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どく・ドク・毒・ポイズン

「なっ……!」

「アリスさま⁉」

「ほう、貴様に仕掛けてきたか」


 三者三葉の反応がある中、私は私にだけ見える「ハート」を見る。

 ライフオブハート。私を守護しているっていうハートの力。私の命を10個のハートに分けて守る、そんな防御機能。直接攻撃でも毒でも、全部ハートへのダメージに変わる。

 そして今削れたハートは……丁度ハート半個分。何の毒かまでは分からないけど、人体に有害なものってことよね。


「おい、すぐに……!」

「動くな」


 騎士に命令しかけた辺境伯に……ううん、部屋全体にアルヴァの声が魔力と共に響き渡る。私を除く全員がゾクリとするような、そんな攻撃的な圧を含む声。

 でも、私は何も感じない。ミーファでも顔を青くしてるのに。なんでかしら。私を味方だと思っているから? それとも、私以外は味方だと思っていないから?

 分からない。分からないけど……アルヴァは今、別に怒ってはいない。だって、笑っているから。


「まさかアリスのほうに毒を盛るとはな。その想定が無かったわけではないが……想像以上に稚拙だ」

「ア、アルヴァ殿……!? これは一体何を……!」

「捜査だ、辺境伯殿。さて……」


 アルヴァが手を動かすだけで私の飲んでいたジュースのグラスがふわりと浮かんで、光の珠のようなものに包まれていく。何をしてるのかはサッパリ分からないんだけど。


「ほう、ほう。これは……ククッ、クハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 笑う。見事なくらいの三段笑いでアルヴァが哂う。私、ああいう笑い方リアルで出来る人とかあんまり知らないなあ……。


「呪薬! よりにもよって呪薬だと⁉ まさか懲りていなかったとは驚きだ! だがアリスにこれを使おうとは! 実はモンスターだという筋書きでも書いていたか⁉」

「なんのことだ……!? 毒なのだろう!? 早く解毒剤を……! 医官を呼ばねば……!」

「いいや、貴様は何もするな容疑者殿。その解毒剤とやらに何が仕込まれているか分かったものではない」


 呪薬……? 呪薬ってあれでしょ、モンスターになるやつ。うげえ、そんなの飲んでたの私。吐いたほうがいいのかしら?


「心配するなアリス。貴様の守りの力が毒として防御したのであれば問題はない。気になるなら万能薬でも飲んでおけ」

「それもそうね」


 アイテムウインドウから万能薬を出して飲むと、辺境伯がなんか驚いた顔をしてるのが見える。


「ば、万能薬……? エリクサー、なのか……?」


 なんかリーゼロッテみたいな反応してる……別にいいけど。ていうか、犯人は誰なのかしらね。


「で、アルヴァ。結局犯人は誰なの?」

「さてな。確かなのは、この城に信頼できる人間はいない、というくらいか……?」

「まあ、そうね。よりにもよって呪薬とはねえ」


 一応、辺境伯をじっと見て……理解しようとしてみる。呪薬でモンスターになってるなら、思考にノイズが走るはずだから。

 ……うん、おじさんね。特にノイズも走らないし、だからって辺境伯のことを理解できたわけでもないけど、ひとまずモンスターにはなってないみたい。


「まあ、とりあえずここで出されるものには手を付けない……ってことでいいんじゃない?」

「フン、何の解決にもなっていないが……まあ、いいだろう」


 アルヴァが私の言葉で納得するはずもないから、まあたぶん同じ判別方法やったんでしょうね。

 

「そういうことだ、辺境伯殿。俺たちは貴様等を信用できん。犯人探しについては……まあ、勝手にやってくれ。だが、この呪薬については此方で処分させてもらう」

「待て、それは証拠品だぞ……!」

「フン、くだらんことを言うな。こんなものを俺が残すと思うなよ」


 アルヴァが指を鳴らせばグラスごと呪薬入りのジュースがボシュッと音をたてて消えてしまう。


「なんということを……! 証拠なくしては犯人を見つけても……」

「呪薬は存在自体が社会を毒するものだ。辺境伯殿が犯人ではないとして、解析結果などをこの世に残す気は、俺にはない」


 たぶんシーヴァは解析結果とか持ってるけど、それはいいのかしらね? まあ、黙っとこ。人類社会限定の話かもしれないし。


「アリス、ミーファ。行くぞ」

「そーね」

「は、はい……!」


 食事の場から出ていく私を辺境伯がなんか睨んでた気がしたけど……別に私は悪くないと思うんだけど。

 まあ、ひとまず部屋に戻ると、私はふうと息を吐く。うーん、分かってたけど面倒な状況よね。


「さて、どうしようかしら。呪薬なんて持ってる奴がこの城に居るとなると、あんまり長居したくもないわね」

「それは同感だ。こんな場所をさっさと出て人類の国の王都に行くというのも手だが」


 まあ、それでいいのかもしれないけど。でも、1つ疑問があるのよね。


「……ミーファの誘拐を命令した犯人って、王都にいると思ってたんだけど。もしかしてこれ、誰かをぶっ飛ばして終わる話じゃなくない?」

「究極的には何もかもぶっ飛ばせば終わるが……そうするか? 俺は別に構わんぞ」

「やらないけど。これ、どうやって解決すんの……? マジで」


 うわははは、俺を倒せば全部終わるぞ! みたいなの出てきてくれないかしら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 図らずも、アリスが呪薬を飲んでも平気なことが証明されたなぁ [一言] 分かりやすい悪の組織というのは大事よね 結末がうやむやにならなくてすむ
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