襲撃
……そうして私がシーヴァと適当な演技をして別れてみると……なんかこう、圧みたいなものがかかってくるのを感じていた。
うーん、これって殺気ってやつ? まだ街中なんだけど……襲ってくるのかなあ。
やれるもんならやってみろと思って歩いてみても、中々襲ってこない。
んー……どうしたもんか。こっちから襲うのも違うわよね。となると……。
ちょっと考えて、廃棄街の方に足を向けてみる。
廃棄街なら衛兵も来ない(なんか私の拠点の近くにはいるけど)し、襲ってくるには最適なんじゃないだろうか。
そう思っていたら、廃棄街を少し歩き始めたその時。私がほんの一瞬前まで居た場所を、でっかい魔法弾がブチ砕いた。
「……わーお、過激ィ」
勿論牽制じゃなくて、確実に殺すつもりの一撃だ。私が避けたってだけの話。
来ると分かった瞬間、装備も呼び出してる。
「1、2、3……4人? 随分多いじゃない」
マスクとローブ姿の男が、4人。全員体格も顔もよく分からない感じだ。
武器らしい武器は……ないけど、さっきの魔法を考えるに甘く見ていい相手じゃない。
「グウウウウウ……」
「自己紹介はなしって感じ?」
ていうか、会話になるかも不明だけど……私を囲む男達からの殺気が強くなってくる。
さて……どうしたもんかなあ。殺さず取り押さえなきゃだけど。
「「グオオオオオオオ!」」
「げっ! うっそ、マジ⁉」
男たちが叫ぶと同時に、男たちの周囲に光の玉の群れが現れる。
あれまさか、全部魔法弾!? よね⁉
私に向かって飛んでくるそれらを……どうする? ガード? ダメ、下手にガードすればそのまま封殺される気がする!
「なら……こうよ!」
一方向を決めて、スペードソードを構えて突っ込む。ボムは今はなし。殺しちゃうかもだからね!
私に向かって飛んでくる魔法弾を、ダイヤアーマーの性能を信じて受けにいく。
ぐぐぐ、大丈夫! ギリギリ痛くない!
「せりゃああああああ!」
刃で斬らないように、ハエ叩きの感覚で……肩に一撃!
どーだ、これなら絶対死なないでしょ!
腕の痛みで動きも鈍……おわわわわっ⁉
「ちょ、嘘でしょ⁉ 確実に砕いた音したわよ⁉」
全く痛みを感じてないかのような風の男から飛んでくる追加の魔法弾の群れ。
その後を追うように他の男たちの魔法弾も……あー、もう! って、おわー!
私を狙ってきた男の拳が、私の側を通り過ぎる。あ、危なっ! すっごい風切る音したわよ⁉
カウンターとばかりに横腹に蹴りを入れて吹っ飛ばしてやるけど、すぐに起き上がってくる。
ぐぬー……まさか再生能力持ってるとかじゃないわよね?
「ていうか10秒たったでしょ。何処で何してんのよ、あのメガネは……!」
駆けつけるとか言ってなかったっけ? あー、もう!
それにこいつら……! 結構速い! 私も結構速さには自信あるのになあ。
避けるのは簡単だけど、縛りありで4人もいると結構面倒ね……!
一言でいうと相性が悪いわ、相性が!
「……あ、そっか」
相性が悪いなら、相性をよくしちゃえばいいんだ。
あまり使いたくはなかったけど……たぶん、使い時は此処ね。
「変異:ブラックアリス」
何度目かの魔法弾が襲ってくる中で、私は黒い私に変異する。
そうして、黒い私は。
「ダークサイクロン」
身体の周囲に発生させた黒い竜巻で、魔法弾全てを対消滅させる。
分かる。今の私には分かる。これは魔法を魔法で迎撃した、ただそれだけの話。
そして、殺さずどうにかする方法なんて……魔法であれば、いくらでもある。
特に、闇魔法であるならば。
「ナイトメア」
私は男たちの1人に接近し、その身体に触れて悪夢の魔法を流し込む。
そう、これはアルヴァが使った魔法だ。相手を眠らせ悪夢を見せる魔法。
倒れこんだ男をそのままに、私は別の男に向かって走る。
「グ、グオオオオオオオ!」
……面倒ね。一気にいくか。
「コールシャドウ」
男たちの影から闇色の男達が伸びあがって、背後から抱きしめるようにして拘束する。
叫んで暴れても、無駄。そのくらいじゃ拘束は解けない。
そうして、黒い私は全員をナイトメアで眠らせると……ふう、と息を吐く。
結局私が全部やったけど……あの男、何やってるのかしらね。
「……いるんでしょ? 其処に」
「バレましたか」
「気配を消すのが上手みたいだけど……魔力が隠れてないわよ」
今の私はそっち方面には敏感だ。だからすぐ分かる。
あの男、ずっと隠れて見てたわね?
「どういうこと? まさか貴方が黒幕ってわけじゃないわよね」
「貴方を見極めたいと思っていただけですよ」
「……」
「実に素晴らしい。人間であることが惜しいくらいですが……いえ、はたして人間といっていいのかどうか。新種の魔人ではないかと私は今疑っています」
「角なし魔人って? 誰が納得するのよ」
「フフッ」
笑ってんじゃないわよ。確かに私の成り立ちは人間かどうかっていうと怪しいけど。
かーなーり、怪しいけど。そこはひとまず置いておこう。
「……ま、いいわ。それより捕まえたわよ。これ、どうするの?」
「どうするもこうするも……」
シーヴァが腕を振るうと、男たちが真っ二つに切断される。
断末魔すらなく男たちは……確実に絶命した。
「こうします」




