表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
境界線上のアリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/136

なんか出た

「ダークアロー!」


 数本の闇の矢がアメイヴァへと突き進み、その表面で弾けていく。

 分かる。今までは全く理解できなかった「魔法の理」とでもいうべきものが、私の中にあるのが分かる。

 知識じゃない。これはまるで、経験のような。そんなもの、私にあるはずがないのに。

 不快な音をたてながら身体を伸ばしてくる巨大アメイヴァへと、私は手の平を向けて魔法陣を展開する。


「ダークバインド!」


 飛び出た闇色の鎖が巨大アメイヴァを拘束し、けれどアメイヴァみたいな不定形生物には、どうやら意味がない。拘束されたまま身体を伸ばしてきて……私はそれをスペードソードで切り払う。


「ダークバインドは意味がない。なら使うべきなのは……」


 巨大アメイヴァの一撃を躱して、跳んで。私はそこでハッとする。

 違う、そうじゃない。私は別に魔法使いでも何でもない!

 私を追いかけてくるアメイヴァの身体をスペードソードでバラバラにしてやると、2段ジャンプで跳んで逃れ着地する。


「危ない危ない、『黒い私』に飲まれるところだったわ」


 言いながら、私は軽く剣を振るう。全く、本当に危ない。

 この変異とかいうやつ、どうやら私の内面も変化させてる。

 魔法使い寄りの私とか、どう考えてもキャラじゃない。

 

「順番を間違えるな。私は私。魔法なんか、カードの1枚に過ぎないわ」


 呟き、走る。私が「誰」か強く自覚しろ。

 私はアリス。近距離戦が得意な剣士が距離をとろうとするな。

 相手の息遣いも感じそうなその場所こそが、私の攻撃範囲。

 だからこそ、私は巨大アメイヴァの攻撃を回避しながら肉薄していく。

 よし、此処っ! 巨大アメイヴァの身体に触れ、私は叫ぶ。


「ダークブラストッ!」


 闇の魔力が巨大アメイヴァの中で溢れ、その巨大な粘液の身体が爆発四散する。

 飛び出てきたのは、溶解液の海に守られた核。

 一撃の下に、それを切り裂いて。核を失った巨大アメイヴァの溶解液が周囲へと雨のように降り注ぐ。


「うわわっ⁉ やばっ……!」


 避けきれない! ぎゃー、どろどろねばねばの集中豪雨⁉

 どばどばと降り注いだ溶解液は私も私の装備も溶かしはしない。

 ただのネバネバした液になっているそれを浴びて、私は小さく「……変異解除」と呟く。

 そうすると、どろどろのぐちゃぐちゃだった私はスッキリ綺麗な「元の私」に戻っていく。

 同時に、理解できていたはずの「魔法の理」がよく分からんものになってしまったのを理解する。

 感じるのは、軽い頭痛。頭使った後に感じるアレっぽい。

 

「ふー……疲れた」


 使ってみて分かったけど、アレは確かに「変身」じゃなくて「変異」だった。だって、どう考えても「私の中身を変えようとしてくるスキル」なんてマトモじゃない。

 こうして変異を解除した今は、ブラックアリスの時に出来ていた事……魔法は使えない。

 試しに「ダークアロー」と唱えてみても、何かが出てくる気配はない。

 というか、それ自体は大した問題じゃない。

 本当に問題なのは私が「魔法に頼る私」になっていたということだ。

 巨大アメイヴァとの戦いで、コアを露出させるために私がとった手段は「ダークブラスト」という魔法だった。

 自分自身が近接戦を得意とする剣士であると自覚して尚、魔法という手段を「黒い私」は選択した。これは非常に由々しき事態だと思う。


「たぶん、黒い私になると性格っていうか判断基準が変わる……のかしら。ゾッとする話ねー」


 正直、あまり使いたくはない。私じゃない私に判断をゆだねるとか、有り得ない。

 いや、正確には私なんだろうけど。その辺考えると私には理解できない領域に突入しそうな気がする。


「うーん……総合的に見ると『要らない』って判断になるような」


 まだブラックジョーカースラッシュは使ってないけど。でもどうせクセのある技なんでしょ?

 常用できない危険カードが増えても、邪魔なだけなのよねえ。

 もっと変異もコスプレ的な技だったら、気分変えに使えたのに。

 いや、待てよ。コスプレ……? 何か思い出しそうな気がするわね。

 なんだったかしら。んー?


「人間……? こんなところに?」


 む? あー、さっきのダークブラストがちょっと派手だったのかしら。

 思わず振り返って、私は口をヒクつかせる。

 

「な、何これ。まさかこの散らばってるのってアメイヴァの溶解液⁉」

「おいおい、どんだけの量だよ……あのお嬢ちゃんがやったのか?」


 正面に立っているイケメンぽい男の背後で、仲間らしき2人が何やらガヤガヤと言っている。

 うーん、イケメンは魔人。仲間2人は猫の獣魔人と……魚っぽいのは魚人かあ。やけにマッシブだわ。

 ざわめく2人に、正面のイケメンがフッとキザな笑みを浮かべてみせる。うーん、なんかイラッとしたわ。


「落ち着け。ひ弱な人間に出来るはずがないだろう。誰かが倒した後に来たのだろう……その証拠に見ろ、全く溶解液を被っていない」

「おお、確かに!」

「流石ねナジム!」

「このくらい、たいしたことじゃあないさ。推理ですらない」


 オーウ……なんだコイツら。何で人の目の前で寸劇始めてんのよ。

 すごくブッ飛ばしたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ゲームのメタで言うと物理に強くて魔法に弱い敵が出るステージの前振りだったりするわけですが
[一言] たしかに戦闘力ってことなら今まで通りで十分間に合ってるものなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ