表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/136

その理由は

「見つかりたかった?」


 疑問符を浮かべるシーヴァだけど……まあ、当然よね。私でも凄くアホな想像だと思うし。でもまあ、頭の良い理由が思い浮かばないなら「そう」だと思うのよね。


「そうよ。誘拐された人たちが一般人だけだったとして、それでもあんな場所でやるリスクは大きかったはず」


 そう、あの倉庫は王都廃棄街……普通の人は近づかない場所だ。でも、それでも王都なんだから、リスクはゼロじゃないし最近は私が住み着いてるせいでちょっと整備されて兵士もいる。そんな場所まで人間を誘拐してきて、大仰な錬金道具を持ち込んで魔眼石に変えている。

 ……ただ、そこまでなら有り得るかもしれない話なのよね。鉤鼻の魔女が主導した魔女誘拐事件みたいに、王都に居る人間誘拐事件が起こったところで「有り得る」んだから。

 けれど、1つ見逃せない事実がある。私はそれにがっつり関わってる。


「違和感は1つ。人間の国の王女様……ミーファを攫ってきたことよ」

「そうです。それが私も引っかかっています。そこまでして作ろうとした魔眼石があんな代物だった……リスクとリターンが完全に見合っていません」

「あるじゃない、リターン」

「は?」

「リターンがある?」

「どういう意味だ」


 頭の良い男が3人とも私に困惑した視線を向けてくるけど……そうよね、これってそのくらい頭の悪い結論よね。でもたぶん、これしかないと思うんだよなあ。


「魔族の国に攫われた王女様、邪悪な実験、現場は魔王のお膝元、無辜の民の犠牲、召喚された勇者。はい、答えは?」

「……勇者を送り込む理由作りだと? いや、まさか。犯人も人間なのですよ? そんな無茶な理屈が通るわけが」

「通すつもりだったんじゃない? だって、国内世論がどうにかなって勇者が納得すれば来るでしょ?」

「それ、は」

「おお勇者よ。魔王に攫われた姫を助けてほしい。おお勇者様、姫は魔王の悪しき実験によりお隠れになってしまわれました。まあ、流石に人間の王様は犯人じゃないと思うけど……お姫様が誘拐されたなら、たぶん犯人の思惑通りに動くでしょ?」


 そう、勇者を動かせるだろう王様と犯人は全く関係が無くてもいい。状況が揃いさえすれば動かざるを得なくなるんだから。


「あとはお姫様の口を封じることが出来れば、現場で犯人が状況を好き放題に整え吹き込むことが出来る。さあ、「邪悪な魔族像」を吹き込まれた勇者がこっちの説得に耳を貸す確率はどのくらい?」

「……理屈は通りますね。しかし、そんな稚拙な手段……言いがかりに等しいはずですが」

「人間の国から送り込まれた奴は見たわよ。違法奴隷とか呪薬のことを探ってたっぽいけど……そういう純粋に正義感強そうな連中を送り込んで準備してた可能性もあるんじゃない? この前会ったの王都廃棄街だったし、見つけたのが私じゃなかったら……」

「なるほどな。そこで余のせいに出来れば良しといったところだな」

「事実は関係ない。疑うに足る理由があればいい、ということですか……なんと愚かしい」


 まあ、問題はならどうするかって話なんだけどね。ミーファは未だ私の家にいるわけだし? 「魔族の国に誘拐された我が姫を」ルートはまだ潰れてないのよね。


「しかしそうなれば、人間の姫の扱いが重要になるな」

「ええ、その通りです。1つ間違えば勇者が攻め込んでくるでしょう。これまでの歴史を考えるに、アレは非常に厄介です。毎回、王都にとんでもない被害が出た記録が残っています」

「何代か前は地形が変わったせいで遷都したんだったか? 本当に厄介な連中だ」


 ……それって人間の勇者の話よね。異世界転移者とんでもないっていうかろくでもないっていうか。この世界に愛着無いからそんなこと出来るのかしらね? けどまあ、それよりも。


「よく人類滅んでないわね、そんなんで」

「滅ぼそうとしたことはあるらしいぞ? そのときはなんか戦闘準備万端の勇者が3人くらい召喚されて当代の魔王が殺されてな。なんとか勇者もどうにかしたらしいが、それ以来人類にはあまり関わらんようにしようという風潮が出来ている」

「うーわ……」


 ピンチになるとそれをどうにか出来るヒーロー登場ってわけね。まあ、それなら仕方ない感じだけれども。


「まあ、話は簡単だろう」


 そこで今まで黙っていたアルヴァがそんなことを言う。簡単って……何思いついたのかしら?


「今回の話はどうにも簡単だ。人間の姫が陰謀に巻き込まれ魔族の国に来てしまった。さて、そんな姫を助け出した奴は……中身が最終兵器じみた化け物だとしても、見た目はどうだ?」

「おいこら」


 なんでハーヴェイもシーヴァも驚いたみたいな顔で私を見てんのよ。


「そうだな……中身はともかく見た目は普人の少女に見える。見た目も悪くない……好かれやすく、信頼を得やすいタイプだろう」

「ええ、その通りですね。中身がどれだけアレであっても見た目は美少女です。となると……」

「ちょっと。私が美少女なのはその通りだけど中身がアレとかどういう意味よ」

「そのままの意味だろう。よかったな、美少女だと思ってもらえていたらしいぞ」

「私はどう見ても美少女でしょうが!」

「そういうところだぞ」


 どういうところよ。私は中身も美少女でしょうが。まったくもう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今、全員の気持ちが一つになった! 「中身がアレ」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ