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私が使えるモノ

「正直ね、貴方がモンスターになろうと何しようと構わないのよ」

「へえ?」

「でも、ミーファを狙うなら話は別。ぶっ飛ばすわよ?」

「ハハッ」


 男は何が面白いのか、ニヤニヤと本当に楽しそうな笑みを浮かべ始める。いやもう、そんな面白いことなんか何も言ってないでしょ。何なの?


「アレか。友情ってやつか! いいねえ、そういうの大好きだぜ!」

「友情……」


 友情、かしら? どうかな……友情……まあ、うん……友達よね。なんかずっと流れで一緒にいる感じだし、懐いてくれてるから情はあるけど……友情……うん……。


「そうよ! 友情ってやつよ!」

「なんか迷ってなかったか?」

「迷ってないわよ!」

「お、おう」


 男は頷くと、軽く咳払いする。何よ、何の文句があるってのよ。


「まあ、いい。それならお前をぶっ潰してお姫様を連れていくだけだ」

「出来ると思う?」

「防げると思うか?」


 男の拳の連打が幾つもの魔力の塊を放って。ガードする私の展開する透明の盾……ガードオブダイヤの守りの上からとんでもない衝撃を与えてくる。


「赤の光!」

「ハッハー! なんっだこりゃ!」


 あー、もう! 効いてない! やっぱりあそこまでいくと浄化とかそういうレベルじゃないってことよね!

 男の放つ魔力の塊は、正直ヤバい。ガードオブダイヤで防げるけど、それをやってると私が動けない。というか、大前提として早過ぎる。守るだけじゃ勝てないのは、よく知ってる。

 ならどうする? クローバーボム? 第2王子とかが消えないとは断言できないから無し。

 ああ、なんだろう。ワクワクする。黒になると冷静になるみたいに、赤になると好戦的になるみたい。理屈とかじゃなくて勘……本能的な何かが、私にそれを選ばせる。そう、私は高く跳ぶ。跳んで……男へと迫る。


「馬鹿が! 跳んでどうする! もう避けられねえぞ!」


 跳ぶ私へと、魔力の塊が大量に飛んでくる。そうよね、普通ならこれで詰み。でも、私はもう1度、空中で跳べる。


「空を、蹴った……!?」


 2段ジャンプ。私は空を蹴って、更に跳んで。


「ブラックジョーカースラッシュ!」


 スペードソードを掲げて、ブラックジョーカースラッシュを発動させる。

 そう、コールシャドウのような技はともかく、黒の波動とブラックジョーカースラッシュは「私」自身のスキルとして登録されていた。

 今まで試したこともなかったけど……理屈の上では、私もこれを使える。

 だから、男を黒い20の斬撃が襲う。

 何もないというのに、突如そこに出現した斬撃の群れは男を斬り裂いて。

 天から降る私が、巨大な黒い刃を掲げる。


「させるか、よおおお!」

「うっそでしょ……!?」


 こいつ、ブラックジョーカースラッシュを真正面から受けとめて……!? マズい、ブラックジョーカースラッシュは「20の従なる斬撃と1の主なる斬撃」。つまり、メインダメージソースはこの一撃なのに!


「お、らああああああ!」


 男の輝く拳が黒い刃を弾き返す。よく見ると拳が光ってる……何あれ、分かんないけどアレが今の無茶苦茶な防御の種ね……!


「今のはビビったぜ……! だが面白え! 生きてるって感じがしやがる!」

「バトルマニアね! 大っ嫌いよ!」

「ハハハハハ! ひでえな!」


 近距離での輝く拳の乱打をガードオブダイヤで的確に防いでいく。一見すると私が追い込まれてる。でも、私には……「赤い私」にフォームチェンジしている私には、ある。黒のとき同様に、赤になってるときにしか使えない技が。だから、背後に跳んで距離をとって。


「逃がすと思うかよ!」

「ファイア」

「ぐああああ!?」


 指をパチンと鳴らすと、男の足元から真っ赤な炎の柱が立ち昇る。これもいわゆる浄化の炎。避けられやすそうだけど、不意打ちには最適。こうして、一瞬動きが止まる程度には。

 瞬間、踏み込んでスペードソードを思いっきり振るっていく。一撃、二撃、三撃、四撃、五撃、六撃……そうして私は、再び「放てる」という感覚を得る。そう、ゲージはまた溜まっている。でも、今度はレッドじゃない。


「ジョーカースラッシュ!」

「またそれか!」


 残念、違うわ。振り上げた私の剣を、男は輝く拳で防ごうとして。その拳が弾かれ、深々と男を切り裂く。


「……何故だ。ちょっと違う程度で、何故こんなに」

「なんでも基本が一番ってことよ」


 まあ、たぶん同じパワーを一撃に注ぐか幾つかに分けるかみたいな話なんでしょうけど。相性の問題でもあるわよね。


「でも、誇っていいわよ。たぶん、今まで戦った中で2番目くらいに強かった」


 一番はラスボス。アイツは許さん。頼まれても二度と戦わないわよ。


「そうかい。そりゃ光栄だ」


 言いながら、男は倒れて。瞬間、割れるような歓声が聞こえ始めてビクッとする。


「凄い! なんという強さ!」

「あの怪物を倒すなんて……やはり聖女だ!」

「聖女様ああああああ!」


 また聖女コールが始まってる……違うんだけどなあ。でもまあ、いいか。訂正するのも面倒だし。


「やるな。聖女と呼ぶには少々お転婆が過ぎる気もするが……確かに美しいと思ったぞ」

「いいから馬車に戻ってなさいよ。出てくんじゃないわよ」


 生き残りが居たらどうすんのよ、この馬鹿王子。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バトルマニアね! 大っ嫌いよ!(満面の笑顔が目に浮かぶw
[良い点] おお、コミカライズですか、良いですね!
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