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024 クエスト・ボードってヤツ


 隣の窓口でもめているお爺さんは居たが……王子達は無事に宿屋を予約出来た様だ。

 巻き込まれない様に目線を外して窓口を離れる。

 いや……お爺さんがお前達も何か言ってくれとそんな目線を飛ばして来る気がしたのだ。

 確かに小遣いが減るのは悲しいだろうが……国が決めた事だ。

 仕方無いと思う。

 ……あれ? 経験値の値段は、時価なのだろうか? 需要と供給?


 「でも……有用性の低い経験値の需要って」

 チラチラと回りを見たマルタ。

 「貴族や魔道具屋がって言ってもそんなに売れないよね?」

 ギルドには冒険者や商人の格好をしたものは居たが……貴族っぽい者は見られない。


 「経験値……売るか?」

 そんなマルタ達の耳に何処かのパーティーの声が聞こえて来た。

 「どうしようか? 買う金は有るけど……」

 「レベル調整って……面倒臭いよな」

 「確かにな、1Lvずれただけでパーティーが組めないなんてな……」

 そんな相談をしている。


 なるほどとポンと手を叩くマルタ。

 「パーティーのレベル合わせに使うのか」


 それには王子も納得した。

 「そういう使い方か」


 「でも、受付の方はそんな話は……」

 王子の背中でエウラリアが首を捻る。


 「ああ……それはたぶん、あんまり勧められないからじゃあ無いか?」

 王子は会話の先のパーティーと受付を交互に見て。

 「売るにしても買うにしても、それをした状態では危険が増えるとか」

 

 「確かにレベルが下がればやれるって思っていた事が出来なくて焦る事が有るかも」

 マルタが頷き。

 

 「買ってもレベル依存のスキルを得てもイキナリでは使い難いだろうしな」

 王子もヤッパリ頷いた。

 そして思い出す。

 王子は耐性スキルをたくさん持っていた。

 それらは職業に依存していたかも知れないが、行動にも影響されていたと思う。

 もしかしてレベルの制限に下限が有り、低レベルと何かの行動が条件揃わないと覚えられないモノも有ったのかも知れない。

 傀儡耐性なんかは……あやしい気がする。

 それを得る迄は一度も魔物との戦闘は許されなかったのだし。

 「ヤッパリ簡単に得た経験値では強く成れないじゃあ無いかな」

 王子のそんな呟きに二人も頷いていた。

 

 「まあ私達には関係が無いよね……地道にレベル上げしよ」

 と、マルタは受付の反対側に在った掲示板を指差した。

 そこには、なん組かの冒険者達が集まって居る。

 クエストが書かれた紙が貼って有るのだ、それを指差しながらに相談をしている様だ。

 たまに紙を引きちぎり、それを冒険者ギルドの窓口に提出している者も居た。

 そのクエストを受けるのだろうと目で追っていた王子。


 同じ様に、そんな冒険者を見ていたマルタも。

 「今すぐは、無理だろうけど……見るだけ見てみない?」

 マルタは二人の返事も聞かずにそちらへ歩いて行く。

 自分達の受けられる低レベルのクエストにどんなものが有るのか興味が有るのだろう。

 それは王子も興味が有ったので、マルタを追って掲示板の前に立つ。

 三人とも冒険者に成ったばかりで、クエストなんて受けた事が無かったからそうなるのも必然だろう。


 

 掲示板は横に長い形に成っていた、左から右にレベルが上がる様だ。

 つまりは王子達みたいな初心者は左端の幾つかのクエストしか受けられないって事だ。

 その幾つかの張り紙を見てみると……。


 「採取ばっかりだね」

 マルタは呟いてエウラリアの足を見た。


 「薬草か……」

 王子も呟く。

 もしかすると簡単なものならエウラリアを宿屋に置いて、マルタと二人で受けてもいいかと思っていたのだ……マルタも同じ気持ちだった様だ。


 「討伐クエストは平均レベル5以上だよ」

 近くの冒険者がニコニコと王子達に声を掛けてくる。

 「君達は冒険者に成ったばかりだろう?」

 銀色に輝く胸当てと腰のブロードソード……片手でも両手でも持てるそんな感じの剣が目立つ。

 装備だけを見ても明らかに上位の冒険者だとわかる格好だ。


 「はい」

 王子は、少しい訝しんでその冒険者の男を見た。

 たぶん親切心で声を掛けたので有ろうとは思うが、イキナリ後ろからは驚かされた。


 「最初は特に慎重にね……報酬で決めるのでは無くて出来るか出来ないかで判断するのが大事だよ」

 少し説教臭い言い回しにも聞こえたが、別段に悪い人では無いのだろう。

 王子にしても、小さな子供が困っている風なら声を掛けるかも知れない……そんな感じの積もりだと思う。


 「報酬か……」

 ジッと冒険者を見ていた王子の耳にマルタの声が届く。

 「確かに金額がバラバラだね」

 

 王子も張り紙に目を戻す。

 草や実の採取でも金額が違う。

 決して大きな金額では無いが、これが難易度の判断にも成るのかも知れない。

 「フム……」


 と、右端で大きな声とざわめきが起こった。

 皆がそちらを向く。

 ギルドの職員が張り紙を張り付けている様だ。

 

 「珍しいね……あんな端っこは滅多に出ないよ」

 後ろの冒険者の声が変わった。

 「ドラゴンクラスの討伐かな?」

 興味は有りそうだが、それを覗きに行く素振りは無い。

 「あれ位のレベルだと報酬は凄いよ、金額もだし……たまに爵位とかも有るからね」


 「爵位? 貴族に成れるって事か……」

 王子にはあまり関係の無い話か。


 「まあ、一代貴族の準男爵がせいぜいだけどね」

 冒険者の発言を受けて、名前だけ貴族か……と、頷いた王子。


 ギルド職員がその場を離れると。

 王子達と後ろの冒険者以外が一斉にそこに集まる。

 しかし、動こうとしない冒険者が気に為った王子は。

 「貴方は見に行かないんですか?」


 「そうだね……どうしようかな?」

 その態度が妙に余裕が有りそうに見えた。


 「もしかして、もう既に貴族の報酬は貰っていたりして」

 マルタが言った。

 爵位の報酬は一度きりだ、何度も準男爵の報酬を得たところで位が上がるわけは無い。

 そこが一代貴族の限界だ。


 肩を竦めた男。

 「冒険者は最終的には、みんなアレを目指しているんだ……憧れだね」


 話を誤魔化した?

 王子はそう感じたが、マルタは普通に頷いている様だ。

 まあしかし、これ以上この冒険者と話して居ても仕方がないと、王子はその右端のクエストを見てみようとそちらに移動する。

 もちろんマルタも付いてきた。


 そしてマルタは呟く。

 「見えない……」

 集まっている冒険者達は皆が大人だ、身長もマルタよりも大きい。

 戦士や前衛をこなすであろう者達はガタイもデカイ。

 そこを後ろからピョンピョンと跳ねる様にしているマルタだが、それでも見えるわけもない。


 「ドラゴンの討伐依頼みたいだね」

 さっきの冒険者が後ろに付いて来ていた。

 どうも親切心が押し付けがましく感じる。

 何か目的でも有るのだろうか?

 そんな王子の疑問にもまったく気付きもしないマルタは、小さな体を利用して冒険者の集団に体をねじ込み始めた。

 そして消えていく。


 スグに戻って来たマルタは。

 「ヤッパリ北の山の温泉地に居るヤツだって」

 うまく覗けた様だ。

 

 「ふーむ……ドラゴンか」

 ソイツを倒さないと城へは帰れない。

 王子はクエスト・ボードを左から右に見渡して。

 「先は長そうだ……」

 溜め息と共に吐き出した。


 「アレ?」

 その時王子の背中のエウラリアが驚いた声を上げる。

 そして王子の肩を叩いて指を差した。


 なんだ? と見れば一枚のクエストの張り紙。

 そこには、鶏との文字が見える。

 クエスト受注レベルは20と有るから王子達には到底受けられないが……鶏。

 鶏なら倒せたぞ。


 「コッコ村ヤコポ養鶏場よりの依頼……最近、当養鶏場の鶏が盗まれる事件が多発しているので犯人の捜索依頼……」

 ボソボソと読み上げるエウラリア。

 「当方の鶏の目印は首に巻かれた金属の標識タグ……」

 最後の方は聞き取れる限界の小声。


 三人はお互いに顔を見合わせて……。

 あ! っと、そんな顔に成っていた。

いかがでしたでしょうか?


面白そう。

楽しみだ。

続きは?


そう感じて頂けるのなら、是非に応援を宜しくお願いします。

ブックマークや★はとても励みになります。

改めて宜しくです。


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