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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
混迷世界のアリス

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またショップに行こう2

「わあー! 凄いです! 店主、此処は何を扱っているお店なのですか⁉」

「売っているものなら何でもだ。つまり買うんだな。さあ、何を買うんだい?」

「アリスさまが私に服を仕立ててくださると!」

「仕立てるとは言ってない」


 此処、そういう場所じゃないから。ショップだから。


「つまり服か。さあ、リストはこれだ」


 言いながら投げてくる紙束を私はキャッチする。

 ……うん、あの頭痛いリストが並んでる。

 

・お正月用うさぎさん着物セット

・新生活記念入学セット

・スペシャルプリンセスセット

・お花見ワンピースセット

・夏だ、海だ! 水着セット

・定番スクール水着セット

・ちょっと大人な水着セット

・フリルと夢がいっぱい水着セット

・夏の純情ワンピースセット

・秋の訪れコーデセット

・お月見着物セット

・冬のスキーセット

・もこもこセーターセット


「……なんで水着が増えてんの?」

「入荷の都合だ」

「この不思議空間で何処から入荷してんのよ」

「秘密だ。で、どれを買うんだ?」

「わあー、どれもなんだか可愛い語感ですね!」

「そうかしら……」

「もっと見せてください!」


 リストと私の間にスポッと潜り込んで楽しそうに笑っているミーファを見てると「ま、いいか」と思うんだけど……。


「気になるなら試着も出来るが」


 店主が言うなり私の目の前にまたあのメニュー画面が立ち上がってくる。

 ていうかコレって私用でしょうが。今回は油断しないわよ。

 メニューを閉じるボタンは……っと。


「アリスさま! これってあたっ⁉」

「わっ⁉」


 あ、しまった! ミーファが私の肘にぶつかって……あっ。

 ポンッと音を立てて変わる衣装。

 私の服が可愛らしい制服に代わり、背中に真っ赤なランドセル、手にリコーダーが握られる。

 何このリコーダー。まさか剣なの? 馬鹿なの? これで殴られるモンスターの気持ちになりなさいよ。

 

「アリスさま……! なんだか凄くお似合いです! 私もこれではダメでしょうか⁉ 隣に並びたいです!」

「やめときなさい。別のにしましょう、別のに」


 試着解除ボタンを押せば私の姿は元に戻って、ミーファは残念そうな顔になる。

 つーか私はいいんだってば。よし、今度こそメニュー閉じたっと。


「ていうか、気軽に着れるものがいいわよね。あとパジャマ。えーと……お、あったあった」


・赤いハートのパジャマセット

・青い星のパジャマセット

・緑の草原のパジャマセット

・黄の月のパジャマセット

・黒のドラゴンのパジャマセット

・もこもこ☆うさぎさんパジャマセット


 ……うん、知ってたけど。前に買いに来たけど。種類多すぎない? これで一部ってどういうことなの。デザイナーでも雇ってたの運営?


「えーと……どれにする?」

「アリスさまっぽいので、この赤いハートのが私は好きです!」

「そう? じゃあこれを……この子のサイズで。あとは一日中パジャマってわけにもいかないから、何かラフな服……ええっと」


 そうして幾つかそれっぽい服を選んでいくと、まあそれなりの量の服がカウンターに積み上がっていく。


「値段はこんなもんだ。構わねえな?」

「オッケー。カスみたいなもんよ」

「毎度どうも。他に買うもんはあるかい?」

「あ、この子に身代わりドール。使えるでしょ?」

「ああ」


 コトン、とカウンターに置かれるのは可愛くないデザインの小さな人形。

 身代わりドール。ゲーム内だと残機が増える効果があったけど……現実に残機なんてない。

 でもまあ、何かしらの効果はあるはず。


「厄介ごとか? 身代わりドールが必要になるような」

「何よ。だったら何か解決策でもあるの?」

「別にない」

「あっそ」


 なんか力抜ける。ま、いいけど。心配してくれたってことなんだろうし。


「だが、俺たちは世界を救ったお前に感謝している。アリス。お前こそが救世主だった」

「それは……」


 それは、ゲームの話だ。それに、あの世界の最後は……結局。

 クリアしても世界は滅びる定めだった。それに、これは。


「俺にとって、今は夢を見ているような感覚がある。だが……こうも思う。いずれこの夢は覚め、本当のお前に会う機会が訪れる、と」

「……どういう意味?」

「俺も分からん。だが、これは覚えておいてくれ。俺は……俺たちは、お前に感謝している」


 それに、私は答える言葉をもたない。あの世界は、私にとってはゲームだった。

 その機能が現実になって、ショップ機能もあって。深く、考えてはこなかったけれど。


「そう。なんとなくソレについては予想できる部分もあるわ。その時が楽しみね」

「ああ、楽しみだ」


 たぶん、レベルを上げることでその機能は解放される。

 うん、ミーファの服を買いに来てまたやるべきことが増えちゃったけど……特に、煩わしくはない。

 むしろ、ちょっとやる気が出てきたかもしれない。

 あの納得いかないエンディングには続きがある。ただそれだけで……私の気持ちは、大分上向いたのだ。

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