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【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
異界の国のアリス

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再会

「でも、そうだとして分からないことが1つあるんだけど」

「何かしら」

「その魔女狩りをやっているのは誰? 人間?」

「……分かりませんわ。だからこそ、グレイたちに調べさせていたのですが……」


 今のところ、めぼしい情報はない。そう呟いてリーゼロッテは溜息をついた。

 ……まあ、そうか。分かったならとっくに動いてるわよね。


「ただ、魔法薬を使っているのは分かっています。それも、かなり高性能のものですわ」

「その辺の事情、よく分かんないんだけど」

「魔法薬の性能は材料の品質と薬師の腕に依存しますわ。とはいえ、薬草の品質にも限度があります。攫われかけた人間から検出した分から確認できる限りでは……相当の腕を持つ薬師が関わってますわね」

「ふーん……」


 そんな腕があるなら、誘拐になんか手を貸さなくても儲けられるだろうに。

 いや、その方が儲けられると判断したとか……あるいは……。


「その薬師が主犯、とか」

「……!」


 私の言葉に、リーゼロッテがハッとしたような顔をする。そんなに意外な意見だったかな?


「確かに、その可能性は充分にありますわね」

「考えてなかったの?」

「言ったでしょう? かなり高性能な魔法薬だと。売れば相当な高値になる魔法薬を潤沢に使う……天眼目的に金に糸目をつけない者と、金さえあればなんでも売る薬師が組んだと考えたほうが自然でしたのよ」

 

 そっか、そういう考え方もあるのか。ていうか、そっちの方が普通なのかな?


「けど、そうなると面倒な話になりますわよ……」

「そうなの?」

「そうですわ。薬師が主犯なら、文字通り使う魔法薬は薬師次第。どんな手を使ってくるか、絞り切れませんわ」

「ふーん」

「気楽ですわね」

「だって分かんないものを怖がっても仕方ないし」


 どんな手を使ってくるか分からないなんて、当然のことだ。

 初見殺しにひるんでいては、戦う事なんて出来ない。

 そういうの相手に出来る事なんて結局「何があっても大丈夫なようにする」だけなんだから。


「……ま、そうですわね」

『要は場当たり的対応ということだな』

『アルヴァ、うっさい』


 他に何があるってのよ。言ってみなさいよコラ。


「ふう、中々参考になりましたわ」

「それはどうも」

「で、貴方はこの情報を持ってどうするつもりですの?」

「どうするって……」


 私にどうにか出来るものじゃなさそうだしね。

 探偵じゃないんだから、推理で相手を追いかけるとか出来ないし。


「ま、ハーヴェイに報告かな」


 ハーヴェイは頭良さそうだし部下もたくさんいるし、何とかしてくれるでしょ。

 そんな事を考えながら私が言えば、リーゼロッテは「ハーヴェイ……?」と訝しげな表情になった後、唐突に「はあ⁉」と大声をあげる。


「ハ、ハハハ……ハーヴェイ⁉ それってまさか、魔王様じゃありませんわよね⁉」

「いや、その魔王のハーヴェイだけど」

「どういうことですの⁉」

「どういうことって……」


 家を建てたら寄ってきた。そうとしか説明しようがない。

 ていうか、こっちの詳しい事情なんとか説明できないしなあ。


「ま、色々あるんだよ。あとはハーヴェイに言えばどうにかしてくれると思うよ?」

「まあ、それはそうでしょうけど……」


 リーゼロッテが言いかけたその瞬間。


―そいつは困るねえ―


 部屋中に響くようなそんな声と共に、部屋全体が大きく振動した。


「な、何⁉」

「嘘でしょう、私の結界が破られましたわよ⁉」

『警戒しろ! これは……』


 身体が引っ張られるような感覚。視界が歪み、何かに呑み込まれていくのを理解できた。

 この感覚は、知っている。これは……転移だ。

 その感覚が終わった後……私とリーゼロッテは、何処かに移動していた。

 まるで牢屋の中みたい、っていうか牢屋だね此処。鉄格子の嵌った、なんかじめじめした空間だ。

 

『アルヴァ、此処って……』


 念話で呼びかけようとして……けど、すぐに違和感に気付く。

 何か繋がってる感覚がない。というか……アルヴァの変化してる腕輪がない。

 まさか、アルヴァだけ置いて行かれた?

 

「そんな……!」


 周囲を見回していたリーゼロッテは、信じられないとでも言いたげな声をあげる。


「あり得ませんわ! 此処はまさか!」

「知ってるの?」

「知ってるも何も……いえ、やっぱりあり得ませんわ! だって、もう壊されているはず!」


 うーむ、全然分からん。

 私が首を傾げていると、何やら遠くからコツンコツンという足音が聞こえてくる。

 そうしてやってきたそいつを見て、私は「あっ」と声をあげる。

 それは、よく見知った顔だったからだ。


「ミニミ!」

「久しぶりだな、アリス」


 そう言って、ニッと笑うミニミ。付き合いは短かったけど、私の知っているミニミそのもの。

 だからこそ、それは強烈な違和感だった。

 なんで、彼が此処に居るの?


「アリス……『これ』と知合いですの?」

「グレイのパーティメンバーだけど、会ってないの?」

「グレイの⁉ あのバカ、こんなのを引き入れて!」

「へ?」


 何を言っているのか分からない私の目の前で、ミニミはクックッと笑う。


「嫌われたものだ」

「ミニミ。どうして此処に居るの? グレイたちは?」

「ああ、グレイたちか。来ないよ。此処は知らないからな」


 当然のように、ミニミは言う。


「苦労したぞ。疑われないようにこの場所を捜索範囲から外していくのはな」

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