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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

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呪薬

「ああ、本当に面白い……」


 銀髪眼鏡はそう言うと、グレイに視線を向ける。


「グレイ。では説明を」

「いや、私帰りたいんだけど」

「許可しません。貴女の名前が表に出ない事を確約しますから、残りなさい」

「ええー……」


 めんどくさ……どうしてこうなった……。


「……お茶菓子もあげましょう。希少なやつを」

「仕方ないわね」


 王都の高級菓子とか、ちょっと興味あるわ。

 私が近くにあったソファに座るとグレイがギョッとした表情をする。

 でも銀髪眼鏡は気にせずに、棚から何かの箱とお皿を取り出して机に置く。

 ザラザラとお皿に入れられるのは……何これ。コンペイトウ?


「スターキャンディと呼ばれています。選ばれた職人にしか作れないお菓子でしてね」

「ふーん? いただきまーす」


 赤いのを1つ摘まんで食べてみる。あ、いちご味。


「結構美味しいわ」

「結構、で済んでしまうのですか……普段何を食べているのでしょうね」


 食べてもなくならないクッキーかな。言わないけど。


「王都の高級菓子店は入ったことないのよねー。人間が近づくと嫌そうな顔するし」

「ああ、陛下の意思を理解されていない連中も多いですからね。これに関しては根深いものがありますが……」

「仲悪いんだっけ、人間と」

「未だに勇者戦争を引きずっているのですよ。人間も同様ですが……貴女はそうでもなさそうですね」

「だって私はその戦争とかの当事者じゃないし」

「誰もが勇者戦争をそうして過去のものと思えれば、この状況も変わるのでしょうが……」


 言いながら、銀髪眼鏡は思い出したように「ああ」と声をあげる。


「そういえば自己紹介を忘れていましたね。私は魔導騎士団隠密部隊長、シーヴァです」

「おんみつ」

「いわゆる影の部隊ですね。そこにいるグレイも、表向きの身分は魔導騎士ですが、実際には様々な顔を使い分けています。冒険者としての顔も、その1つですね」


 一番関わったらいけない連中だあ……やっちゃったなあ……でもこれ回避不可能じゃない。

 だって初手よ初手。そっかー……隠密部隊かあ……はー……。


「あからさまに嫌そうな顔をしてますね」

「だって、関わりたくないんだもの」

「そう言わず。これは貴女の安全にも関わる話です」

「そうかしら……」

「そうです。何しろ、魔国全体の問題なのですから」


 事の始まりは、地方都市での人間誘拐事件。当初は行方不明事件として「どうでもいい」とマトモな報告すらされていなかったらしい。

 それがたまたま真面目な人の目に留まって、調査開始。どうにも誘拐っぽいということで事件発覚。それでも人間だし……ということであまり調査が進んでいなかった。

 

「……風向きが変わったのは、誘拐対象に魔女が入り始めたことです」


 複数の魔女の誘拐。それに関連し、誘拐された人間が奴隷として人間の国に流れている事が分かったのだという。

 うーん、この時点で「なんかなー」って感じだけど。要は鉤鼻関連の話よね。

 確かアレは……えーと。


「後の調査で『鉤鼻の魔女』による転生魔法を狙った事件だということが分かりましたが……転生魔法についてはご存じで?」

「しらなーい」


 嘘じゃないわよ。詳しくは聞いてないし。


「転生魔法とは、つまるところ生まれ変わる魔法です。理想の自分になる事を目的としていますが……使い方によっては他人の身体を乗っ取る事も可能な禁じられた魔法でもあります」


 そういえば鉤鼻って私の身体を乗っ取ろうとしてたのよね。


「ふーん」

「問題の転生魔法自体は魔女の『天眼』と呼ばれる独自技能によって分割封印されていたのですが……鉤鼻の魔女によって、今は転生魔法の欠片が何処かに散逸している状態です」

「散逸するとどうなるの? 危ないの?」

「場合によっては。どういう影響が出るか分からないのが更に怖いですね」

「ふーん……」

「しかし、更に問題なのは鉤鼻の魔女が主犯ではないということです」


 それは聞いたけど。そう言うわけにもいかないので黙って頷いておく。


「それが分かったのは『呪薬』が未だに出回っているからです」

「グレイもそれ言ってたけど……何なの?」

「簡単に言えば、魔力の強化薬ですね」

「ふーん?」

「飲めば、どんな者でも大きな魔力を得る事が出来る……そういう薬です」

「いいものじゃない」

「それだけで済むならね」


 どうやら呪薬がもたらすのは単純な魔力の強化だけではなく、その名の通りに呪いのような作用もあるらしい。

 

「攻撃性の強化、意志制御の困難化を初期症状として、最終的には肉体の変容を引き起こします」

「うわあ……」

「更に問題であるのは、この最終段階に到達した『呪薬人間』とでも呼ぶべきものが複数確認されているという事実です」

「逃げ出したってこと?」

「ならいいのですが……どうにも、制御されている節があります」

「出来るんだ」

「呪薬に中毒性のようなものがあるのかもしれません。だとすると、それを餌に制御することも不可能ではないでしょう」


 うーん……嫌な話だわ。そんな事して何しようってのかしら。


「私達はこれを反魔王派によるものと考え、調査を進めていました……グレイはその途中で失敗したということです」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「帰ることを許可しない」権利がこいつにあるのだろうか? 軟禁未遂罪で金的叩き込んでトンズラしようぜ☆
[良い点] 主人公の性格がめっちゃ好きです。続き楽しみにしてます
[良い点] 万能薬で全てが解決してしまうけれど、絶対やりたくない感じなのがもどかしくて面白い
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