表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ企画進行中】召喚世界のアリス  作者: 天野ハザマ
異界の国のアリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/136

向かうべき場所

「……一応聞くけど、家ってお安いの?」

「現代での価値は知らん。場所によるんじゃないか?」


 そんな役に立たないアドバイスを聞いた私は、拠点の機能で久々にジョゴダの町に戻ってきていた。

 ほんと久々よね……何日ぶりだったかしら?

 相変わらず色んな人が行き交っているけど、お店をやっているのは魔族ばっかり。

 こうしてみると、力関係がよく分かるって感じだわ。


「不動産屋とかはないんだったわよね」

「……貴様の言っていた土地物件の仲介専門業か。そんなものは恐らくだが存在しないだろう」

「そっか、残念」

「売り出している家であれば、札がかかっているはずだ。それを探せ」


 こんな会話をしているけど、アルヴァは今は私の腕輪になっている。

 見た目は金細工に赤い宝石のついた、ちょっと派手な感じのやつ。

 あんまり私の趣味じゃないけど、アルヴァ曰く私の服のデザインに寄せたらしい。

 それでも1人で会話してる変な奴と思われそうだけど、意外と誰も気にしてない。

 ……人間に興味がないだけかもしれないわね。


「えーと……あ、早速あったわね。金貨40枚で月払い……?」


 中央通りにあった建物にかかった札を見ると、そんな事が書いてある。

 店舗利用可、その他応相談……高くないかしら。


「まあ、地方の町とはいえ町の中心近くならこんなものだろうな」

「地方でこれなら、王都とかどうなってるのよ……」

「ふむ……ああ、そうか。いっそ王都の方に行くのもいいかもしれないな」

「なんでよ。そんなお金ないわよ?」


 何言ってるんだコイツという気持ちを込めてアルヴァに言うと、アルヴァはフンと笑う。


「逆だ。王都だからこそ存在するものもある」

「……それって?」

「貴様は知らんだろうが、魔族の歴史は長い。しかし諍いも多く、王都が滅びるような事件も歴史上は何度かあった」

「うん」

「つまり……廃棄街と呼ばれるような区画が存在する」


 え……それって、まさか。


「そこに住めっていうの? 廃棄街とかいうとカッコよさげだけど、スラムじゃないの?」

「そんな良さげなものではない。文字通りに廃墟だ」

「もっとダメじゃないの」

「だが、タダだ。しかも何をやっても文句は言われないし、申請すれば住所として登録も出来る」

「……そうなの?」

「勿論、まともな行政サービスなど期待できんがな。だが、貴様には逆に良かろう?」

「それは、まあ」


 そうかもしれないけど。でも、それって正直どうなのかしら。


「そもそもの話、王都の連中程他人に興味のない連中もいない。貴様のような異物を隠すにはもってこいだ」

「異物って」

 

 否定はしないけど……うーん。


「幸いにも、E級冒険者としての身分証もある。問題もない」

「そういうものかしら」

「そういうものだ」


 王都、ねえ。そう聞くと悪くない気はしてきたけど。


「でも、私……場所分からないわよ?」

「遷都しているのでなければ俺が場所を知っている」

「まあ、それなら」


 どうせ、拠点にリターンホームで戻るんだし……そういうことなら、王都の廃棄街とかいうのに住むのもいいのかもしれないわよね。

 そんな場所なら、あまり探り入れてくる人もいないだろうし。


「じゃあ、早速行きましょうか」

「今からか?」

「うん。私の場合、アレがあるから荷物なんていらないもの」

「……ああ、まあ……そうだな」


 リターンホームの事を知っているアルヴァは渋い声を出すけど、実際リターンホームがあればテント要らずの荷物要らずよね。拠点に全部放り込めばいいし、帰ればいいんだもの。


「それなら、北門から出ろ。王都はその方角だ」

「分かったわ」


 頷いて北門を目指し、私は歩く。獣人にゴブリン、オウガ、人間……色々いるけど、人間は肩身が狭そうというか……。


「ちょっと、そこのお嬢ちゃん」

「え?」


 突然声をかけられて振り向くと、そこには人の良さそうな表情を浮かべた人間の男の姿。

 なんとなく高級そうな服を着てるけど……町の人?


「あまり見たことがない顔だけど、旅の人かい? ご両親は何処だい?」

「あー……ご心配ありがとうございます。大丈夫です」

「そうかい? もし1人なら、気をつけなきゃいけない。人間の女の子が1人で暮らすには、色々と危ないからね」


 うーん……ただの良い人?

 まあ、あまり心配されるような強さじゃないって自覚はあるんだけど。

 私がこの場をどう去ろうかと考えていると、男の人は私に笑いかけてくる。


「私は王都で店をやっていてね。もし仕事に困ったなら、来るといい。同じ人間の苦境を放ってはおけないしね」

「はあ……」

「銀の乙女亭、という店だ。ナグルの名前を出せば話が通るはずだから」


 そう言うと男の人……ナグルは去っていく。


「……どう思う、アルヴァ?」

「どうもこうも。怪しさの塊だろう」

「そう思うわよねえ」


 銀の乙女亭だっけ……覚えておこうっと。

 勿論、関わらない為だけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ