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何かが違う異世界転移  作者: やせたかなしい
とりあえず生き抜く
12/13

異世界と言えば冒険者ギルド

 "冒険者ギルド"は西部劇で見たことがある酒場に似ていた。

 規模は大きくなく、支所や営業所などの規模だと思う。


 緊張しながら木造のドアを開け、キラは中に入った。

 ギルドの中には数人の冒険者と思われる人たちがテーブルで酒を飲んでいる。

 見慣れない顔が入ってきたのか、冒険者達は全員キラを見ている。

(こえぇぇ。DQNが集まるゲームセンターに入った気分だ。)


 キラは転移前にコンビニ前でDQNにバイクで轢き殺された。

 今も強面や荒い言葉にはトラウマとも言える恐怖を感じる。

 だが、情報が必要だし身分を証明する物も欲しい。

 勇気を振り絞って受付と思わしきカウンターへ向かった。


「すみません。」

「なに?」

 ビックリするぐらい無愛想な職員は

 ほうれい線の目立つ50歳前後と思わしき金髪の中年女性で、たわわに実った胸が印象的だった。


 ゴクリ…

「こ、こちらで冒険者登録って出来ますか?」

「はぁ?この出張所で登録するのかい?」

「はい。お願いします。」

「チッ…面倒な…」

 女性職員は、文句を言いながら書類を用意しだした。


「じゃあ、推薦状か身分証を出しな。」

「え?」

「え?じゃないよ。どこの誰だか判らないヤツがギルドに加入できる訳ないでしょ!」

 ラノベの読みすぎなのか、冒険者ギルドは誰でも登録出来ると思っていた。


「ふん。この田舎者が。さっさと帰りな!」

 職員に怒られ引き下がろうとしたが、キラはある行動に出た。


「あの…。」

「なに?まだ用があるのかい?」

 キラは財布袋から金貨を1枚"コソッ"と職員の前に置いた。


 職員は黙り、何も言わなくなった。


 ………

 ……

 …


 暫く沈黙が続く。

 キラはもう1枚金貨を置いた。


 すると職員が金貨を取り、何も言わず書類を書き出した。

 キラはカウンターの前で待機する。


「ここに名前を書きな。」

 キラは心の中でガッツポーズをした。


「あの…。」

「あぁ?なんだい?」

 職員がイライラしてるのを感じる


「字が書けないのですが。」

 そう言ってキラはもう1枚金貨を置いた。


「もぉぅ。仕方の無い子だねぇ~。」

 急に職員が驚くほど機嫌良くなった。


 キラは簡単な質問に答え、職員は書類を作成する。

 そして銅板が差し込まれた魔道具の宝石に触れるように言われた。

 すると宝石が光り銅板を取り出すと下記の文字が書かれていた。


 ━━━━━━━━━━━

 <ギルド会員之証>

 名前:キラ

 年齢:25歳

 出身:グンマー村

 職業:採取師 

 階級:F

 貢献:F

 所属:トシバの村

 番号:ⅡⅣⅧⅠ

 ━━━━━━━━━━━


 作成されたギルド証の説明を受ける。


 証を紛失した場合は、所属地ギルドまで行かないと再発行が出来ない。

 魔力を注ぐと文字が光り、公的に本人証明を行える。

 階級(ランク)は能力を表し、S・A・B・C・D・E・Fの7段階。

 貢献は信用度を表し、S・A・B・C・D・E・Fの7段階となる。

 ランクに関わらず、年に一度は所属地ギルドで更新する必要がある。

 所属地の変更は可能。

 階級及び貢献の査定基準は非公開。

 番号はカードの管理番号だから気にするなとの事。

 他は自己申告の内容が表示されるだけ。

 冒険者は自由民となるので、国境を自由に移動できる。

 遵守法令は、滞在国法令に準ずる。

 一定階級から指定役務への義務が生じる。

 など、組織化された規約を沢山説明された。


「規約詳細は、この冊子を見るんだよ。依頼を受けたい時は、そこのボードから推奨や指定階級に合致したものを選びな。無理をすると死んじまうからね。気を付けるんだよ。」

「はい。ありがとうございます。お姉さん。」

 キラは職員にお礼を言って、明日にもう一人登録したい事を伝えた。


「あら、やだ。この子ったら。明日も窓口を担当してるから、昼過ぎにおいで。」

「はい。また明日、会いに伺います。お姉さんのお名前をお聞きしてもいいですか?」

 キラは女性職員の胸を凝視して鼻息が荒くなっていた。


「エッチな子だね。どこを見てるんだい。もぅ。アタシの名は"モンロー"宜しくね。」

 モンローはキラを手を握り、自慢の胸に"ぎゅっ"と押し付けウインクをしてきた。


 ギルドを出る時、周囲の冒険者は"ゲラゲラ"と笑ってたり"ババアハンター"などと言っていた。

 だがキラは初めての胸の感触に酔いしれて、周囲の嘲笑に気付かず退出した。


 冒険者ギルドを出て、薬屋へ向かう。

 アリスの火傷治癒に少しでも効果がある回復薬を探すために。


 薬屋は古い木造で規模は小さく、今にも潰れそうな感じがした。

 店内に入ったキラは、カウンターのショートカットの少女へ声を掛ける。

「すいません。」

「はい。いらっしゃいませ。」


 家の留守番でもしているのかな?と思いながらキラは質問をする。

「こちらはどんな薬を置いてますか?」

「ん~と、今は大半が品切れですが、材料があれば色々な種類が作れますです!」


・下級回復薬 銀貨1枚

・中級回復薬 銀貨5枚

・下級解毒剤 銀貨1枚

・中級解毒剤 銀貨5枚

・下級体力剤 銀貨1枚

・中級体力剤 銀貨5枚


 小さいのにしっかりとした少女だなと関心した。

「火傷の傷跡に効果がある薬ってどれですか?」

 キラは少女に質問しながら

 屈んで開いたシャツの胸元をチラチラとみる。


「ん~と、中級回復薬だと軽度の傷病には効果が出ますです。下級は二日酔いや風邪程度にしか効果がないです。解毒剤は毒の強さに応じて等級を選択しますです。体力剤は…」

 少女はキラの視線に気付き"ぷくっ"と頬を膨らませた。

(か、可愛い!つるぺたで何も見えなかったけど。)


 キラは相手が少女ということもあり、くだけた話し方になっていた。

「あ、あ、そうなんだ。じゃあ、中級回復薬を2本貰おうかな。」

「え!買ってくれるんですか!」

 少女が謎の小躍りをして喜んだ。

 動きも可愛いなと思いながら、キラは「また来るよ」と言って金貨1枚を支払い店を後にした。


 薬屋を出たキラは、村を出てアリスの待つ雑木林の野営地へ向かった。

 街道から外れた場所のため、誰かが通ることも無く比較的安全な場所だった。


「アリス。戻ったよ。」

「おかえりなさいませ。ご主人様。」

 アリスに冒険者証を見せ、明日はアリスもギルドへ行って発行してもらうと伝えた。

 食事を取りながら、今日の出来事を色々と話し、そして後でアリスに中級回復薬での治療の件も伝えた。


 そして食事を終えて

「アリス、準備はいいか?」

「はい。ご主人様。」

「顔や頭皮は痛みなどが出た場合に辛いだろうから、体から塗ってみようか。」

「はい。お任せ致します。」


 馬車の中へと二人は移動しアリスが外套と服を脱ぐ。

 右半身はケロイド状で痛々しい。左半身は火傷の影響は無い。

 キラは右背中の傷へ中級回復薬を塗る。

「薬が沁みたり痛みはあるか?」

「いえ。ポカポカして気持ち良いです。」


 背中に中級回復薬を1本、塗り終えたのでアリスに正面を向くように言う。

「…あの、前は私が塗りますので……」

「いいよ。遠慮するな。傷の具合も確認したいし俺が塗るよ。」

「はい…。」


 アリスが手で顔を覆って正面を向く。

(ゴクリ…生おっ〇い…)


 左半身に火傷は無く、アリスの白く綺麗な肌があらわになる。

 キラは興奮しながら回復薬を手に取り左胸へと塗る。


「あの?ご主人様?」

 アリスは顔から手を外して、そっちじゃ無いと遠回しに伝える。

 キラは夢中で左側へ回復薬を両手で塗りこむ。


「あ…の…、ご主人様…そっちは大丈夫です…」

 鼻息の荒いキラは返事もせず、回復薬1本分を全て左側へ塗りこんだ。


「あ…もう薬がありませんが…」

 キラは左側を揉んだりつまんだりし始めた。


「ま、まだ日が暮れてませんので…」

 さすがにアリスに手を止められた。。


「ご主人様。ありがとうございました。あの…何か辛そうですが、大丈夫です?」

「ちょっと小便(嘘)に行ってくる。」


 そう一言残してキラは雑木林の奥へ消えて行った。


─━─━


 次の日、アリスと一緒に冒険者ギルドと薬屋へ向かった。

 昨日の女性職員へ"コソッ"と金貨3枚を渡し、アリスも無事に会員証を作成出来た。


 ━━━━━━━━━━━

 <ギルド会員之証>

 名前:アリス

 年齢:15歳

 出身:グンマー村

 職業:呪術師 

 階級:F

 貢献:F

 所属:トシバの村

 番号:ⅡⅣⅧⅢ

 ━━━━━━━━━━━


 無事にアリスも会員証を作成できた事に安堵し掲示板の情報を二人で見る。


「飛竜討伐(指:S・A)」

「(常)ゴブリン討伐(推:E)」

「商隊護衛(指:C)」

「(常)スライム駆除(推:E)」

「(常)ルコの実採取(推:D)」

「(常)薬草の採取(推:C)」

「手紙の配達(推:F)」


 キラは飛竜討伐の依頼を見た。


 ━━━飛竜討伐依頼━━━

 【指定階級:S・A】

 ・飛竜が近隣で目撃されています。

 ・家畜に被害が発生しています。

 ・人的被害の発生前に早期討伐を求む。

 ・討伐証明部位:尻尾先端

 ・報酬:大金貨50枚

 ・飛竜素材は高価買取します。

 ━━━━━━━━━━━━


 飛竜か…飛んでいる魔物をどうやって倒すんだろう?と考えながら他の依頼を見てみた。

 (常)は常時依頼で"推"は推奨する階級(ランク)

 "指"は、それ以上の階級でないと依頼を受けられない。

 ルコの実と薬草の採取が意外と推奨階級が高いことに驚いた。

 

 ━━ルコの実採取依頼━━

  <推奨階級:D>

 ・ルコの実の採取(最低数量5)

 ・破損は買い取り不可

 ・報酬:銅貨1枚/個

 ━━━━━━━━━━━━ 


 ━━薬草の採取依頼━━

  <推奨階級:C>

 ・薬草の採取(最低数量1)

 ・破損は減額買い取り

 ・報酬:銅貨5枚/枚

 ━━━━━━━━━━━━ 


 近くに居た冒険者にルコの実と薬草採取について聞いてみた。


 すると「ルコの実は採取は簡単だが魔物が好んで食べるため危険度が高い。」とのこと。

 そして「薬草は通称"嘘の葉"と呼ばれる植物の群生地にごく稀に生えている。その葉と薬草の識別が難しいのと群生地は魔物の生息地域に多く分布しているため、報酬と危険度が割りに合わない。」と言う理由で人気が無いらしい。


 他にも様々な依頼が掲示されていたが、物資の買い出しを行うために冒険者ギルドを後にした。


 先々でアリスの仮面に驚かれながらも食料や生活用品の物資を調達した。

 最後に再び中級回復薬を購入するため薬屋へ向かった。


 昨日の少女がカウンターに座っていた。

 また留守番でもしているのかな。と思い「家のお手伝いかい?偉いね」と褒めた。

 アリスの仮面姿に少し驚きながらも少女は立派に応対をする。


「もぅ!僕は店主なのです!立派な成人なのです。」

(僕っ子キターーーー!)


「えっ!それはゴメン。今日は中級回復薬を4本欲しいんだけど。」

「あと2本しか在庫が無いのです。材料が無くて調合できないのです。」

「君が調薬をしているの?」

「そうなのです。最近はルコの実や薬草が入手出来なくて困っているのです。戦需で国が大量に集めててギルドに依頼を出しても手に入らないのです。」

(小動物みたいで可愛いな)


 キラが少女を見てニコニコしていると

「聞いてるのですか?お兄さん」


「あ、ああ。薬草やルコの実なら持ってるぞ。」

「ええええ!本当なのですか?欲しいのです。」

「いいぞ。少しなら譲っても。」

「あ…でも…、この何か月か薬が売れなくてお金が無いのです。」

 少女は思い出したようにガッカリとした。


「あ~どれ位の薬草とルコの実が有ればいいんだ?」

「ん~と……。薬草20枚とルコの実が50個ぐらいあれば回復薬を何個も作れるのです。」

「手持ちで足りないことも無いが…」


「凄い!そんなに薬草とルコの実を採取出来るんだ!」

(美少女に褒められると嬉しいな)


「そうだ!お兄さんは冒険者ですよね?僕がお兄さんに素材採取の依頼を出すです!薬が必要みたいなので、報酬は回復薬を作って渡すのです。足りなければ、あとは兄さんが欲しい物(薬)なら何でもいいです!」

「え!?そんな適当な依頼と欲しい報酬(むふふ)で大丈夫なのか?」


 キラは鼻息を荒くしながら少女と話す。


「報酬(薬を作る)は大丈夫なのです。材料が無くてお店が暇だったので、僕がお兄さんと一緒に採取の旅に同行するのです。」

「そうか、それだけの覚悟(むふふな報酬)を持っているって事は、本当に困っていたんだな。よし、この依頼は引き受けよう。」


「ありがとうなのです。今日からお世話になります。僕は"ユウ"と言います。16歳です。ひ弱(僕は男)ですが色々と役には立ちます。」


「俺は"キラ"でこいつは"アリス"。ユウがひ弱(少女だから)なのは問題無い。宜しくな。」


 互いに色々な齟齬に気付かず、話は決まってしまった。


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