好意を無駄にしない、と。

 足下の蟻が持っていた槍を取り上げて。

 「プペ! アン!」

 二体に投げてやる。

 細くて短い槍だが、小さい人形には丁度良い。

 槍も振り回せば、棒術の様に扱える筈だ。

 

 スーっと地面を滑る様に走る人形達は、受け取った槍で蟻を転ばせ。

 ジャンプで飛び付いて槍先を腰の関節部分に滑らせる様に突き立てた。

 一度でトドメは無理だが、蟻の攻撃を確実に避けながら。

 二度、三度と繰り返す。


 「やるな、人形達も」

 走って合流したゼノの感嘆の声。


 「意思を持った人形を従える傀儡士の戦い方か」

 ガスラも人形達の動きを目で追っている。

 「初めて見たが、複雑な動きもこなして居るな……凄いもんだ」 


 王子は誉められているのだろうとはわかったが、素直には頷けなかった。

 強いのも戦って居るのも人形達だ。


 「ダベって無いで、逃げるよ」

 リサが走り出す。

 

 ゼノは蟻の増援を防ぐ為に出入り口を潰した。

 それを援護する為に他の者はここで待っていた。

 なら、巣穴が壊れれば最初の選択、蟻を蹴散らして逃げるだけだ。

 

 全員がリサの後を追う。

 もう一度森の中に飛び込んで、先頭のリサが大剣を振り回す。

 一振りで、草や木と一緒に蟻も弾け飛んだ。


 後方はゼノが務める様だ。

 追い縋る蟻に片手剣を滑らせる様にして斬り結ぶ。

 力強さは感じないが、蟻の硬い甲羅もパックリと斬れている。

 剣の切れ味も凄いのだろうが、技も有るのだろう。

 無駄な動きが少ない気がする。


 中衛のガスラは魔法で前や後ろを遠距離攻撃。

 たまにゼノに玉を渡している。

 その度に、後方で大きく爆発が起きた。


 王子とマルタはそのガスラの一つ前を走る。


 「マルタ、罠爆弾は?」

 

 頷いたマルタが、火の玉を空中で固定させてその場に残した。

 それを幾つも連続で仕掛けていく。

 蟻が走り込んで来ればドカン。

 避けるなら進路の邪魔をしてくれる筈だ。


 と、その仕掛けた火の爆雷トラップを避けた蟻が弾けた。

 何も無い所にも見えたのだが。

 

 「トラップを仕掛けるなら、たまに風の罠爆弾も置いて置くといい」

 ニヤリと笑うガスラ。

 今のはガスラが仕掛けたものか。

 「風の罠爆弾は良く見れば見えるが、火の罠爆弾を見た後では錯覚しやすいからな」


 頷いたマルタは風の罠爆弾を仕掛けた。

 王子はそれを見て納得した。

 風の罠爆弾はカゲロウの様に向こう側の景色を揺らしている。

 だけど、その揺らぎは火の罠爆弾の上に延びているモノにも見られる。

 だから火を見た者は風を見失うのか。

 

 「同じ理屈で、火の玉の間に風の玉を混ぜるのも有効だぞ」

 やはり、戦い方を教えてくれている。


 と、その時。

 横から蟻が三匹飛び出して来た。

 草の上を横に跳び。

 木々の間からの奇襲だ。

 

 ヤバイ!

 リサは前を走り。

 ゼノは後ろを走っている。

 ガスラの魔法も速いが一撃は無い。

 この距離は当てても一発までだ。

 

 「プペ、アン」

 叫んだが、人形達が間に入るのには時間が無い。

 一瞬の判断だが、王子は桧の棒を突きだした。

 蟻三体のうちの一番に近い奴を目掛けてだ。

 それでも二体は、すり抜ける。

 そいつ等は王子を攻撃するのか、それともマルタを攻撃するのか……だ。

 

 王子の棒は蟻の顎にカウンターで入った。

 もんどり打つって倒れた蟻はその一匹。


 残りは……。

 目線は二体の蟻の持つ槍。

 その直線上にはマルタが居た。


 「避けろ!」

 叫ぶ王子よりも先に動いたのはガスラ。

 マルタの前に入って、杖を二つに折った。

 いや、違う杖の中から淡い金属の光を放つモノが伸びて出てくる。

 それは空中で舞う様に光の線を引き。

 飛んで居た二体の蟻を同時に幾つにも刻んだ。


 カチン。

 と、音をさせて元の杖に戻す、片ひざのガスラ。

 

 「仕込み杖?」

 驚いた王子は呻くしかない。

 「魔法使いじゃあ無いのか?」

いかがでしたでしょうか?


面白そう。

楽しみだ。

続きは?


そう感じて頂けるのなら、是非に応援を宜しくお願いします。

ブックマークや★はとても励みになります。

改めて宜しくです。


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