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そろそろ動き出すって話

「あー、終わった終わった」

「楽しかったです!」

「そう? 良かった」


 大量の服を抱えてリビングに戻ると、ドサッとソファに置く。

 私の分はもう収納してあるから、これはミーファの分。

 早速どれを着るか選んでいるミーファを見ていると、とてもお姫様だなんて思えないんだけども。


「本当……どれも凄い服です! 魔法裁縫士だって、これほどのものは作れないと思います!」

「……良く分かんないけど、そんなことないんじゃない?」


 ていうか魔法裁縫士って何? なんか知らん職業が出てきたんだけど。後でアルヴァに聞いとこ。


「いいえ、いいえ! この生地も縫製も、私には理解の及ばない高い技術と材料が使われています! それに、たぶん魔法もかかってます……これ一着で国宝級ですよ!? そんなものを、こんなにたくさん……!」

「あはは……気にしないで。いつまでも私の服ってわけにもいかなかったし」

 

 うーわ、此処で手に入る物売り払おうとか考えなくてマジでよかった。

 私の流儀じゃないからやらなかっただけだけど、やってたら本気で凄いことになってただろうなあ……。何、国宝級って。


「そういえばアリスさまの服も凄い服ですよね。可愛らしいのもそうなのですが、なんというか……えもいわれぬ迫力を感じます」

「そっか」


 今の私の服はいわゆるデフォルト……パッケージデザインにもなっている服だ。

 衣装のほとんどがネタ衣装で気に入らなかった私が、ずっとデフォルトの服でやっていたせいもあって、かなり愛着はある。

 ……あの頃は、こんなことになるなんて思わなかったなあ。

 そういえばあの勇者君だっけ、今何してんだろ。なんかもう顔も思い出せないけど。

 そうやって頭を使っているとなんだか疲れて、空いているソファにぼふっと座り込む。

 すると当然のようにミーファも隣に座ってくる。いや、いいんだけどね。


「アリスさま。何かお悩みですか?」

「ん? んー……悩みのない人生を送りたいなあって」

「悩みのない人生、ですか」

「うん」


 人生には目標が必要だ、とかいうけども。私にはそんなもの、一切ないのだ。

 

「悩みあってこそ人は成長するというがな」

「出たなアルヴァ」


 予告も無しに現れるアルヴァも、もう慣れたものよね。というか、生き字引っていうかなんていうか。一家に一台みたいな……。


「何かロクでもないことを考えている顔だ」

「凛々しいお顔ですよ、アリスさま!」

「ありがと、ミーファ。アルヴァは不合格」

「意味が分からん」


 大丈夫、私も意味が分からん。というかアルヴァに褒められてもなんかゾワッとするかもしれない。


「そもそもねー、私個人には悩みなんかないのよ」

「無いという事は無かろう」

「あのね、アルヴァ」


 私は立ち上がると、びしっと可愛いポーズをきめる。


「衣食住に不自由せず、趣味で冒険者とかやってて、しかも美少女。これだけ揃ってると嫌味なレベルだっていうのに、悩みが発生するはずもないでしょう」

「頭が悪いだろう?」

「言うほど悪くないわよ」

「そうだな。頭の悪い奴は皆そう言うんだ」

「あのねー! 私だって足し算引き算に掛け算割り算くらいは出来るんだからね!?」

「ほう。ならばゴブリン97匹のうち剣士が15匹、弓士が7匹倒した。そこに追加のゴブリン5匹が現れた時、魔法士がこの戦いを決しようとした場合に倒さねばならないゴブリンは何匹だ?」

「え、待って。97から15引いて7引いて、そこに5を足すのよね」

「アリスさま、80です」

「80よ!」

「……貴様がそれでいいなら構わんが」


 ぐわー! ムカつく! でも計算面倒じゃないの!


「そこで97から17を引けばいいだけの話だと分からん貴様は間違いなく馬鹿だろう?」

「うぐぐぐぐ……私は良いのよ、そういうのは。他が全部揃ってるから」

「でもアリスさま。計算能力は必要だと思います」


 うっ、正論! いい子から放たれる正論が心に突き刺さるわ……。

 出来ないわけじゃないのよ。時間がかかるだけなのよ、計算機世代だし……。


「大丈夫です、アリスさま。私がお側でお手伝いしますから!」

「そ、そっかあ……」


 ミーファに凄いダメな人と思われてそうで辛い……そこまで酷くないから。でも言えない……。


「まあ、多方面から検証できる貴様の愚かさはさておいてだ。そこの姫の件、そろそろ何かが動き出すなら頃合いだろう。外に出てみたらどうだ?」

「いいけど……面倒ごとにならない?」

「なるだろうな。だが多少の面倒ごとなど、貴様なら問題にならんだろう」


 いや、そうかもしれないけど。私が面倒なの嫌なんだけど。あのメガネがどうにかするの待ってたらダメなの?


「これはあくまで俺の勘だが、どうせ貴様を中心に物事は回るぞ?」

「な、なんでよ」

「貴様は実力を示しているからな。多少手荒く使っても使い減りしない、便利な駒だ」

「うーわっ……」

「しかも貴様の中身がどれほどクソ化け物であろうと、見た目はか弱そうな人間の少女だ。こんな絶好の罠、使わない手があると思うか?」

「クソ化け物の力、もう1度アンタで実演してやろうかしら」


 あのメガネもぶっ飛ばしたいけど……それやったらもっと面倒ごとになりそうなのよね。

 あーあ……何で世の中、こんなにもめ事が多いのかしら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 100話達成おめでとうございます! いつも楽しませて貰ってます [一言] なんだかんだいって世間に関わっているんだから、こんな力を持った化けも・・・ゲフンゲフン!美少女、放っておかれないで…
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