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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

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境界線

 その夜、私は夢を見た。

 それが夢だと分かるのは、私にベッドに入った記憶があるのもそうだけど。

 何よりも……黒い花と赤い花の咲き乱れる、その場所のせいでもあって。


「……ブラックアリス」

「再会の挨拶は必要? 新しい私」


 気だるげな様子で挨拶をしてくるブラックアリスに私は駆けよると、その胸倉を掴む。

 

「アンタ、私に何をしたの」

「私は何もしていない。でも言ったはず。『いずれこうなる』と」

「夢の中での事なんか覚えてるわけないでしょうが!」

「それは貴女の勝手。でもこの状況は、私にも予想外ではある」

「……はあ?」


 胸倉を掴む私の手をはらうと、ブラックアリスは花園を眺める。

 この無駄にファンシーで悪趣味な場所がなんだってのよ?


「……貴女の中には、元々『黒』の素養があった。そして『黒』と均衡を保つ性質を持つ力も」

「何の話よ」


 私の質問に、ブラックアリスは黙ってその手の中に2枚のカードを出してみせる。

 赤い模様の描かれたカードと、黒い模様の描かれたカード。

 それ、は……。


「トランプ……?」

「黒と赤。如何なる理によるものか、2つの力は貴女の中で完全なる均衡を保つ。黒が強くなれば赤もまた強くなり、しかし黒を駆逐せずに共存しようとする」

「意味が分かんないわよ」

「……貴女の中から『黒』は消えず、強まり続ける。それは貴女の中の『赤』も強くなることを意味している。完全なる均衡による境界線を、貴方は歩くだろう」


 ……こいつ、答える気がないのかしら。ポエミーすぎて全然理解できないんだけど?


「……私によるのっとりを心配しているなら、それは無用と言える」

「どうしてよ」

「私は『黒』そのもの。『赤』がある限り、貴女を染め切る事は不可能」

「その赤とかってのも意味不明なんですけど?」


 ここにきて新キャラ登場ってわけ?

 私と黒い私と赤い私でヒーローユニットでも組もうっていうの?

 ……ちょっといいわね、それ。


「赤は常に貴女を守り続けている。赤い、赤い……4つの力。覚えがないとは言わせない」

「……まさか」


 そう、その能力を私は知っている。私に与えられている力。

 ライフオブハート。

 ガードオブダイヤ。

 スペードソード。

 クローバーボム。


「……でも、ちょっと待って。アンタ、スペードソードとクローバーボム……使ってなかった?」

「そう、それがもう罠だった。私は……そうなった時点でもう『整え』られていた」

「よく分からんけど、私のせいじゃないわよねソレ」

「……」


 ブラックアリスは私をじとっとした目で見つめると、小さく溜息をつく。


「境界線を歩く貴女は、私の性質をも兼ね備えている。具体的には……」

「には?」

「少し、思慮深くなる。かもしれない」


 こ、こいつ……!


「アンタねー! アンタだって所詮私のくせに何を……!?」


 突然、足元が崩れて。私は深い穴の中に落ちていく。

 落ちていく私を、ブラックアリスは手を振りながら見送っている。


「さようなら、新しい私。きっとこれもまた、貴女が境界線を歩む為に必要な儀式だった」

「だからそのポエミーなところを……!」


 叫びながら、目を覚ます。まだ真っ暗な部屋は、今が真夜中だと教えてくれる。


「……夢」


 覚えている。今度は、今度こそはしっかりと覚えている。

 ブラックアリス。黒い私。最初の夢の内容すらも私の中に蘇っている。


「むにゃー……」


 あ、リーゼロッテめ。また私のベッドに……!

 ……まあ、いいか。それより、現状把握よね。

 ステータス画面を開いて、スキルを確認する。


スキル:ライフオブハート

    ガードオブダイヤ

    クローバーボム

    ジョーカースラッシュ

    ブラックジョーカースラッシュ

    2段ジャンプ

    リターンホーム 

    トランプパワー(レベル2)

    黒の波動

    フォームチェンジ:ブラックアリス


 ……スキルが変化してる。ブラックアリスへの「変異」が「フォームチェンジ」になってる。

 どう違うかは……うん。ブラックアリスは「私」になったってことだ。

 変異するような相手ではなく、あくまで私の中の私。そういうことになったんだろう。


「うふふ……アリスってばあ……」

「どんな夢見てんのかしら」


 1度夢の中覗いてみたい気もするけど。ひとまずは……。


「起きたか」

「アルヴァ。いつから其処に居たの?」

「貴様の中で魔力の流れが変わり始めた辺りからだ。妙に安定している……何があった?」

「さあね。それより……いつから?」

「つい先程だな」


 私の意味不明にも思える問いに、アルヴァは即座に……淀みなく答える。


「そう。じゃあ、やっつけてくるわ」

「そうするといい。すでに戦闘が始まっている」


 私が連れてきた人以外は誰も入れない、この絶対安全な拠点に攻撃を仕掛けた馬鹿が居る。

 いや、今も攻撃を仕掛け続けている。まるでバカみたいな……いや、実際馬鹿なんだろうなと思える魔法攻撃の連続。


「急がないとね。私へのパーティーのお誘いに遅れて死人が出たんじゃ、やりきれないわ」


 纏うのは、私の本気の衣装。さあて……サクッとやっちゃうとしましょうか!



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― 新着の感想 ―
[良い点] ウノだったらもっと人格が分裂していたところでした
[一言] アリス殿がまた強くなられておるぞ! そしてホイホイ餌に釣られた馬鹿がフィッシュ。まだ近所に誰もいないけど深夜に大きな音を出す奴は出荷よー
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