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人間の国へ

 翌日。シーヴァの手配した馬車で私とアルヴァは人間の国……カルレイ王国に向かっていた。

 人間の国へはそれなりにかかるらしくて、馬車で1週間くらいの旅になる、らしい。

 ガタゴトと揺れる馬車はさっきから振動が凄いけど、全部道が存在しないせいではあるのよね。

 すでに3日目になるこの旅に……私は早くも飽きていた。寸前までアルヴァに任せて戻ってたいなあ……そういうわけにもいかないけど。

 

「しっかし……道が整備されてるわけでもないし、馬車は凄いガタガタ揺れるし。快適とは程遠いわよね」


 御者をやっているアルヴァに私がそう愚痴れば、アルヴァはハッと馬鹿にしたような笑みを浮かべてくる。


「当然だろう。勇者が攻め込んでくるかもしれない道程を整備する必要が何処にある」

「まあ、そうなのかもだけど。まさか人も住まない荒地だとは思わないじゃない」


 快適じゃなくても町なり村なりはあると思ったんだけど……なんか、そういうのも一切ないらしい。それも勇者のせいってことなのかしらね?


「町を作れば勇者対策をせねばならんし、町の物資は勇者を潤すかもしれん。他の諸々についても同様だ。軍事施設以外はほぼ無いぞ」

「あー、やっぱり勇者のせいなんだ。軍事施設があるのは勇者迎撃用?」

「その意味がないとは言わんが、基本的には勇者以外の人類を監視するためだな」


 そう、今のところ人類と魔族はなんとなく小康状態……仲良くしてるわけでもなければ敵対しているわけでもない、らしい。まあ人間の国からあの赤毛みたいなのが来てウロウロしてるんだから、その辺の空気感はなんとなく私にも理解できるけども。


「勇者というものは簡単に追跡可能だ。力が強く、やることが派手で……有体に言えば、物凄く目立つ」

「なるほどねえ」

「そういう意味では貴様も勇者の可能性はあったわけだが」

「冗談やめてよ。そういう面倒なのは嫌いよ」

「まあ、勇者が別にいることが分かっているのでその可能性はないわけだが」

「そーね」


 その勇者とたぶん面識あるけども。まあ、向こうも私のことなんて覚えてないでしょ。私も顔忘れたし。しかしまあ、なんで今勇者が召喚されてるのかって疑問はあるのよね。どうでもいいけども。


「ところでさー」

「なんだ?」

「もしかして、意図的にモンスターを放置してたりする?」

「そういうことはあるだろうな。だから人を住まわせていないとも言える」


 やっぱりね。こっちに向かってくるバッファローみたいなモンスターの群れ。あんな狂暴そうな連中、放置する理由がないもの。


「ちょっとやっつけてくるわ」

「ああ」


 御者台から二段ジャンプで一気に群れへと近づくと、スペードソードを思いきり叩き込む。


「ブゴッ!?」

「悪いとはちっとも思わないし、邪魔なのよね! どいてくれる!?」


 横薙ぎに振るったスペードソードがその度にバッファローを切り裂き絶命させていく。慌てて方向転換しようとするバッファローだけど……その隙がもう致命的。回転するようにスペードソードを振り回して、私の周りのバッファローをまとめて切り裂く。


「ブオオオオオオオ!」


 そんな不利な状況でも、バッファローたちは一切退く気配がない。私への殺意に満ちたその行動は理解できないし、理解しようとすれば思考にノイズが奔る。

 モンスターとは分かり合えないように出来ている。その事実を改めて再認識しながら、バッファローたちを全滅させる。


「終わったようだな」

「そうね。ま、このくらいならなんてことないわ」

「だろうな」


 ということは、勇者を止めることも出来ないってわけだけど。まあ、嫌がらせとか足止めくらいの役に立てばいいかな程度の話なのかしらね?


「ほら、さっさと乗れ。時間は有限だ」


 ゴトゴト、ゴトゴトと動き始める馬車。なんだか立派で豪勢で、お姫様でも乗ってそうな馬車だけれども。実のところお姫様……ミーファは乗ってない。コレは単純に「この馬車でミーファを連れてきましたよ」っていう言い訳のためのもの。


「ワープ慣れしてると、こういう手間が凄く不便に感じるわ……」

「アレとて万能ではないだろう。行ったことがない場所にはこうして行かねばならんのだからな」

「そーね」


 そもそも行ったこともない場所に行けるんだったら直接人間の王様のところに行ってミーファを預ければいい話……いや、そういう話じゃなかったんだっけ。ミーファを攫った奴が王城の中にいるかもしれないんだから。


「面倒な話よねえ。普通王城って一番安全な場所でしょうに、そうじゃないっていうんだから」

「人類はいつでもそんな感じだろう。何を今更」

「私、こっちの世界の人間じゃないもん」

「心配するな、そもそも貴様は世界基準でいえば人類と呼んでいいかは限りなく怪しい」

「人類じゃなきゃなんだってのよ」


 私のその言葉に、アルヴァは……からかうでもなく、凄く真面目な表情になる。

 ……ちょっと、何よその反応。不安になるじゃない。


「……あるいは、だが。超人とは、貴様のようなもの……であるのかもしれんな」

「そんな胡乱なものになった覚えはないわよ」

「だろうな」


 超人計画。どの事件にもそういうのが付きまとう。ほんっともう……そんなに「そういうの」を作りたがるの、何なのかしらね?

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