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何かが違う異世界転移  作者: やせたかなしい
とりあえず生き抜く
6/13

魔法の訓練

 アリスが眠りについたので、洞穴の外で魔法の実験を行うことにした。

 これが異世界能力なのかと、キラはテンションが上がっていた。やっと俺Tueeeeの時代が来たと。


 まずは目を瞑って"気配察知"の魔法を試してみる。ハチ親の核を取り込んだ影響なのか存在力が上昇している気がする。半径500m程の範囲なのだが、存在する多数の生物を察知している。これでは気配が多すぎて何が何か判らない。このままでは使えないと判断し対象をカラス以上と限定するイメージで再び試した。

 今度は、察知範囲に20ほどの気配を感じた。その中で1番大きな気配に意識を集中してみた。


「ぎゃっ!!巨大蛇!!!!」


 気配を感じたのは前方の池。恐らく池のヌシなのかもしれない。巨大蛇に意識を集中した途端、その気配がキラの方向に向かってきた。キラは危険を感じたため、走ってその場を離れ森の中に移動した。

 池に入るのは危険なのかもしれない。水浴びをする時は気配察知が必須だと思った。

 そして森の中から再び"気配察知"を試みる。巨大蛇の気配はキラから離れて行った。


「おぉ。ヤベぇ。"気配察知"で特定の気配に意識を集中すると、相手にも気付かれるかもしれないな。次は弱そうな小さな気配で試してみるか。」


 ハチを呼び、装備を整えて弱い魔物を探しに行く。


 "バウ!"

 ハチがそこの木の上に黒眼鳥が居る。と教えてくれた。キラは目を瞑り"気配察知"を発動させて木の上の黒眼鳥を感知する。(居た。コイツだ。ピンポイントで意識を黒眼鳥に向けてっと。)

 察知で意識を向けると鳥は飛んで逃げて行った。

 次は目を開けて"気配察知"を発動させてみた。魔力への意識が浅いのか、感じ取れる範囲が100m程度と狭くなった。最後に歩きながら軽く"気配察知"を発動する。常時展開が可能か調べるためだ。

 感じ取れる範囲は20m程度となった。察知対象をカラス以上と固定するため、散策をしながら繰り返し練習をした。


「ハチは魔物の気配など判るのか?」

"バウ、バウバウ"

「臭いや気配で判るのか。範囲はどれぐらいなんだ?」

"バウ・・・バウ!"

「ここから、あの木付近まのでなのか。100mぐらいだな。」


 ハチの能力を色々と質問しながら森を歩く。薬草を見つけては採取する。ルコの実も一緒に採取した。ハチに食べられる食材があれば教えるように指示した。


「なあ、ハチ。塩って分かるか?」

"バウ?ババウ?"

「そうそう。そのニガ辛いやつ。」

"バウバウ"

「白い草食獣が集まる所で見たって?そこに行ってみようか。」


 ハチの案内で白い草食獣が集まる岩塩ポイントに向かっていると、はるか前方に複数の白い獣が見えた。

 目を開け意識を集中して"気配察知"を発動する。すると前方には4つの気配を感じ取れた。その1つに意識を集中してみる。なんとその気配は[山羊]だった。

 何とかして捕まえたい。食べてもいいし、家畜にして乳を飲むのもいい。


 一度、山羊から遠ざかり麻痺して捕獲するため"電撃"を練習する。軽く出してみる。パチパチと掌で小さなアーク放電が発生している。その状態を維持して、目前の木へを指してアーク放電を誘導してみる。体力がガリガリと削られるのを感じる。だが、放電が徐々に目前の木へと誘導されていく。あと少し、もうあと少しと思いながら意識を集中して放電を誘導する。木の根元まで放電が誘導された瞬間にキラは意識を失った。


 どれぐらい意識を失っていたのだろうか。酷い喉の渇きと空腹で目が覚めた。周囲を見渡すと、ハチとサル、そしてカラスが居た。


「ハチ。俺はどの程度意識を失っていたんだ?」

"バウ…バウン"

「ああ、すまない。魔法を使いすぎたみたい。え?2日も寝ていたのか!?」

"ウキィ…"

「サル。お前まで心配して駆けつけてくれたのか?」

"カァ、カァ、カアカアァ"

「カラスもありがとう。アリスに薬草とルコの実を届けてくれてたのか。彼女は大丈夫なのか?」

"カァ、カカア"

「そうか。洞穴で待っているのか。」


 サルに"雷撃"の件を伝えて状況を聞いてみた。恐らくこの魔法は、瞬間的にアークを放つ使い方だそうだ。少量とは言え、放電を出しっぱなしする事は魔力を垂れ流しにすることと同じで、枯渇して意識を失ったのだ。と言われた。

 そもそも"雷撃"は、成体の一角狼が使う珍しい魔法らしい。核を取り込めた事も奇跡なのだが、人間が"雷撃"を使用するのは、適性も無く、本当は不可能なはずだ。とも言われた。


「そっかぁ。もう少しで何かが掴めそうだんだけどな。次から気を付けるよ。」


 山羊の集まる場所へ三匹と向かう。可能なら捕獲して、無理なら倒して持ち帰る。

 カラスが先行して上空から山羊の監視と指示をする。ハチが追い込んで、サルが木の上から捕獲する。

 そして俺の雷撃で麻痺させてから捕縛する作戦だ。


「よし。みんな頼むぞ。ハチは山羊に蹴られないように注意しろ。サルは捕獲が無理なら倒しても構わない。それも無理なら逃げるように。」


 三匹に指示をだし、山羊を待つ。目を瞑った広域気配察知で岩塩ポイントへ近づく気配を探る。個別察知は気付かれて逃げる可能性があるため行わない。

 1つの気配がポイントへ向かっている。カラスに合図を送る。

 上空で旋回をするカラス。そして岩塩ポイントに寄った瞬間、急降下して山羊を驚かしハチへとつなぐ。

 ハチは吠えながら山羊を後ろから煽る。サルの待機する木へ右へ左へと移動しながら何度も吠える。

 サルの待機する木に向かう山羊。そして近付いたその時、サルが山羊の背中に飛び降りた。

"メエエエェェェェ!!"

 サルと山羊は転倒し、もみくちゃになっている。キラは走って向かい山羊の首を捕まえた。

「サル!離れろ!」とキラが叫び、サルが離れた瞬間"電撃"を発動した。


"メ!!"


 山羊が声にならない叫びを上げて失神した。

「よくやったみんな!」

 葉っぱと紐で目をぐるぐる巻きにして山羊に目隠しをする。そして首に縄を結び、付近の木へと結ぶ。

「これで一安心だ。山羊の乳が飲めるぞ!」


 あとは岩塩を採取して洞穴に戻ろうとしたその時、カラスが山羊接近と報告してきた。

「くっ。もう一頭現れた。カラス、ハチ、サル。そいつも捕獲するぞ!」


 二度目の連携は見事だった。同じぐらいの大きさの山羊をもう一頭捕獲することが出来た。

 そして岩塩を大量に採掘して背嚢に詰め込み、山羊の所へ戻る。

「さて、起きるのを待つかどうするか...そうだ電気ショックで目を覚ますか。」

 キラはアークを誘導する練習を兼ねて、山羊から少し離れてアークを飛ばした。

 瞬間的にスイッチを入り切りする感覚で山羊(1)に軽い"電撃"を放つ。

 1発目は山羊(1)の手前に着弾した。

 2発目は山羊(2)の横に着弾した。

「難しいな。もう少しなんだけどな...。」

 結局、山羊に触れて軽い電気ショックを与えて目覚めさせた。山羊は暫く頭を振り暴れていたが、目隠しをされている事もあり、観念して大人しくなった。


「よし。落ち着いたみたいだな。みんな洞穴に帰ろう!」


 縄を引き2頭を引き連れて洞穴へ戻る。道すがらサルに金色の実の事を尋ねる。

「サル、金色の実ってどこにあるんだ?」

"ウキウキキ"

「ルコの実の中に稀に実っているって?黄色の中に金色なのでよく見ないと判別出来ないのか。」

"ウキ"


 ルコの木も数か所しか生えている場所を知らない。気にせず採取してたけど、金色の実があったのかもしれないな。と考えながら戻った。


─━─━


「ご主人様ぁぁぁ!!」

 アリスが洞穴の入口からキラの姿を見かけたので、心配のあまり叫んでいる。


「アリス。すまない。魔法の加減を失敗して失神してしまった。」

「ご無事ならいいんです。私は、たとえご主人様に捨てられても失うはずだったこの命、惜しくはありません。悔やむとすればお役に立てなかった事ぐらいです。」

 アリスは泣きながら、懸命に伝えてきた。


「アリス。顔の火傷の出血が止まったのか?」

「はい。頭も身体も出血は止まりました。痛みも少ししかございません。これもご主人様に治療を施して頂いたお陰です。」

 火傷によるケロイド状はそのままなのだが、出血が止まり生命の危険から脱したようだった。


「よかった。これで少し安心したよ。あと...その...非常に言いにくいんだけど、少し臭うので水浴びをと着衣を洗おうか...」

「はい...」


 山羊の縄を柵に結び。逃げないようにする。

 焚火は強めにして服を乾かす準備をする。着火はアリスの魔法でお願いした。


「この池には巨大蛇のヌシが居る。俺が警戒するので"危ない"って言ったら、即座に陸に上がり洞穴に向かうんだ。」

「はい。承知しました。ご主人様。」


 アリスが水浴びと洗濯をしている間、100m範囲の気配察知を行った。

 彼女は念入りに身体を何度も洗っている。臭いって言われて気にしているようだった。失言だったと思う。


 アリスの水浴びが終わったので、キラも水浴びと洗濯をした。気配察知を行いながら。

 少し先の水面をみると魚が泳いでいる。ふとネット掲示板で見た"バッテリー漁"を思い出した。

 電撃で山羊を失神させたなら、魚はもっと簡単なのでは?と考え、何気なく両手を水中に入れて"電撃"を強めに一瞬発動さてみた。


"バチバチバチ!!"


 水面をアークの蛇が縦横無尽に駆け回る。すると、プカプカと十数匹の魚が浮いてきた。


「あはは!こりゃいいや!今日は魚が食べられるぞ。」

 浮いた全ての魚を捕獲して洞穴に戻る。


「あ、しまった。二人とも洗濯しちゃったね...」

 ハスに似た大きな葉を身体に巻き、原始的な服にする。


「ごめん。替えの服が無くて洗濯後の事を考えて無かった。」

「いえ。ご主人様。こんな身体にお気遣いは無用でございます。」

 表現は非常に悪いのだが、上半身は人とは思えない状態である。しかし...下半身は綺麗なため、目のやり場に困る。

 

「魚を捕ったんだ。岩塩も採掘したので塩焼きにして食べよう。」


 日も暮れだし食事を終えた。あとは寝るだけとなる。焚火に薪を追加する。明日の朝には服は乾くだろう。パチパチと薪の焼ける音だけが響く。

 キラは地面に寝そべり、魔法や今後の事を考える。するとアリスが

「ご主人様、私の膝をお使い下さい。」と言ってきた。

「ん?あぁ膝枕をしてくれるのか?」

「はい。今、私に出来ることはそれぐらいなので。」

 キラは素直にアリスの横に座り、寝転んで焚火の方に向かって膝枕をしてもらう。

(や、やわらかい!これが噂の膝枕か!)

 アリスがキラの髪を優しく撫でる。

(あぁ、心地いいな。眠くなってくる。)

 キラがウトウトとして睡魔に勝てず意識を手放した。そして寝返りを打った。つまり女性側に顔を向けたのだった。

 アリスの身体がピクンと反応する。しかしキラは微睡みの中で幸せそうな表情をしている。

 キラはアリスの膝枕で夜を明かした。


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