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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
異界の国のアリス

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タイラント2

「アルヴァ!」

「アリス。俺を倒した貴様が、なんてザマだ」


 宙に浮かんで私を見下ろしていたアルヴァの……うわ、なんてムカつく顔してるんだろ。

 ともかく、アルヴァがそこに居た。


「アルヴァ……⁉ まさか『ブラックメイガス』アルヴァか⁉」

「そういう貴様はなんだ。天眼を埋め込んだタイラントなんぞに知己は居ないが」

「アルヴァ! そいつ鉤鼻!」

「ほう……?」


 私が叫ぶと、アルヴァは面白そうなものを見る目をタイラントに向ける。


「分霊と、ホムンクルスの合わせ技といったところか。くくく……性能優先としても、なんてザマだ。醜いにも程がある」

「なんじゃと……⁉」

「アリスを見ろ。貴様が目指したかったのは、こういうモノなんだろう?」


 なによ、急に褒めるじゃない。そんな当然のこと言っても喜ばないわよ?

 でもドヤ顔はしとく。どやぁ。


「おのれ、そうかアルヴァ! その娘は貴様が……!」

「いいや、違うとも。そして鉤鼻、これは貴様にどうにか出来る類の女ではない……そう」


 言って、アルヴァは最高に相手を馬鹿にした笑みを向ける。


「貴様程度では特に……な」

「アルヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 極太ビームを、アルヴァは腕で薙ぎ払う。むう、そういえば忘れてたけど、アイツ結構な魔法使いなのよね。


「さて、アリス。それで? 俺の助けが必要とでも?」

「これこれ。リーゼロッテをどっかに連れてってよ」

「ああ、なるほどな。いいだろう」


 そう言って降りてきたアルヴァはリーゼロッテを受け取ると、その姿を消してしまう。


『さあ、これで良い。貴様の選ぶ結末を見せてみろ』

『ていうか今、転移した?』

『あとで教えてやる』


 いいけどさ。ケチ。

 ま、これで懸念が消えたのは確かよね!


「おお、おのれおのれえ! わしの天眼が! 転生が!」

「うっさいわね。人のものばっか欲しがってんじゃないわよ」

「お主に何が分かる! そんな恵まれ過ぎた身体を持つお主に何が!」

「分かんないわよ。私は、何処までいっても私だもの」

「その傲慢! 転生で醜いオウガにされても言えるか試してやろう!」


 襲ってくるのは無数の魔法の乱打。でも、甘い。

 この程度の弾幕じゃ、私には当てられない!

 避けて、避けて。私はタイラントに向かって走る。


「何故じゃ! 何故避けられる! 天眼を使った無詠唱魔法の同時行使! だというのに、何故!」

「決まってるじゃない、そんなの!」


 そう、この程度じゃ足りない。私を殺すにも、世界を壊すにも足りない。

 強いけど、とても強いけど。ただそれだけだ。


「この程度なら……私は簡単に抗える」


 跳ぶ。そして空中を蹴り、私はもう1度跳ぶ。


「なっ……お主今……!」

「ゲージは満タン。放つなら……今!」

「ぬう⁉」


 私の振るった剣が、ピンポイント結界に弾かれる。

 そう、これはブラフ。展開された結界を足場にして、私はさらなる2段ジャンプをする。

 高く、高く。目指すは、ただ一点。タイラントが暴れても問題ない程の高い天井の、その付近まで私は跳んだ。


「おお、おおおおおおお⁉」


 豪火球が放たれる。防御はしない。そんな暇はない。

 ガードオブダイヤは展開されず、何処かでハートが削れるような音が響いた気がした。

 でも、死んでない。充分すぎるほどに動ける私は、落下しながらスペードソードを構える。


「小娘ええええええ!」

「アリスよ! あの世に行っても覚えときなさい!」


 放たれる魔法の嵐を突っ切って。ハートを削りながら、私は落下する。

 目指すは、その頭。


「ジョオオカアアアアアアアアアアアアアア!」


 スペードソードが、輝く。部屋全体を照らすような、眩い輝き。

 世界を救う一撃が、此処にある。だからこそ、私は絶対の自信と共に叫ぶ。


「スラアアアアアアアアアアアアアアアッシュ‼」


 描かれた剣の軌跡。結界を切り裂き、その天眼ごとタイラントの頭を深々と切り裂いた。

 そして私は、そのまま地上へと降り立つ。怪我なんてするはずもない。私は、そういう風に出来ている。

「あ、ああああああああああああ! 馬鹿な! わしが、このわしが……!」


 タイラントが、剣を振り上げた気配がする。もう魔法は使えないんだろう。

 でも、きっとあのタイラントとかいう巨人は凄いタフで。だから、まだ死ねていないんだと思う。

 なら、きっと……私がすべきはこういうことだ。


「貴方の犠牲になった、たくさんの人たちの為に……この一撃を捧げるわ」


 手の中にあるのは、ボムマテリアル。振り返ることなんてしない。必要すらない。


「わしは、死なぬうううううううう!」

「いいえ、死ぬわ」


 これは、そういう攻撃。逃げられはしない。


「クローバーボム」


 輝きが、広がる。私の敵を跡形もなく消滅させる光が、この空間の隅々を照らしその先まで広がっていく。


「ひ、ひいいえええええええ! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な! こんな、こんな絶対的な魔力……! こんなもの、わしは知らな……!」


 何かが溶けるように消滅していく音が、聞こえる。

 光が広がって、そして消えていく。

 そうして……そこには、もうタイラントの姿はもう欠片すらも残ってはいなかったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おぉアルヴァが仕事して名声の名残も見せつけて帰っていった。 かっこよかった
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