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帰還

 私が早く馬車に戻れと促すと、第二王子が楽しそうに笑う。何が楽しいのかは分かんないけど。


「アリス。その男のこと、どう思う」

「どうとも思わないわよ。モンスターだもの、こいつ」

「そうだな。しかしな、そこで思考停止するのはどうだろうな?」

「何言ってんのよ」


 思考停止も何も、モンスターについて考えると頭にノイズが走るでしょうが。

 それにこいつらが誰かって話であれば、分かるはずもないし。たとえ王族全体を狙ってたとしても、そもそも私が王族事情を知らないもの。


「こいつが王族の敵であったとして、どうして狙われてるのか私には判断できないでしょうが」

「いや、そうでもない」

「どういう意味?」

「こいつは先程、ミーファを連れていくと言った」

「そうね?」

「しかし、だ。何故ミーファにこだわる?」


 ……そういえばそうね。王族を人質にする……とかだったら、第二王子でもいいわけだし。わざわざミーファである必要はない。違うわね、これは、もしかして。


「……ミーファでなければいけない理由が、ある……?」

「そう考えるのが自然だ。だが、俺の知る限りミーファに狙われるような理由は……」


 言いかけて、第二王子は言葉を止める。


「いや、やめておこう」

「なんでよ。今明らかに何か思いついた風だったじゃないの」

「予想は出来る。しかし確信がない……魔王の協力を仰ぎたい」

「はあ……?」

『受けてやれ』


 む、頭の中にアルヴァの声が。この念話っての、何度受けても慣れないわね。


『俺も多少興味が湧いた。こうまでして狙われるというのであれば、間違いなく何かがあるぞ。それも比較的大きな問題を含む何かがな』

「むー……」


 つまり、それを解決しない限りはミーファは狙われ続けるってわけよね。

 だとするとまあ……放置するわけにもいかないかしらね。いつまでも私の家で匿ってればいいって問題でもないし。


「まあ、そうね。なら帰ったら紹介するから」

「帰ったら……か」

「何よ」

「貴様の生きる場所は魔族の国なのだと思ってな」

「……ま、そうね」


 人間の国も今回ちょっとだけ過ごしてはみたけど……まあ、魔族の国のほうが大分マシよね。

 まあ、魔族の国も色々あるけど……うん。さておこう。

 とにかく、再び出発した馬車はまた数日かけて魔族の国へと戻っていく。

 そうして辿り着いてみると、なんか凄い光景がそこにあった。


「……何あれ」

「楽隊だな」


 そう、なんか綺麗で統一された服を着た楽団が太鼓を鳴らしてラッパを吹いて、楽しげな音楽を奏でているのが見える。

 そして、その真ん中……高い台の上に居るのは、間違いなくハーヴェイね、アレ。何してんの。馬鹿なの? 馬鹿だから高いところ好きなの? なんでカッコつけてんの?

 楽隊はやがてラストに向けてテンポアップしていき……ジャーン、という締めの音と共にハーヴェイが見下ろしてくる。


「お帰りアリス! そしてその他の連中と、なんか増えてる有象無象ども! どうやら問題を増やして帰ってきたようだなあ!?」

「うーわ……」

「しかし余は予想していたぞ!? どうせお前はすこぶる馬鹿でなんだかんだとおせっかい焼きの人情家だから、引っかき回しつつ問題を増やして帰ってくるのではないかとな!」


 こいつ……そんなに間違ってないのがムカつくわね。そのすこぶる馬鹿を派遣したのはアンタたちでしょうがよ。


「しかしまあ、それが狙いではあった!」


 ハーヴェイは台から飛ぶと、そのまま私の居る馬車の近くに舞い降りてきてドアを開ける。


「今回の件は今まで以上の厄介ごとの気配があり、放っておけば受け身が続くのは目に見えていた。だからまあ……お前に期待していた」

「最初っからそう説明すればよかったんじゃないの?」

「そうは言うがお前、作戦聞いてその通りに動けるタイプか?」

「……出来るけど嫌」

「だろう? なら自由意志でやってもらったほうがいい」


 言いながらハーヴェイは第二王子の乗っている馬車に視線を向ける。


「それで? アレは?」

「人間の国の第二王子よ」


 私たちがそんなことを言っている間にも第二王子がやってきて、ハーヴェイに頭を下げる。


「お初にお目にかかる、魔王陛下。俺はカルレイ王国第二王子、イアン・ベルム・カルレイだ。此度は貴方にお目にかかるべく参上した」

「ふーん、そうか。余は魔王ハーヴェイ。それで? イアン王子は余に何用だったんだ?」

「……今回の妹を巡る問題についての相談を」

「ふむ。中々実りある話になりそうだ。城に招待しよう」

「感謝します」


 何か決まったみたいだけど……男2人で分かった顔されても、私には一切分かんないのよね……。


「アリス。ひとまず家に帰るといい。イアン王子は余がもてなそう」

「あ、うん。じゃあ帰っていいのかしら?」

「うむ。進展があればまた報告しよう」


 そんな言葉を最後に私はハーヴェイたちと別れたわけだけど。家に帰ってきた私を待っていたのは……凄い勢いで私目指して走ってくる、リーゼロッテだった。

 え、なんなの? 何その態勢……タックルでもしようっての? 来なさいよ、やれるとでも思ってんの!?

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― 新着の感想 ―
40年くらい昔の道徳の時間に見ていたドラマ?の歌が、、、 「あいつを初めて知った時~嫌な感じと思ったけれど話の分かるヤツだった。喧嘩もしたさ仲間だもんな。仲間。仲間。仲間」 第2王子に重なった。
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