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アルヴァ4

「なんでついてきたの……?」


 ゴロゴロと転がる赤い石を捕まえて拾い上げると、ジタバタと手の中で赤い石が暴れ出す。


「離せ! この素晴らしい空間を隅々まで堪能せねば!」

「いいから言いなさい。ていうか、その身体で動けたのを黙ってたわね?」

「聞けば答えたぞ」

「……この場で真っ二つにしようかしら」

「なんて女だ、こんなか弱い宝石に……」


 どこがよ……こいつ、絶対まだ色々何か隠してるわよね?


「フン、まあいい。ついてきた理由だと? 決まっている。貴様の身体を乗っ取るのはやめたが、それはそれとして貴様の魔力は欲しい」

「つまり簡単に言うと?」

「貴様が自分から俺に魔力を差し出すように仕向けたいと思う」

「うん、割る」

「何故だ!」

「何故も何もあるもんですか! やっぱり何も変わってないじゃないの、この有害石!」


 私が振ったスペードソードを、アルヴァが転がりながら避ける。

 チッ、素早い!


「いいから待て! 何も俺もタダで魔力を寄越せとは言わん! 取引だ!」

「……取引ィ?」

「そ、そうだ! 貴様に俺の知識を授けてやってもいい。言っておくが、俺は凄いぞ。かつて魔王だって俺の知識を頼ったものだからな」


 言われて、私はスペードソードを振る腕を止める。

 知識……ねえ。確かに今の私には必要なものだけど。

 でもコレ、信用していいのかしら?


「……その知識とやらを偏らせて私を都合よく動かそうとしてたり?」

「いや、それはない」


 私の疑いの言葉に、アルヴァは即座にそう答えてくる。


「これは契約だ。メイガスたる俺は、契約に関して偽りを述べる事はない」

「そんな事言われても信用できないし……」

「フン、心配は要らん。魔法契約は違反する事は不可能だ。それとも、そんな事も知らんのか」

「知らないわ」


 知ってるわけないじゃない。

 この世界の魔法のシステムだって良く分からないのに。


「……魔法契約とは、平たく言えば『絶対に契約内容を守らせる』魔法だ。今回の場合は、俺がお前に」

「だったら簡単じゃない」

「何?」

「貴方は……アルヴァは、私の味方になる。これで全部オッケーでしょ?」

「ほう……」


 この世界の事もよく知らない状況で、私に必要なのは確実に味方と呼べる相手であるのは確かだ。

 魔法契約とかいうものが絶対に契約内容を守らせるっていうのなら、私の味方になるような契約であれば何の問題もない。


「あとは、その魔法契約とかって勝手に破棄できたりしないわよね?」

「出来ん。互いの同意か、契約者を大幅に超える魔力による解呪が必要になる」

「ふーん……」


 それなら、とりあえずは問題ないかもしれない。


「では、魔法契約を結ぶということで問題ないな?」

「貴方は私の味方になる、っていう内容よね?」

「フン……見ていろ」


 アルヴァの宝石そのものな身体から魔力……と思わしき何かが流れ出て、空中に光る文字が描かれる。

 内容は……こう。


・契約者アルヴァは、契約者アリスの味方となる。

・契約者アリスは、契約者アルヴァの求めに応じ魔力を提供する。


「ちょっと」

「なんだ。問題なかろう」

「大問題よ。どの程度魔力を提供するのか書いてないじゃない」

「チッ、気付きやがったか」

「何処が味方よ……」

「契約するまでは味方ではない」


 やっぱり割ってやろうかと思いつつも、作り直された内容はこう。


・契約者アルヴァは、契約者アリスの味方となる。

・契約者アリスは、任意の量の魔力を契約者アルヴァに提供する。

・提供する魔力の量、並びにタイミングは両者で随時協議する。

・尚、魔力の提供によって契約者アリスの状況が悪化しないようにする義務を、契約者アルヴァは負う。


「……まあ、これなら」

「何も知らん小娘と思えば……チッ、まあいい。コントラクト!」


 そんな声と共に発動した契約の魔法は、私の中から何かを吸いだしながら輝き……私とアルヴァの中に入っていく。


「これ、は……!」

「きゃっ……!?」


―ジョブフラグメント:アルヴァを手に入れました!―

―新たな方向性を獲得しました!―


「今のって……」

「おお、おおお……契約の魔力だけでこれ程の……!?」


 驚いたように呟いたアルヴァの宝石の身体が輝いて、中から闇のような何かが染み出てくる。

 それはやがて、宝石となる前のアルヴァの身体となって宝石を呑み込んでいく。

 そして……そこに現れたのは、私と戦った時のアルヴァの姿。


「何それ……どういうこと?」

「どうもこうも。貴様のイメージする『味方』がこの姿の俺ということだ」

「え?」

「魔法契約が二分されて互いの身体に入ったのは見たな」

「ええ」

「貴様がとんでもない魔力を魔法契約に差し出したせいで、貴様に最大限有利な解釈で魔法契約が結ばれてしまった。そしてその結果、俺は少ない魔力をフル稼働させてこのアストラル体を作らざるを得なくなっている」

「ごめん、全然分からないわ」


 まずそのアストなんとか、から分からない。

 なんだか私に有利なのは分かったけど。


「つまり、このままだと俺は消滅しかねん。早く魔力を寄越せ。余裕があるのは見て分かる」

「えーっと……どうやって?」

「イメージしろ。すでに俺と貴様の間に魔力の経路が出来てしまっている。貴様のせいでな」


 よく分からない怒られ方をしながら、それでも「魔力を流す」というイメージをして……何とか私は、魔力の譲渡とかいうものをやってみる。


「よし、よし。いいぞ……上質な魔力だ」


 ……うん。なんだか成功したっぽい。

 目の前にいるアルヴァの気配が、目に見えて強くなっていく。


「契約自体はアレな結果になってしまったが、概ね満足だ。この調子であれば、俺が全盛期を超えるのも難しくは無かろう……さあ、言ってみろ。俺を味方にして何がしたい。世界か? 世界が欲しいのか」

「別にそんなものはいらないけど、そうね……」


 軽く……本当に軽くだけど、私はここまでの状況をアルヴァに説明してみる。

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