029 新たに獲得したスキル
戦闘は終了した。
結構な数のバッタを倒した。
初めはどうなるのかとも思ったが、やはり王子達が低レベルなのが候を奏した様だ。
倒せばドンドンとレベルが上がる。
レベルが上がればバッタも倒しやすくなる。
疲れやダメージの積み上げ依りも、戦闘力の伸びが勝ったのだ。
とはいえ。
疲れた事には代わり無い。
その場に座り込んだ王子とマルタは、お互いに自分のメイン・ボードを開いて確認をしていた。
レベルは一気に5に成っている。
それはプペとアンも同じだ。
二体の人形の新たに増えたスキルは……。
”ジャンプ”
”棒術”
”必殺”
と成っていた。
棒術はこんな感じの棒を装備しないといけないのだろうと、王子は桧の棒を見る。
何処かで人形でも装備出来る棒が有るのだろうか?
そこは少し疑問だ。
武器屋はあくまでも人用のモノしか置いてないだろうからだ。
人形用の武器なんて、有っても売れるもんじゃあ無い筈だ。
王都でも村でも人形を連れて歩いて居たのは王子だけなのだから。
そして必殺はと、説明書きを読む。
”まれに改心の一撃が発生する 確率はレベル次第” と成っていた。
改心の一撃と有るが、必殺では無いらしい。
一回の与えるダメージ量が増える? そんな感じだ。
これは ”格闘” からの派生スキルなのだろうか?
それとも人形だからかな?
横書きの縦並びに混ぜコゼで表示されるので、そこのところは今一よくわからんと鼻を鳴らした王子。
次は自分のスキルを見る。
”棒術”
”鑑定”
”魅力”
と、これまた三つだ。
”棒術” は、単に棒で戦ったからか?
それと、プペとアンと被っているいるのは、もしかして主従関係が影響したのだろうか?
王子が仮に ”剣術” とかを取れば二体の人形もそれが付く?
もしくは付く確率が上がる?
そんな感じかも知れない。
そう考えれば、棒で戦っていないプペとアンに ”棒術” が付いた理由も納得出来る気がした。
”鑑定” は……何故だろう?
これは傀儡士由来なのだろうか?
人形の良し悪しを見る……とか。
いや、違う気がする。
その感じだとマルタに鑑定が付かない理由がわからない。
呪符士の方が鑑定は必要不可欠だろうからだ。
……バッタの魔物をジッと観察したからだろうか?
それともそれ以前の行動か……それらの積み重ね?
よくはわからんが ”鑑定” が付いたのはラッキーだ。
そして ”魅力” ……。
”注目を浴びやすく為る レベル依存”
目立つという事か……。
今でも十分に目立っているとも思うが……王子は自分の着ている服に目を落とす。
良い仕立てだとは思うが、派手で見た目から村の者とは明らかに違う気がする。
これも王子由来なのか、戦闘由来なのかがわからない。
王子って仕事は目立ってナンボだ……それはわかる。
しかし戦闘由来とすれば、いわゆるヘイトを集めるとも考えられるからだ。
でも王子も傀儡士も、どちらも後衛だよな?
ヘイト管理は必要か?
謎だ……。
考えてもわからないモノはわからないと諦めた王子はマルタの方を見た。
マルタはもう既に自分のメイン・ボードの確認は終えて、今は倒したバッタの札を作っている。
結構な数なので、良い金額に成ればとも思うが……所詮は低レベルでも倒せる魔物だ。
あまり期待はせずにいよう。
イザ換金でガッカリはしたくない。
それよりもマルタのスキルについて聞くかどうかを迷っていた。
見た感じ、とても機嫌が良い感じに見えるからだ。
だが……今までの感じと戦闘中の感じでは、今一というか……なんだろう、突っ込みどころが有りすぎる気がする。
確かに火の玉の射程距離は延びている……が、王子の持つ桧の棒よりも少し長いだけ。
一撃の威力を考えれば……ウーンと唸るしかない。
空中の爆弾の様なヤツはそれなりに威力は有りそうだが……アレは設置型で、しかも丸見えだ。
見える地雷なら避ければ良いだけだ。
なんなら石でも投げて爆発させれば処理は出来そうだ。
レベルが上がって機嫌が良いところに水を注す発言は控えたいが……話始めれば、たぶん我慢が出来ないと思う。
その欠点を指摘してしまいそうだ。
やはりここは聞かずにいた方が良いだろう。
……それに、何より怖いのは ”鑑定” だ。
王子にも付いたのに……もしそれがマルタにまだ無いと成れば、絶対にブー垂れるに決まってる。
そしてマルタは ”鑑定” を得られれば……確実に王子に自慢するだろう、思いっきりのドヤ顔で。
それをしないのは、まだ無いと考えるべきだ。
そうだ……マルタにはやはり何処かで便所掃除をさせよう。
それまではスキルの話はしない方がいい……絶対。
そう決めた王子は拳を握り締めて天を仰いだ。
そのマルタだが。
王子の見立て道理に上機嫌だった。
初めて狙って火の玉が魔物を捉えたのだ、それが嬉しくない筈がない。
何発か当てても倒せる程の威力は無かったが、それでも魔物の悲鳴は聞いた。
マルタの放った火の玉を嫌がったのだ。
もう無視はされない。
パーティーでも魔物退治に貢献出来る。
しかもだ。
新たに覚えた魔法!
任意の場所に……そこに手が届きさえすれば爆発する魔法を置いて置ける。
触れるモノが無ければ何処にでもだ。
そして、移動が無い分か威力も大きい。
そう、移動……飛ばすもやはり魔力なのだ。
火の玉の威力が小さいのは、その飛ばすに殆どの魔力を依存していたかだと、マルタは知っていた。
それはそうだろう、自分で放つ魔法だ。
火の玉を出す行程と飛ばす行程の二つをマルタ本人がコントロールしていたのだから。
初めて魔物にトドメを刺せた。
それも自分の魔法だけで。
コレが気分が良くない訳がない。
そんなわけで、マルタは鼻歌混じりに倒したバッタの残した光の玉を札に移す作業をしていた。
いたる所に転がるバッタを、草を掻き分けて探して札を当てる。
その死骸には興味は無い。
マルタには、虫を食べる習慣が無いのだからだ。
作業の合間、合間に王子を盗み見るマルタ。
本当は自慢したいのだが……どうも王子は難しい顔をしている。
あれは録なスキルが付かなかったからだと、マルタは睨んでいた。
だいたい王子って職が駄目だと思う。
そんな職業に戦闘能力が付く筈もない。
そもそも職業として成立するのかも怪しい。
以前に一緒に狩りをした、第二王子は職業に王子なんて無かったし。
チャンと ”剣術” を持っていた。
でも王子は……。
チラチラと目線を隠しながらに王子を見る。
地面に胡座を掻いて座り込んだ王子。
足と肩に引っ掛けた木の棒……。
腰に剣をぶら下げているのに……なんでそれを使わないんだろう? それが不思議で仕方無かった。
確かに優しい所は有る。
腰を抜かしたマルタをおぶってくれた。
そんなの王族では有り得ないと思う。
エウラリアにも同じ様に優しい。
何度目かの視線を王子に向けて見た王子は、拳を握り締めて天を睨んでいた。
どんな決断をしたのやら……だ。
顔を草に隠し、大きく溜め息を吐いたマルタ。
でも、なんだろう……格好良くは無い。
顔は不細工では無いのだが、ピンと来るものが無い。
王子様なのに、何処にも憧れる要素が見付けられなかった。
普通は王子様ってだけでカッコいい筈なのに。
残念だ。
マルタは首を振りつつ、草の中のバッタを探した。
集めた札もそこそこの数に成った頃。
少し先の草村が動いた。
なんだろうとそちらに目を向けたマルタ。
不自然に揺れる草は、マルタの方に近付いて来た。
バッタの生き残り?
それなら仕留めてやろうと杖を握り直す。
向こうが近付いて来るならマルタは隠れて不意討ちだと、そんな姿勢だ。
気付かれない様にジッとその場にうずくまる。
カサカサカサ……。
草の揺れがマルタの射程距離に入った。
バッと立ち上がったマルタは杖を差し出して……狙いを……。
ソコに居たのは鶏だった。
首輪も着けて居るので、コッコ村のヤコポ養鶏場のヤツだろう。
驚いたマルタは叫びを上げた。
コイツは倒せない。
倒しちゃあイケナイ奴だ。
王子の耳にマルタの叫び声が届いた。
「出た!」
「何がだ?」
当たりクジか?
そんな期待に王子は立ち上がる。
「にわとりー」
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