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魔王に連絡を取りたい

「コンタクト、ねえ……ちょっと待ってて?」


 ドアを開けて家の外に転移すると、近くに設置された兵士の詰め所に視線を向ける。

 ハーヴェイが魔王の権力的なものを振るって設置したやつだけど……立哨していた兵士が、私を見つけると駆け寄ってくる。


「アリスさん、こんにちは。どうされましたか?」

「んー。ハーヴェイに連絡取りたいんだけど、出来る?」

「えっ」


 途端に困惑する兵士だけど……まあ、そうよね。いくら魔王が直接指示出して作った兵士の詰め所だからって、魔王に簡単に連絡を取れるはずがない。となると……その辺にいるかもしれないクソメガネの部下を呼び出すしかないかしらね。出てこないと魔王城に直接行くぞって歌ったら出てこないかしら。


「一応ですが、出来ます」

「あ、出来るの?」

「はい。今から書簡を持った使者を出しますので……アリスさんからの要望ということも添えますので、ある程度優先的に……」


 ある程度、かあ。まあ、ハーヴェイは魔王様だもんね。アレ以降結局顔も出さないし、私のことは忘れてるかもよね。となると……うん、呼ぶしかないわね。


「ごめん、ちょっと叫ぶけど気にしないでね?」

「はあ。え、叫ぶ?」

「お待ちください」


 物凄く嫌そうな顔をして角から出てきたのは如何にも神官っぽい恰好をした獣人。今回はどういう設定でこの辺ウロウロしてたのか、ちょっと気になるけども。


「我々の存在をドアノッカー代わりに口にしようとするのはおやめください。隠密とは存在も秘匿されているからこそ隠密なのです」

「でもやらなきゃ出てこないでしょ?」

「まあ、それは……いえ、何か方法を考えるのでご遠慮ください」

「うん。それはそうと、この前の石の話をしたいんだけど」


 私がそう言うと、隠密は更に嫌そうな顔になる。なんでよ、別に壊したりしないわよ。ていうか私は巻き込まれた側なんですけど?


「話をしたい、とはどのような」

「アルヴァに見せようと思って。保管場所に連れてってくれると助かるわ」

「ブラックメイガス!? は!? あ、いえ。ええ? アリス殿、そんな危険人物と関わりが!?」

「うん。まあまあ信用できる奴よ」


 何よ、その疑り深い目は。アイツの言うこと信用できねえなあって目してるわね……何なのよ。全く、アルヴァってばよっぽど信用ないのね。


「えっと……一応上司に伺いをたてますので、しばらくお待ちいただければ……アリス殿、何処を見て?」


 何処っていうか。こっちに向かって飛んできている人かなあ?


「フハハハハハハ! 余が来たぞ!」

「ま、魔王様!?」

「ええ!? 魔王様!?」


 隠密と兵士が慌てたようにその場に膝をついて頭を下げるのをハーヴェイが「うむ」と頷いて見ている。まあ、一番上の雇い主だし王様だもんね……私はやらないけど。


「やっほー、ハーヴェイ。なんか久々の気がするわね」

「なんだ寂しかったのか? しかし余は魔王ゆえにな。こう見えて中々に多忙なのだ」

「来ないなーとは思ってたけど。やっぱり最近の事件関連?」

「その通りだ。しかもお前がまた関わっているというのではないか」

「好きで関わってるわけじゃ……いや、今回は自分から関わったわね……」

「普人の姫を助けたのだったか? その判断は褒めてやろう」

「助けた子がお姫様ってだけだけどね」


 お姫様だから助けたわけじゃない。結果的にお姫様だったってだけ。めんどくさいのは嫌いだけど、だからって倫理観捨てようとも思わないし。そしたらめんどくさい事件がついてきただけっていうか。


「それでいい。余はお前のそういうところは結構気に入っている」

「そうなの?」

「そうだとも。以前も言っただろう? 力は意味なく与えられるものではなく、役目無く生きる者は居ない。力ある者は、その力によって、いずれ何かを為さねばならない定めにある……とな」


 まあ、なんかそんな感じのこと言ってた覚えはあるけど。その理屈だと災難が次から次に降りかかってきそうで嫌なんだけど。ていうか人生の目標を見つけて突き進め的なノリも嫌いだし。


「別に為したくないんだけど」

「魔女誘拐事件と魔薬事件を解決しておいて、よく言うではないか」

「アレは成り行きよ」

「それこそ定めだ。で? 隠密が出てきているということは、何かを頼もうとしていたのだろう? 今余に直接話せ。聞いてやろう」


 あー、まあそうよね。今此処に居るんだから直接話せばいいんだから。


「アルヴァに例の石を見せてあげてほしいんだけど」

「アルヴァ? あの男か?」

「そうそう、長生きしてて怪しいものにも詳しいから」

「長生き……アルヴァ……ああ、ブラックメイガスか! なんだ、そんな化石が生きていたのか⁉」

「まあ、色々あって協力関係よ」


 私の説明にハーヴェイは頷くと「よし!」と声をあげる。


「いいぞ、面白いから連れてこい。余が許可する」

「ま、魔王様!? 危険です!」

「何が危険だ。たとえブラックメイガスが暴れようと余が制圧してくれよう」


 うん、まあ。もう私が制圧済なんだけどね。たぶん暴れないと思うわよ。たぶん。

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