強盗さん絶不調
以前書き上げた短編からの移動です。
よろしくお願いいたします。
とある田舎のコンビニ。男が覆面を被り、店の中に入ってきます。
「いらっしゃーせー」
「強盗だ!!!かn「てめえ!わたしが見えねえのかよ!!!くそが!!!後ろ並べやごらぁ!!!」
なんということでしょう。カップラーメンを買っていた地味なお姉さんは元ヤンのお姉さんでした。
「ほほ包丁もってんだぞぅ……ど、ど、どけよぅ……」
「聞こえなかったのかてめえ!!!表で話し合うか?あん?」
強盗さんはスッっと気配を消して、御姉様の後ろに並びました。賢い選択ですね。
そうこうしていると、御姉様は舌打ちを店内に響かせながら出ていきました。御姉様は今年で29歳。結婚相手が見つからなくて荒れているんですね。
と御姉様の事は置いておいて、いよいよ強盗さんのターンです。
「ゴホンウヴン。ご、強盗だ!金を出せ!」
「あー金っすか……さっき金庫にしまっちゃったんですよねー」
おっとっと。それを教えてしまうんですね。もしかすると犯人を落ち着けるための作戦なのでしょうか?
「じゃあそれ出せや!」
「いやー店長じゃないと出せないんすよ」
「店長だせやごらぁ!!」
男は逆上してしまいました。さっき御姉様にキレられていた人とは別人のようですね。
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「うーん」
「いや何で溜めたんだよ。呼ぶだけだろ。」
「金より価値のある物目の前に有りますよ。」
何なんでしょう?強盗さんも目が見事に点になっています。当たり前ですよね。答えは何なのでしょう?
「俺っす」
「……はっ?」
「いやだから俺っす」
食いぎみに答えられても分からないですよね。人体を売りさばくぜ!ベイベ!みたいなサイコパスな回答はとてもじゃないですが、なろう小説では書けません。
「俺、バンドやってるんで!ラッキーっすねおっさん!」
「えっ?はっ?んっ?」
「俺に出資して、BIGなバンドを作ろうって事っすよね。」
「……違うけど。」
おっさんと言われたためか、はたまた話に着いていけていないのか、絶対零度の声でおっさんが答えます。
「チッ……違うのかよ……やってらんねえわ。今日はもう上がりますーお疲れしたー」
切れやすい現代の若者は、あっけにとられているおっさんのすぐ横を通り、店から出ていきます。
強盗さんを通報するために、店から出ていったのかな?と考えるあなた。店員さんは店のゴミ箱に八つ当たりしながら家まで帰っていきました。誰がかたづけるんでしょうね。これ。
「店長!いるんだろ店長!」
「……おーい。店長さーん?」
「はいはいはい。いらっしゃいませ。冷えるねぇ今日は。」
「強盗だ!!!金出せ!!」
仕切り直しです。強盗さんもう後には退けません。頑張って下さい。
「ちょっと待ってねぇ……ごう・とう さんね……」
5分後
「ごう・とうさん注文頂いてないですけどね?金のインゴットですよね?」
「ちがうわ!こちとら5分おとなしく待ってたんやぞ!きんじゃなくてかねだわ!小説でしか分からない間違い方するな!」
「じゃあかね……?60センチぐらいのやつお取り寄せするんで電話番号お伺いしても?」
のんびりした店長さんですね。午前中に良く来るお年寄りの皆様から大人気の理由が伺えますね。
「もういいわ!ちくしょえ!」
走り去って行く強盗さん。賢明な判断ですね。
こうして人知れず強盗の危機は去ったコンビニ。まだまだ私も建物として頑張らないと。雨漏りするけど。
~数日後~
「あっもしもし~ごう・とうさん?打つタイプの鐘が出来上がりましたけど」
「何で電話番号知ってんの?怖い怖い!!」
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