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2人目の男

 馬車を飛び出ると、ローブの男たちが行く手に立ち塞がっているのが見える。

 護衛の騎士たちも剣を抜いてるけど、ローブの男たちは気にした様子もない。

 顔にはマスクをしていて、やっぱり表情は分からない。


「グウウウウウ……」

「貴様等、敵対する気か!?」


 油断なく剣を向ける騎士たちに、ローブの男たちはゆらゆらと揺れながら目に見えるほどに濃い何かを放出させている。何あれ……殺気……じゃないわよね?


「魔力だな。随分と濃い魔力だが……フン、こういう使い方をするとは素人ではないな。玄人というわけでもないが」

「……何か意味あるやつなの? あれ」

「空気中の魔力を汚染して敵の魔法は使いにくく、自分の魔法を使いやすくすることが出来る。まあ、何処までの効果があるかは使い手次第だが」


 魔力を放出させている。この場所全体がローブの男たちの魔力で埋め尽くされていくかのように、周囲の空気が色づき歪んでいく。うーん、なんかヤな感じ。


「……よく分かんないけど、邪魔した方がいいのよね」

「そうだな。しかしまあ……」

「何よ」

「いや、いい。ミーファの身柄だけは守ってやる」


 なんで含みをもたせんのよ。まあ、いいけど。スペードソードを取り出して、スタスタとローブの男たちへと向かおうとして。ふと、ゾクリとした何かを感じた。

 ほぼ直感的に横へ飛ぶと、空中から地面に向かって槍のようなものが凄い勢いで突き刺さる。


「ぐわっ!?」

「がっ!」


 違う、槍じゃない。棘? 杭? とにかく鋭くて長いものが歪んだ空気から生成されて次々と地面に突き刺さっていく。騎士たちがそれに刺されていくけど……ああ、もう!


「わわっ!? ちょ、よっ、はあっ!」


 もうとにかく避けることを前提に跳んだり転がったりするけど……拙いわね、このままじゃ死人が出る!


「うおおっ⁉」


 あ、第2王子の馬車が……よし、生きてるわね。転がり出てきた。

 でもどうする!? ボム使えばあの襲撃者たちも死ぬ。ブラックは魔法系だから、アルヴァの言葉を信用するならこの場で上手く出来るか分からない。なら……いや、でも。あいつも魔法系……んーでも、いや……よし!


「賭けるしかないわね……フォームチェンジ:レッドアリス!」


 変わる。私の姿が変わっていく。

 私の金の髪が、青い髪に。

 私の青の目が、金の目に。

 私の青い服が、赤い服に。

 けれど、私は私のままで。

 レッドアリス。あの赤いヤツそっくりの容姿に、私は変わって。ビックリするくらいに気分が高揚するのを感じていた。


「……あはっ」


 そんな笑い声が自然と漏れる。私を襲う棘の群れを、私は踊るような動きで回避して。姿勢を低く、真横から突き出した棘の下を潜ってローブの男たちへと襲い掛かる。


「呪薬人間。でも、戦い方は全然違う」


 地面近くから湧き出て突き出す棘。私は前宙でもするかのように跳んで避ける。空中で回転して、そのまま着地。乙女として許される華麗な動きだったと我ながら自賛できる。

 剣を手元で軽く回して、刃ではなく剣の腹で思いっきり殴りつけていく。


「ゲアッ……」

「ゴッ……」


 呪薬人間たちの態勢が崩れて。それでも今度は四方八方から棘が襲ってくる。でも、大丈夫。


「赤の光」


 私を中心に放たれた赤い光がこの場を満たす魔力を掃って。棘も砂か何かのようにザラリと崩れて消えていく。


「ウ、ウガアアアアア!?」

「ギ、アアアアア!」


 呪薬人間たちもその場から逃げようとして飛び退いていく。

 そう、今なら分かる。「赤の光」は癒しの力。いわゆるクレリック的なアレよね。

 こうして放つ分には効果は低いけど、この場を覆う魔力をどうにかするには充分!


「逃がさないわよ!」


 そのまま距離を詰めて直接赤の光を叩き込んでやろうとすると、地面が盛り上がって何かが飛び出してくる。


「はあ!? ゴ、ゴリラ!?」

「ハアッハッハー!」


 ドゴン、と。私が避けた場所を男の蹴りが思いっきり砕く。いやいや、地面をそんな瓦割りか何かみたいに砕くって……顔は他の呪薬人間とは違う仮面で隠してるみたいだけど、明らかに普通じゃない!


「よく避けたな。だが……当たればそれで終わりだ」

「当たればの話でしょ。つーか、アンタ……」


 何処の誰なのか。理解しようとすると頭にノイズが走る。ああ、そうか。やっぱりこいつも。


「極まった呪薬人間……まさか自分でモンスターになるような馬鹿が複数いるとは思わなかったわよ」

「お? 他の奴に会ったことがあるのか? いや、だがまあ……うん、余計なことはしゃべるなって言われてるしな!」

「ちょ……!」


 男が正拳突きをするだけで魔力の塊が風圧と共に飛んでくる。スペードソードから展開したガードオブダイヤで受け止めるけど……強っ……これマトモに受けたらハートが削れるわね!?


「なあなあ、お姫様が居るんだろ? 渡してくれねえか? そうすりゃ」

「お断りよ!」

「いや最後まで言わせろよ」

「嫌よ」


 狙いはやっぱりミーファなのね。政治的な話以外にミーファに何かあるってこと?

 だとすると、その辺をどうにかしないといけなさそうだけど……まずはこの状況をどうにかしないといけないわね……!

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