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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

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こいつも普通じゃない

「……その通りです。私は冒険者として呪薬の件に気付き、調査を進めていました。ミニミが裏切り者だったのは想定外でしたが……」


 結果としてグレイはミニミの持ってくる偽情報に翻弄され、調査が上手く進まなかったらしい。

 鉤鼻の魔女の一件の後はパーティを解散してソロで調べてたとか……凄い大変そう。


「しかしどうやら、私が調べている事に勘付いたのでしょう。アリスに会う前の夜でしたでしょうか。突如襲撃され、呪薬を飲まされました」

「呪薬人間に?」

「ローブと覆面をしていたので分かりません。しかし、私より格段上の魔法でした。マジシャンどころか、上級ジョブのウィザードであったとしてもおかしくはありません」


 ふーん……とんでもなくきな臭い話になってきたわね。

 

「わざわざ酒瓶を握らせて酔っ払いに思わせるくらいです。発覚を遅れさせる意図があったのは明らかです」

「発覚が遅れたら死んじゃってたってこと?」

「あるいは、呪薬人間と化していた可能性もあります。まあ、そうならなかったという事は単純に殺すつもりで飲ませたのかもしれませんが……」


 んー? 呪薬を飲むと呪薬人間になるけど、死ぬこともある。

 てことは適性みたいなのがあるってこと?


「だとすると……もしかして、呪薬人間にならずに普通に強くなる奴もいるんじゃ」

「そういうことです」


 思わず呟いてしまった言葉に、シーヴァが満足そうに頷いてみせる。


「私達は、それが今回の一連の事件の最終目的ではないかと考えています」

「強くなることが?」

「そうです。もっと言えば呪薬によって、魔王様を超える者を作り出す事。それが成れば、成り代わる事だって不可能ではありません」

「あ、魔王って血筋とかじゃないんだ……」

「血筋を重視してはいますが革命など、どの国でも発生しうることでしょう」


 あー、そういうことね……うーん。


「でも、成り代わってどうするの? 平和じゃない」

「分かりません。ですが、考えられるのは……勇者戦争の続き、でしょうね」


 勇者戦争。勇者と魔王が争って、勇者が魔国の王都に攻め込んできた戦争だっけ。


「当時の魔王様が勇者に討たれた事を屈辱と考える者は多数います。それはたとえその後、満身創痍の勇者を八つ裂きにしたという事実をもってすら癒せぬものなのです」


 あ、八つ裂きにしてたんだ。マジ怖い。


「えーと、それは分かったけど……つまりどうしようっていうの?」

「分かりませんか?」

「分かんないわよ」


 堂々とそう返せば、シーヴァは「そうですね……」と考えるような表情になる。


「反魔王派は、人間嫌いの一派……というより過激派であるわけです」

「うん」

「つまり、人間と魔族が仲良くしているのは基本的に気に入らないはずです」

「そうね」

「そんな彼等が、高位の魔族と人間が仲睦まじくしている姿を見せつけると、どうなりますか?」


 どうって、えー? 人間が気に入らないのよね。

 で、高位の魔族と仲良くしてるってことは、それなりに良い生活をしてるってことでいいのよね。

 つまり……んー。


「……襲ってくる?」

「そういうことです。単純に人間の側を誘惑して引き剥がす可能性もありますが、これまでの行動を考えるに過激な手段に出るであろうことは想像に難くありません」

「おとり捜査したいってことね……で、私をそれにしたいと」

「分かって頂けて、大変嬉しいです」

「別に受けるとは言ってないんだけど……」


 ていうか受けたくない。受けたくないなあ……。


「……そうは言いますが、この国が混乱するのは貴女としても望みではないのでは?」

「そりゃそうだけど……」

「問題ありません。この件は私が引き継ぎます。お嬢さん、貴女の身は私がお守りしましょう」


 うう……「いらねー」とか言ったらダメなんだろうなあ。

 まあ、確かにハーヴェイが狙われてるのを放置するっていうのも人としてどうなんだって話ではあるけど。

 はあ……仕方ないかあ。こうなったら覚悟を決めるしかないかしらね?


「……私の名前は出さないのよね」

「ええ。貴女は巻き込まれた一般人。そういうことです」

「ならいいわ。じゃあ、今日からお友達ってことでいいのかしらね、シーヴァ?」



 私にシーヴァ、と呼ばれた彼はちょっと面食らったような顔をした後、ニヤリと微笑む。

 うっ、悪い笑いだわ。


「友人ではなく、恋人関係ですアリス。まあ、偽ですがね?」

「え、やだ……」

「ちょっと傷つきますね……ですが『偽』だと言ってるでしょう」

「でも噂とかされると恥ずかしいし……」

「おとり捜査の意味分かってます?」

「調子乗ったら容赦なくビンタするけどいい?」

「貴女、何処からそんな自信が湧いて出るんですか……?」

「私が美少女という純然たる事実から」


 どうだ、否定できないでしょ。私が自信満々に胸を張ると、シーヴァは疲れたように天井を向いて眼鏡の位置を直し始める。


「あの……よろしいですか、隊長」

「なんですか、グレイ」

「いえ、その……アリスと隊長には結構な身長差がありますが……」


 そういえばそうね。シーヴァって、結構身長が高い方だわ。


「並んで恋人を演じるとなると、あらぬ誤解を招く可能性もありますが……」

「そう思われたほうが有象無象がやってこなくなるので楽そうですね」


 うーん、本人が良いならいいけど。こいつも色々普通じゃないわよねー。

 まあ、ともかく。こうして私は嫌々ながら、シーヴァの作戦に協力することになってしまったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >噂とかされると恥ずかしいし うわぁぁあぁ…伝説の名台詞だ!おのれ藤崎!
[一言] アリスの容赦の無い拒絶と自画自賛に、流石のシーヴァもたじたじだw そしてロリコン扱いされる危機にも動じないのは、合理的なのか興味が全てを優先するからなのか、あるいは満更でもないのか本物なのか…
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