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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

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計測と鑑定

 ショップから戻るとリーゼロッテは万能薬を1つ抱えて部屋に籠って。

 ソファでくつろいで本を読んでいた私を、真正面に居たアルヴァがじっと見つめてくる。


「……どしたの?」

「何故だ?」

「何がよ」


 突然そんな風に話を振られて私が察することができると思わないでよ?


「あのショップとかいう場所だ。何故突然あそこに行こうと思った?」

「何故って……思い出したから?」

「フン」

「何よ、不満そうね」


 正直に答えたのに、何が不満だってのかしら。私が軽く睨むと、アルヴァは呆れたような肩をすくめてくる。


「いいか、貴様は馬鹿だ」

「そうね」

「……同意する辺りが更に馬鹿だが、まあそれはいい」

「ケンカ売りたいんなら買うけど?」

「貴様は馬鹿だが……愚かではない」


 ……えーと、褒められてんのかしら。よく分かんない。

 でもなんか真面目な事を話そうとしているのは理解できた。


「そんな貴様が、出かけた後に突然『ショップ』の存在を思い出した。これは偶然ではない」

「いや、偶然でしょ」

「俺はそう思わない。この世に偶然などなく、全ては必然。貴様は本能的にショップの必要性を感じ取っていたのだと俺は考えている」

「ええー……? そういう陰謀論的なのはどうかと思う」


 大体、ショップが必要になる環境って……どう考えてもブーストしないと勝てない戦いじゃない。

 私が会ったのって、あのナジムとかっていう奴だけなんだけど?


「聞かせろ。先ほど出かけた時、貴様に何があった」

「何って……『鑑定』とかいうのを使うハーレム男に会ったくらいかしら」


 たいしたことないでしょ、と私が言えば、何故かアルヴァからの圧が強くなる。


「鑑定、だと? それはもしや言葉通りの意味ではなく魔法か何かの話か?」

「へ? そうだけど……それが何よ」

「どんな魔法だ」

「私のステータスを覗こうとしてたみたいよ。ダメだったみたいだけど」

「……そうか」

「ていうか、それがどうしたのよ。ステータスを見るのなんて、冒険者ギルドの水晶でもやるじゃないの」


 アレだって鑑定とかいうやつでしょうに、何なのかしら。


「……アレは計測水晶だ。鑑定などというモノでは断じてない」

「えーと……同じじゃないの?」

「違う。『計測』は本人の魔力から上っ面を計測するだけの魔法に過ぎん。貴様の特異性を見抜くことも、その片鱗を感じる事すら出来ん」

「人を変人みたいに……」

「ステータスとは、本人の魂に根差したものだ。他人に覗く事など出来ん。つまり……『鑑定』とか称するその魔法は『計測』をそう偽ったか、そういう魔法が本当に存在するかのどちらかということになる」


 ふーん……? そうすると、あの魔法はどっちだったのかしら。

 確か、私の名前しか見えなかったみたいなこと言ってたわよね。


「ならアルヴァ。私に『計測』かけてみてよ」

「何?」

「出来るんでしょ?」

「出来る」

「なら丁度いいじゃない。あの時と感覚が同じかどうか分かるわ」


 我ながら凄い名案だと思うのだけれど、何故かアルヴァは大きく溜息をついてしまう。

 なんでよ、かなり頭いいと思ったんだけど。


「普通は嫌がるものだが……まあ、いい。『計測』」


 アルヴァから放たれる魔力の光が私の全身を撫でるように通り過ぎていく。

 うーむ……これは……なるほどぉ。


「アルヴァの変態」

「だから言っただろうに……魔力的な身体測定だ。異性にやらせる類のものでは断じてない」

「最初に説明しときなさいよ、そういうのは」

「俺は肉体を捨てた時点でその手の欲求とは無縁だからな。あとは貴様の問題でしかない」

「むう……」


 まあ、いいけど。大体分かったわ。


「んーと……とりあえず、全然違ったわね」

「どのようにだ」

「アルヴァのは何かセクハラって感じだったけど、アイツのはなんか、こう……性犯罪者?」


 うん、それだ。凄くバチッとハマった表現な気がする。

 ……なのになんだろ、アルヴァが凄く微妙な顔してるんだけど。


「貴様はもう少し論理的に人に説明する努力をしろ」

「何よ。ちゃんと言語化したでしょ」

「感覚的過ぎて分からん。もっと何かないのか」

「ええー?」


 うーん、うーん。何か、ねえ……。


「だからさー。アルヴァのはなんか、通り過ぎると同時に私に触れてくみたいな感じだったんだけど」

「凄まじく人聞きが悪いがまあ、いい。続けろ」

「あの男のは、えーと……服の中に手を突っ込もうとしてくるような感じ? 凄くブッ飛ばしたくなるっていうか」

「……ふむ」


 なんか言語化するとますますブッ飛ばしたくなってくるわね。殴っとけばよかったかも。


「……やはり違う魔法であるように思えるな。今の貴様の説明から判断する限りでは『計測』とは違う挙動をする魔法としか判断できない」

「そうなの?」

「ああ。その魔法は恐らくだが、貴様の内部に入り込もうとしていたのだろう。これは闇魔法によくみられる傾向の挙動だ」

「ふーん」


 闇魔法ねえ。ぶっちゃけその辺も私にはよく分かんないんだけど。


「……だが、闇魔法は基本的にはロストマジックに該当するはず。そのハーレム男とやら……危険な匂いを感じる。警戒しろ」

「うん、分かった」


 闇魔法はロストマジック、ねえ。でもブラックアリスも使えたみたいだけど……ていうかアルヴァも使うわよね? うーむ、分からん。


「ねえねえ、あのさ。ロストマジックって……」

「説明してほしいのか」

「やっぱいいわ。聞いてもたぶん分かんないし」

「賢明な判断だ」


 この野郎……でも全くその通りだから何も言えないわ。

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[良い点] なんだか思ったより危ないやつと出会っていた
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