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028 レベル上げ


 ピロロロ、プーパープーパパー……。


 バッタはその複眼で王子達を見ていた。

 口元の牙が左右にギチギチと動いている。

 その大きさは子犬サイズ。

 決して大きいわけではないが……バッタとしては巨大だ。


 王子は桧の棒を真っ直ぐに構えて魔物の出方を見る。

 初めての魔物なのだから、どう動くのかがわからないからだ。

 手足は細いが、先は鍵爪の様だ。

 それで切り裂くのだろうか?

 背中には長い羽が見える。

 飛んで空からの攻撃か?

 王子は現れてから、まだその場から動いていないバッタに集中していた。

 「先に動いた方が殺られる」

 声に成らない呟き。

 根拠の無い緊張感だ。


 その集中と緊張を壊した者が居る。

 マルタだ。

 王子の横に立ち、届きもしない火の玉を連射し始めたのだ。

 だが、いつもの様にその火は届かない。

 射程50cmの無意味な魔法攻撃。

 一切のダメージを与えていないのに、ムッフーと偉そうな鼻息を吐き出して、勝ち誇ったように胸を張る。

 「先手必勝よ!」


 いや……それは攻撃が届いての話だ。

 王子は目の前のバッタと共感するものがあった気がした。

 バッタの目の奥もそんな感じに光って見えたのだ。

 

 さて……無意味なマルタは放って置いて。

 再度にらみ合う王子とバッタ。

 ソヨソヨと草の先が風に揺れていた。

 もうバッタの目にはマルタは映っていなかった。


 「無視すんなー」

 軽快な音楽と、騒がしい叫びが混じり会う中。

 王子はニジリニジリと足先を滑らす様にして、間合いを積める。

 バッタはその場動かないまま。


 そのバッタの顔に一枚の札が貼られた。

 マルタの ”躓く呪い” だ。 

 一瞬驚いたバッタ。

 チラリとマルタに顔を向ける。

 

 それを見逃さなかった王子は叫んだ。

 「プペ! アン! 今だ」

 

 事前に草に紛れて背後に回る様に打ち合わせしていたのだ。

 二体の人形は、後ろからバッタの腹に向かって跳び、回し蹴りをかました。

 ドカ。

 ドカ。

 と、綺麗に入った蹴りは、それぞれに+15のダメージを与えていた。

 

 そして、王子も飛び掛かる。

 桧の棒を振りかざし走り寄る。

 だが、その前にバッタは王子目掛けてジャンプした。

 王子の頭上を抜けて、背後に着地。

 たたらを踏んだ王子は、急いで振り返る。

 王子と二体の人形はバッタを睨む。 


 慌てたのはマルタ。

 いきなり隣に現れたのだ。

 前を積むって火の玉を連射。

 ポス。

 ポス。

 ポス。

 そのままバランスを崩して尻餅を付く。


 バッタはマルタを睨み。

 飛び掛かろうと腰を落とす。

 

 それを見た王子は、距離を計った。

 走り寄れば間に合わない。

 桧の棒を投げても、当たったところで攻撃はそれ一回で終わる。

 なので、左右に居た人形を掴み。

 バッタに投げ付けた。

 「組み付け!」


 今まさにジャンプしたその時、バッタの背中に命中した二体の人形はそのままシガミ付く。

 突然の重みにバランスを崩したバッタはジャンプをし損ねてマルタの横に落ちた。

 尻餅を付いたマルタの手のスグに横だ。

 その距離なら火の玉も当たると連射を続けるマルタ。

 いや、目を瞑ったままだから、偶然に当たっただけかも知れない。


 しかし、そんな事はどうでも良いと。

 今度は王子が走り出す。

 腰溜めに桧の棒を構えて、真っ直ぐに突きだした。

 ガン。

 と、バッタの顎を打ち抜いた。


 プルルリー。

 それがトドメに為った様だ。

 口から赤色の汁を吐き出して、バッタは倒れ込んだ。

 バタリと……バッタが。


 パララパパッパー。

 

 「お! レベルが上がったか?」

 王子はマルタの手を取り、そして引き上げて叫ぶ。

 せわしなくメイン・ボードを開いて確認。

 「あれ? 変化が無い」


 「上がったのは私みたい」

 マルタもメイン・ボードを見ていた。

 「黒魔法はそのままだけど、呪符士がLv2に成った」

 悦びの声を上げたマルタはペラリとメイン・ボードを捲る。

 「スキルは……お守り?」


 「なにそれ?」

 

 「持っていれば……まれに呪いを弾くだって」

 フム……と、マルタ。

 そして王子に向き直って。

 「必要なら、書くけど」

 何も書かれていない札と筆を取りだそうとしているマルタを制止した王子。

 「いや……今はいい」

 はっきり言って、必要ない。

 薬屋のおじさんも言っていたが、この辺りの魔物に呪いを飛ばすヤツは居ないからだ。

 

 「それよりも、マルタのレベルが上がったのならエウラリアも上がってそうだな……スキルは出たのだろうか?」


 「石化解除?」

 唸るマルタ。

 「どうだろう」


 たぶん駄目だろうなと王子も唸る。

 マルタのLv2がこんな感じだ、薬士もたかが知れているだろう。

 だいたいがエウラリアはまだ薬の調合すらもしていない、前の戦闘でもそこらの草を千切って投げていたくらいだ……それを考えればまだまだだろう。

 「Lv5くらいを目安にするか……」

 まあ、それもそんなに先では無いだろう。

 前回から結構簡単に上がっている気がする。

 低レベルは上がりやすいのだろう。


 

 ピヨーン。

 

 戦闘終了後。

 グダグダと考えていた二人の目の前にバッタが現れた。


 ピロロロ、プーパープーパパー……。

 

 あれ? と、思い足元に目線を落とした王子。

 そこには倒したバッタが転がっていた。


 「新手だ!」

 サッと桧の棒を構える。


 「バッタは勝てる」

 マルタも杖を構えた。


 と、そこにまた……ピヨーン。

 二つの顔が並ぶバッタ。


 「二匹?」

 マルタがそう叫んだところで……ピヨーン。

 「三匹?」

 ピヨーン。

 ピヨーン。

 ピヨーン。

 「どんどん増える」

 焦りの見える声音で叫んだ。


 「囲まれたか……」

 王子もまた焦っていた。

 一匹なら勝てた。

 でも複数はどうだろうか?

 しかし……逃げるべき退路は無い。

 「やるしか無いのか……」


 そう覚悟を決めた時。

 バッタが真っ直ぐに王子目掛けてジャンプした。

 すかさず身体を屈めて桧の棒を突きだす。

 手に伝わる感触が妙に気持ちが良い。

 カウンターで改心の一撃に為った様だ、バッタはその場で倒れた。

 「まず一匹だ」


 次のヤツが飛び上がる。

 そこに人形達が飛び付いた。

 まとわり着かれて落下するバッタに、マルタが近付いて火の玉を連射。

 そこに全体重をのせた王子の攻撃。

 「二匹め!」

 マルタが叫んだ。


 と、同時に今度は王子が飛び掛かる。

 少し体が軽くなった感じだ。

 そして、桧の棒も妙に力強い。

 新たに飛び付いたバッタは一撃では無かったが、数発でシトメられた様だ。

 次にと目線を移す。


 と、マルタの火の玉の飛距離が伸びていた。

 50cmが1mほどに成っている。

 成る程……王子もマルタも戦闘中にレベルが上がったのだろう。

 となれば、プペとアンも上がった筈と、見れば。

 二体の人形は空高くジャンプしていた。 

 高さにして王子の身長の二倍以上。

 そこから片足を差し出してのキック。

 そしてまた飛び上がる、その間際に片ヒザ蹴りをバッタの顎に決める。

 そんな連撃を叩き込む。

 

 あの子達はやっぱり強い。

 ケットシーには悪い事をしたが、無茶なギャンブルをして正解だった。

 そんな事を考えながらにバッタを踏み潰す。

 その瞬間にまた体が軽く成るのを感じた。

 次に振り抜いた桧の棒は、一撃でバッタを屠る。


 マルタの火の玉も射程が2mを越えていた。

 と、マルタが少し大きい火の玉を空中に置いてその場から離れた。

 それを幾つもの作り走り回る。

 

 それは?

 と聞こうとした時に、その留まって居た火の玉にバッタが触れる。

 瞬間に爆発が起きた。

 規模は大きくは無いが、バッタを一撃で仕留める威力は有ったようだ。

 爆発に弾かれたバッタは二度と起き上がらない。

 「地雷か?」

 空中に設置するなら機雷なのかも知れないが、今の状況には十分な脅威を魔物に与えている。

 そしてジャンプが攻撃のメインのバッタにはこれ以上無い牽制だった。

 動ける場所が制限されるのだから。

いかがでしたでしょうか?


面白そう。

楽しみだ。

続きは?


そう感じて頂けるのなら、是非に応援を宜しくお願いします。

ブックマークや★はとても励みになります。

改めて宜しくです。


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