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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
混迷世界のアリス

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またショップに行こう

 それから、さらに数日。お姫様は私のパジャマを着てソファーでダラダラしている。

 すっかり慣れた様子だけど……うーん、いいのかしら。もしかして私、お姫様を堕落させてる……?

 でもまあ、この子も色々あったしなあ。そのくらいの方が丁度いいのかもしれない。

 いや、むしろ娯楽が少ないんじゃないかな。そういうのを言えない雰囲気だとか思われてる?

 うーん。いかん。いかんぞこれは。


「えーっと……お姫様?」

「あら、アリスさま。ミーファとお呼びくださいと申し上げたではありませんか」

「いや、うーん。じゃあミーファ。なんていうか、色々大丈夫?」


 私がそう聞くと、ミーファは首をかしげて疑問符を浮かべたような顔になる。


「何がですか?」

「いや、色々。ここ、娯楽も少ないし。もうちょっと遊ぶものとかあるといいのかなあって思って」

「そう言われましても」


 お姫様……ミーファは机の上に置いた分厚い本をポン、と叩く。

 あんまり見覚えはないけど、たぶん本棚に刺さってたうちの一冊だろうなあ。

 私は難しい本読むと眠くなるから、あんまり触ってないけど。


「このお屋敷は読んだことどころか、聞いたこともないような様々な本がありますし。それに……」

「それに?」

「このアリスさまが主役の本の面白いこと……!」

「ぶっ!?」


 何それ!? 知らないんだけど⁉ 私が主役の本って何⁉ いや、まさか!


「破滅の邪神ラルディガートと破滅の軍団と戦うアリスさまが主役の冒険活劇……! 何度読み直しても素敵ですし、こんなお屋敷を持っていらっしゃる経緯にも納得がいくといくものです……!」

「ごめん、ちょっと待って」

「はい」

「その本貸して?」

「はい、どうぞ」


 ミーファから受け取った本をペラペラと捲っていく。

 えーと、何々……? ふむ、ふむ……。

 パタンと本を閉じて、私は悟る。

 これ、「破滅世界のファンタジア」のノベライズみたいになってる……。

 しかも私主役だ……ええ、どうなってんの……?

 でも落ち着いて読んでみると、ゲームの内容とは違う場所もある。

 それは私が「この世界に落ちてきた経緯」が記されていることだ。

 勇者召喚、そして魔法陣に巻き込まれた私……。記されているのはそこまでだけど。

 そこまで考えて、ようやく気付く。

 そうか。これ、セーブファイルなんだ。確か「救世の書」だっけ。そういったものにセーブデータが手動セーブとオートセーブの2種類で記録されていたはず。

 だから、これはオートセーブで記録されてた……ってことになるんだと思う。

 そしてこの世界ではそんな機能は無いから此処で記録が止まったってこと……かな?

 ま、そんな機能がある方がおかしいしね。うん、納得いった。


「とりあえずコレは没収します」

「ええ!? ど、どうしてですか⁉」

「私が恥ずかしい」

「ええー⁉ そんなあ!」


 あと危ないし。今機能停止してても何が起こるか分かんないしね。

 本を宝箱に突っ込もうとして……入らない。弾かれる。


―アイテムではありません!―


 ……むう、ダメなのか。うーん……仕方ないか。私の腰に引っ付いているミーファに本を渡すと、宝物のように抱きしめる。


「……いいんですか?」

「まあ、仕方ないって感じかしらね。とりあえず保留」


 ふうー……と大きく溜息。思わぬところに思わぬものがあったわね。

 1度この家、色々家探しした方がいいかもしれないわ。


「ま、それはいいとして……その服よね」

「はい?」

「いつまでも私の服ってわけにもいかないでしょ」


 なんか悔しいことにサイズはあんまり変わんないんだけど、それでも結構ダボついてる。

 ミーファが「これでいい」って言ってたから様子見してたけど、やっぱりあんまり良いものじゃない。


「服買わなきゃダメね」

「え? お洋服ですか? 此処に仕立て屋を呼ぶのですか? ですが、それは……」

「呼ばないから。そもそも私そういうの知らないし」


 お姫様だもんねえ。仕立て屋呼ぶとかそういうのあるんだ……。

 ていうか仕立て屋だろうと帽子屋だろうと此処に入れる気はないんだけれども。


「そうじゃなくて、お店に行くの。この中にあるから」

「え!? 雇っていらっしゃるんですか⁉」

「雇ってない。ていうか何なんだろう、アレ……」


 ショップ機能がリアルになったのはいいけど、リアルになったらなったで謎が増えるのよね……。

 まあ、いいけど。気にしてると疲れるし。考えても答え出ないし。


「よし、行きましょ」

「はい! 楽しみです! あ、でもそれなら着替えませんと……」

「別に構わないわよ。そういうの気にする場所じゃないし」


 ミーファの手を引いて、ショップの扉に触れる。


―ショップへ移動しますか?―


 中空に浮かぶ「はい」のボタンを押せば、私とミーファはショップの中へと転移する。

 武器も防具も雑多に並んだ店内と、お店のカウンター。そして……気だるげな、おじさん店主。

 いかにも頑固一徹って感じの人だ。ていうか、何も変わってない。

 うーん、ほんと謎ね。


「……おう、いらっしゃい。今日は買うのかい? 売るのかい?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 課金アイテムショップだ! なんの衣装を買ってくるのか
[一言] 人間?の監禁?に、どんなブラックも太刀打ちできない重労働?
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