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オウガ仮面

「えーと……12時の鐘が鳴るっていうでしょ? なのに時計が鳴ったのよ。ゴーンって」

「何を言ってるんだ貴様は」

「いやほら、12時の鐘っていう前振りの後に時計が鳴ったら変でしょ?」

「訳の分からん理解を求めるな。俺に夢占いでもさせる気か」

「……それもそうね」


 おかしいな、こんな話をするつもりじゃなかったんだけど。何か、もっと重要な。

 思い出せない。何か、もっと……うーん、なんだったのかしら。

 悩んでる私をじっと見ていたアルヴァが「なるほどな」と探偵みたいなことを言う。


「え? 何? 今ので分かったの?」

「貴様の中の『赤』とやらだろう。ブラックアリスとやらのことを忘れたのか?」

「……そういえばあのときも夢のこと忘れてたんだっけ。いやでも、夢なんて元々覚えてないものだし……このタイミングでそんなこと、あるかしら」

「そうならそうで構わん。だがこの際『あった』と仮定して話を進める」

「うん、それで?」

「さっさとその力をモノにしろ。それで前回もどうにかなったのだろう?」


 んー、まあ……そうなんだけど。アレって「赤」に守られたからみたいな話があったような。

 だとすると、今回は「黒」が守ってくれるってこと? あのブラックアリスが? まさかねえ。

 でもそうじゃないと私が「赤」に染まり切るってことよね。うーん、分かんないぞ。ていうか、何よりも……なんだけど。


「なんかこう、私の意思とは無関係なところで話が進んでるのがムカッとするんだけど」

「貴様のような不思議生物には似合いの状況だと思うが」

「不思議生物はアンタでしょうがよ」

「アストラルはキチンと説明がつくモノだ。で? そんなことより、レッドアリス……でいいな。それを倒す自信はあるのか」

「分かんないわよ。何も覚えてないんだから」


 正直いたかどうかも分かんないし。そんなのと何があったかなんて分かるはずもないわ。

 もしかすると勝ったかもしれないし、そもそも戦ってはいないのかもしれないし。まあ、負けてはいないんだろうけど。それは私が「私」であることから確かよね。


「……って、ちょっと待って。なんで『倒してない』と断言できるの?」


 私が思わずスペードソードを掴むと、アルヴァはフンと鼻を鳴らす。


「貴様の魔力の流れが変わっていない。前回貴様が力をモノにしたときは明らかに変わっていた」

「……アレはアレで倒してから色々あったんだけど」

「ならばその色々は起こっていない。理解したか」

「まあ、一応?」

「そうか。では次の問題だ」

「何よ」


 次って……これ以上何の問題があるってのよ。今度は暗殺者でも来たとか?


「先程、部屋の外から様子を窺っていた奴がいたぞ。帰っていったようだがな」

「ええー……? 入ってこないってことは暗殺者の類じゃないわよね?」

「さてな」

「やっぱり明日の朝と言わず今日出るべきだったかしら」


 夜に出るのもなんか襲撃受けそうだったからそうしたけど……うーん、失敗かしらね?

 でも結局、襲撃は受けてた気がするわね。ならどっちもどっちかしら?

 その辺りは今は……分からないけど。でも1つ、言えることがある。

 なんとなく立ち上がって覗いた、窓の外。そこに見える影1つ。


「アルヴァ。どうやら犯人は、ここでどうしても私を殺したいみたいよ」


 ローブを着て男か女も分からないし……被ってるのは何あれ。オウガの仮面?

 そいつが腕を振り上げて生み出してるのは……巨大な炎の槍。この部屋に当てれば、丸ごと灰に出来そうな……そんな大きさ。


「ええい、もう! アルヴァ! 色々任せたわよ!」


 窓を蹴り破る勢いで開けて、私は飛ぶ。いや、飛べないから跳んでいるんだけれども。

 いつもの私に装備を一瞬で換えて、私は投げつけられた炎の槍へと身を投げる。

 自殺じゃない。だって、私は。


「ガアアアアアアアアアアアアアア!」


 投擲された炎の槍。私に命中して。防ぐわけでもなく、避けるわけでもなく。私はそれを真正面から受けて、響く爆音、爆炎。その爆炎の中から、飛び出していく。

 無傷? 違う。ハートが削れた。でも、見た目が無傷な私にオウガ仮面は再度何かをしようとして。


「必殺……! キイイイイイイック!」

「グガアッ⁉」


 高所からの飛び降りるようなキックがオウガ仮面を吹っ飛ばす。往年のヒーローキックの作法よ!

 転がっていくオウガ仮面に私は思いっきり指を突き付けてやる。


「人の部屋になんてもんぶち込もうとしてくれてんのよ! この常識知らず!」

「グッ、ガ……グウウ……」

「そんな仮面被ったって魔族と間違えたりなんか……いや、待てよ? なんか覚えがあるわね……」

「ガアアアアアアアアア!」


 戦術も何もなく突撃してきたオウガ仮面に首を掴まれて、反射的に腹に膝を入れて、私の首を掴む力が緩んだところに渾身の蹴りを入れて吹っ飛ばす。

 それでも、オウガ仮面は起き上がる。ああ、やっぱこれ、アレよね。


「呪薬人間、か。こっちにも似たようなことする馬鹿はいるのね。あ、元々こっちが本場なんだっけ?」


 確かに面倒よ。でもね、私にはすでに対応手段はあるのよ。


「フォームチェンジ:ブラックアリス」


 そうして、私はブラックアリスの姿に……。


【該当スキルは現在使用不能です】


 え、なんで……?

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― 新着の感想 ―
[一言] 黒の力は赤を抑え込むので手一杯?
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