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アイドルジョッキー弥生は、1番人気でGⅠレースを勝てるのか?  作者: 勒野宇流
11月(ジャパンカップ)
15/45

(15) 錯綜する騎乗馬、イアンの場合

 

 マイルチャンピオンシップは馬連、馬単、3連複、3連単が万馬券だった。3歳馬のスカイアンドシーが12番人気で2着に入ったためだ。

 

 2歳時に重賞を勝ち、3歳春にも勝った実力馬だが、同世代の中ではすでに二線級に見られていた。そのスカイアンドシーが、惨敗した菊花賞から古馬戦線に乗り出して2着。マイルチャンピオンは、今年の3歳勢の層の厚さをあらためて強調する一戦となってしまった。

 

 そしてジャパンカップの週に突入した。3冠馬タイムシーフ、そしてその好敵手のフレアとシルバーソードの回避で、少々盛り上がりに欠けるものとなったが、その年の東京競馬を締めくくるGⅠレースで、注目の大レースであることに変わりはなかった。

 

 この年、ちょっとした話題になったのは、その乗り替わりの複雑さだった。高レベル世代の3歳勢が大挙出てきた関係で、古馬とかち合った。さらに外国人ジョッキーは外国馬からも依頼を打診されていて、その3方向から板挟みとなっていた。各有力ジョッキーがどの馬を選択するのかが、注目された。

 

 最もそのことに直面したのはイアンだった。天皇賞を勝ってマイルカップとの2冠馬になった3歳牝馬のワイドレナ。そして同じ3歳勢で、リュウスターもいた。古馬のお手馬は実績が落ちるので切り、有力外国馬からの騎乗依頼も早々に蹴った。

 

 ワイドレナとリュウスター。どっちを選ぶのかが注目された。実績ではワイドレナだ。リュウスターがGⅠ勝利1つのところ、ワイドレナは2つ勝っている。しかも1つは古馬との混合戦。それもGⅠ中のGⅠ、秋の天皇賞とくる。

 

 適性の点で考えると、これはちょっと難しい。ワイドレナは2つのGⅠ勝利に加え、毎日王冠も勝っている。東京コースで1600メートル、1800メートル、2000メートルの重賞を勝っているのだ。対してリュウスターは東京の重賞で勝ってなく、2着が2回。あきらかにワイドレナが実績上位だ。

 

 しかしワイドレナはこれまで2000メートルまでしか経験がない。2400メートルは未知の距離になる。それに対してリュウスターは、ジャパンカップと同じ東京2400メートルのダービーで2着だ。実績があった。

 

 どちらも3歳馬で、まだ先がある。馬券圏外の着順は、これも2頭とも各2回。どちらの厩舎もリーディング上位トレーナー。さまざまな角度から見て、甲乙つけがたい。こうなればあとは、ジョッキーの選択に任せるしかない。

 

 イアンは、自分が感じたものに従おうと決めた。客観的なデータで選べないのなら、自分の感覚を信じるよりない。今までそれで、この地位まで来たのだ。

 

 そして、リュウスターを採った。菊花賞の惨敗は4コーナーで勝負を諦めただけで、そのタイム差ほどの開きはない。そして今年は無理でも、来年はあの同世代3強の一角に入り込み、そして負かせるだけの潜在能力を持っている。なにより感じたのだ。2歳時のGⅠ朝日杯で。歴史的名馬になるだろうと。それに従っての決断だ。正直、ワイドレナには、そこまで強く感じなかった。桜花賞で7着に敗れたときに、手放そうと思った馬だ。たまたま他に騎乗馬が舞い込まず、マイルカップでも乗ったが半信半疑だった。

 

 しかしこの判断に、世間はおどろいた。直近の天皇賞を勝った馬をフッたのだ。たしかにリュウスターはダービー2着馬だが、多くの者はワイドレナを採ると考えていた。

 

 ―― 周囲がおどろいたのであれば……。

 

 イアンは思った。

 

 ―― なんとしても好成績をおさめないとならないな。

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