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019 王子……王都を出る

今日から再開しようと思います。

取り敢えず1日一本で行きますが、うーんと悩んだ時には、また止まって考える時間を作りたいと思います。

焦らずユックリと……でも確実にと、そんな感じです。


宜しくお願いします。



 教会に戻って来た王子は、先に戻っていた二人を見付けた。

 入り口近くの椅子に座り、エウラリアは熱心に本を読んでいる。

 近くに座るマルタは、膝の上に置いた木箱を探っていた。

 その様子を見た王子は、二人も何かの職に着いたのだろうと理解する。

 そして二人に近付いて行く王子の足元には二体の人形……プペとアンがクルクルと楽しそうに回ってジャレていた。


 「終わったの? 長かったわね」

 本から目線を上げたエウラリア。


 「ホント待ちくたびれたよ」

 マルタはわざとらしくアクビをして見せた。

 

 王子は肩を竦めて。

 「中々に面倒臭かった」

 と、笑って返した。

 「まあ、みんな終わった用だし……行こうか」

 ドラゴン退治だ。

 それ以前にレベル上げなのだろうが、最終目的はそこに成る。

 王子は、もう既に諦めていた。

 このドラゴン退治は回避不可能のイベントなのだと。

 王族である王子が、マトモなお供も連れずに城を出ても一向に騒ぎには成らない……それはつまりは……そういう事なのだ。


 頷いた二人は椅子から立ち上がり、教会を後にする。

 王子からすれば、マトモでは無いお供のこの二人はどう考えているのだろうか?

 子供だからわかってないだけなのだろうか?

 それとも、王子よりも先に諦めている?

 まあ二人共、貴族の娘だ。

 そんな娘達が王に命令されればその時点で考えるのも止めたのだろう。

 理不尽でも、無茶苦茶でも王の命令は絶対だ。

 しかも、自分達の祖父の命でもある……思考停止もやむを得ないのか。


 

 表に出た三人は、賑やかな街並みをと空に浮かぶ太陽を見た。

 「あんまり時間は立って無いように見えるね」

 近くに有るイカ串の屋台も変わりが無い。

 

 「そうね、不思議なダンジョンだったわね」

 王子の言葉にエウラリアが答えた。

 「まあ、それなりに楽しかったわ」


 「私の所には……最後にウザイのが居たけどね」

 顔をしかめたマルタ。

 ウザイのが居たと言うよりも、マルタがウザくしたが正解なのだが……残りの二人にはその状況はわかっていないので、ふーんと答えるしかなかった。


 「で、その足元に居るのはナニ?」

 マルタが話を変える様に、王子の足元を指差す。


 「ああ、俺は傀儡師に成ったんだ」

 王子の言葉に首を傾げている二人。

 「傀儡師ってのは、人形使いの事」

 下を指差して。

 「この子達はソコで使役した人形」

 青い服の方を指して。

 「プペ」

 紹介されたプペは、自身のスカートの端をつまみ軽く腰を曲げてお辞儀をして見せた。

 「赤い服の子はアン」

 アンも同じ様な仕草で挨拶をする。


 「あら可愛い」

 エウラリアは自分の自己紹介を人形達にする。

 その仕草は人形がしたのと同じだった。

 

 「ふーん、強いの?」

 適当な挨拶で済ましたマルタは人形達をつついていた。


 「滅茶苦茶に強かった……けど……」

 王子は少し言い澱む。

 

 「けど?」

 エウラリアに続きを即された。


 「今はLv1だしな……だから、どうだろうかと」

 王子は自分のメイン・ボードを開いて見た。

 そこには、使役人形プペとアンと有るが同時に表示されるLvも1だった。

 「人形にもレベルが有るみたいだから、育てれば強く成る感じかな?」

 

 「まあそれは仕方無いわね……どうせレベル上げはしないと駄目だろうし」

 エウラリアも自身のメイン・ボードを開いて。


 「エウラリアはどんな職に?」

 横から覗いたマルタが尋ねた。

 「薬師よ」

 フムと良くわからないとそんな顔をしたマルタに補足した。

 「白魔法と薬で、結局は回復ね」


 「なるほど……私もそんな感じだ」

 マルタも自分のメイン・ボードを開いて。

 「黒魔法に呪符師……呪いとかが増える感じ?」

 疑問系なのは本人もわかってないのだろう。

 レベルが上がってからわかる、いやマルタはやってみてわかるって感じか。


 そんな会話をしながら歩き出す三人。

 ふと良い匂いに鼻を鳴らしたマルタ。

 「あ! さっきのイカ串を頂戴……待っててお腹すいた」

 王子に手を出した。

 

 しかし王子は苦笑い。

 「イカ串はアイテムとして使ってしまった」

 ケットシーを倒したアイテムだ。


 「ええ……」

 下唇を突き出して露骨に残念がるマルタ。


 「じゃあ、また買ってくるよ……でも、イカ串よりも肉の串の方が美味しかったぞ」

 手を出して小銭を貰い提案をする王子。

 マルタも猫耳だ、人に近い感じだがイカを食って腰を抜かされると困ると思ったのだ。

 下手に食べさせて、腰を抜かしてお漏らしでもされた日には絶対に恨まれる。

 一生言われ続ける気がする。

 自身が恥ずかしい記憶としてでは無くて、食わせた王子の責任だと……そんな感じでだ。

 「だから、肉にしよう」

 それが最善で最良だ。


 「えええ、あれがいいい」

 駄々をこね始めたマルタ。

 「イカ串を食べてみたいいいい」


 「そうよね、違うのが食べてみたいよね?」

 ウンウンと相づちを打つエウラリア。


 うーんと考える王子。

 しばらく考えて、本人が一番に理解している筈だと答えを出した。

 マルタは猫耳だけど猫じゃあ無いって事なのだろう。

 「わかったイカ串だな」

 





 王都から出た三人と二体の人形。

 広い草原に囲まれた街道を歩いていた。

 足元はレンガの敷き詰められた街道。

 まだ王都に近いからか人通りも多く、何人もの人とすれ違う。

 春の陽気でか、軽装な者も多い。

 この場合の軽装とは装備の話ではない。

 王都の近くにはあまり強い魔物は居ないので冒険者も少ないのだ。

 すれ違うのは普通の街の人や商人だけだった。 


 いや、冒険者が全く居ないわけでは無い。

 街道の警備で、草原の所々に立ち番をしている者は居る。

 それが初心者の冒険者の最初の仕事だった。

 強い魔物の出ない所での街道の警備だ。

 ただ立っているだけの仕事だが、国からの依頼なので報酬はそれなりに良い。

 なので街道は治安がとても良かった。

 ただし、それもレンガの街道だけだ。

 少し離れればやっぱり魔物も普通に出る……この場合の普通は弱い魔物がだが。

 そして、もっと離れて人の目が無くなれば……悪い人間に出くわす可能性も出てくる……いわゆる盗賊とかだ。

 まあそれも王都の近くでは、ほとんど居ないのだが。

 理由は簡単、盗賊をするくらいなら冒険者で立ち番をしている方が確実に儲かるからだ。

 冒険者ギルドとはそういう底辺の仕事しか出来ない者の受け皿でもあった。



 王子はキョロキョロと辺りを見渡しながら、先を歩くエウラリアに声をかけた。

 「そんなに急がなくても良いだろう?」


 うつむいたエウラリアは王子から離れようと小走りで歩く。

 「ねえ……恥ずかしいか、声は掛けないで」

 

 三人と二体はすれ違う人達の注目を集めていた。

 王子達を見て、皆がクスクスと口許を押さえて笑っている。

 それは王都の門番もそうだった。

 理由は簡単で、お尻をプルプルとさせたマルタが王子に背負われているからだ。

 

 「やっぱり、イカは駄目だったか」

 溜め息を吐く王子だった。

面白そう。

楽しみだ。

続きは?


そう感じて頂けるのなら、是非に応援を宜しくお願いします。

ブックマークや★はとても励みになります。

改めて宜しくです。

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