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辺境伯の城

「では姫様。ひとまずですが、城へご案内いたします。王都からもすぐに知らせが来るはずです。それまでの間、ごゆるりとお過ごしください」

「辺境伯の居城に、ですか?」

「はい。姫様をその辺りの宿に、というわけにはいきませぬ故……」


 まあ、自分の国のお姫様だもんね。それについては私も納得なんだけど……それ以外の問題もどうにも大きそうなのよね。


「魔族だ……」

「魔族がどうしてこんなところに……」

「あの子が姫様だって?」

「本物なのか……? 魔族が化けてるんじゃ……」


 うーん、不穏。何処かの宿に泊まりでもしたら焼き討ちとかされそうな感じね。ていうか、いくらなんでも仲が悪過ぎって気がするんだけど……どういうことなのかしらね。私の知る限りじゃ、そこまで仲が悪くなるようなものはないはずなんだけど……。


「では、参りましょう。先導し馬車は兵士たちが護衛します」


 そんな辺境伯の言葉を受けて、私たちは町の中央にある辺境伯の城に向かっていく。

 ……なんだけど。馬車の外から聞こえてくるのもなんだか嫌な感じのヒソヒソ声。


「魔族の国に姫様が……?」

「魔族が何かやったってことだよな」

「許せん……国は何をやってるんだ……?」


 不穏が過ぎるし……これって過去の歴史がどうこう以上の理由がありそうなんだけど、どうなのかしらね……?


「あの、アリス様……」

「んー? 何?」

「本当に申し訳ありません、我が国の国民も……普段は善良なんです。ただ、その……魔族は恐ろしいものという教育があるものですから……」

「教育ねえ……まあ、私も歴史とかは魔族側の言うものしか知らないけども」


 勇者が攻め込んできて王都がダメになったとかいう話は聞いたけども、まあ魔族の側からの話であるのは事実よね。


「人類側の歴史では、魔族は気まぐれに他種族を殺し、世界征服を企んでいるとされています。モンスターもその尖兵だとも……だから、常に警戒しているんです」

「ふーん。少なくともモンスターは違うと思うけども」

「それについては……私は何とも言い難いのですが」

「まあ、そうよね」


 モンスターは魔族の冒険者が仕事として狩ってるわよ、なんて言ったって「だから何?」って話ではあるしね。呪薬で魔人がモンスターに変わったこともあったけど……そもそもモンスターが何かについては分からないままだし。

 ただ、モンスターが誤解の原因なら、そこを解消すればどうにかなる気もするけども……。

 あー、やめやめ。私がそんなもん悩んでどうすんのよ。ただの一般人だっての。


「アリス様……」

「うん」

「私もアリス様のお家で過ごして、魔族も怖い人ばかりではないことを知っております。こういったところから始めていけば、相互理解の道もあると……そう思うんです」

「……そうね。私はそういうのはあんまり分かんないけど……少しずつでも仲良くなれるといいわね」

「はい!」


 嬉しそうに微笑むミーファに、私も微笑み返す。まあ、いい子よねミーファは。他の王族なんて知らないけど、同じ教育を受けてるんなら同じ感じ……と考えるのはまあ、マズいんでしょうね。今回の知らせを受けてどんな王族が来るか知らないけど、話が分かるのが来ればいいなあ……なんて考えていると、馬車はゴトゴトと橋を通ってお城っぽいところへと入っていく。

 魔王城よりは小さいけど、立派な感じのお城。


「到着いたしました」

「はーい」


 先程と同じ感じで降りると、兵士らしき人がこちらをじっと見ているのが分かる。


「辺境伯閣下より、皆様をお部屋に案内するように仰せつかっております」

「私とアリス様は同じ部屋ですよね?」

「はい。最大限希望に沿うようにと命令を受けております」


 ……とまあ、そんなわけでお城の中の部屋に案内されたんだけども。なんていうか、豪華は豪華なんだけど……それだけかなって感じのする部屋だった。いや、というか……これは……間違いなくアレね。


「なんだか……アリス様のお家に慣れたせいか、物足りなく感じてしまいますね……」

「それよね。よくない傾向……いや、私は別にいいか……自分の家だし……」


 そう、家具の豪華さでいえば此方が圧倒的に勝ちなんだけど、品質では私の家の勝ちっていうか。まあ、どれだけ適当に使っても汚れも劣化もしない家具って時点で色々おかしいわよね。でもズボラな自覚のある私は凄い助かってるんだけども。


「フン、貴様の家の諸々は全てがおかしいことをようやく自覚したか?」

「レディの部屋に普通に入ってくるんじゃないわよ」


 空間移動してきたアルヴァに抗議すれば、アルヴァは部屋をゆっくりと見回して……やがてミーファに気付いたかのように驚いた表情を浮かべてみせる。


「ああ、そうだな。すまんなミーファ。貴様はレディだったな」

「ちょっと。私がレディじゃないみたいじゃない」

「貴様がレディ……? ちょっと何を言ってるのか分からんな……」

「レディじゃなきゃなんだってのよ」

「ファイターだな……」


 ……ちょっと否定できないのが悔しいわね。でも許さん。

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