第4話 異世界でピンチは必需品
異世界に飛ばされたひろあきは今、住む場所を探しに隣町に来ていた。
「昨日は本当に散々な目にあったな……」
実技テスト後
教室に戻ると、B組の連中が廊下から声を掛けてくる。
「屁ーこきーあきー」
「あれが噂の屁こきあきか」
ひろあきは、B組の連中にバカにされていた。しかし中にはあまりの匂いにその時の記憶がなくなっている人もいたそうだ。
「屁こいただけでこんなにバカにするとか小学生かっての」
それにしてもなんでこうなるんだよ。大成は? 女子の顔面に屁ぶっかけたんだろ? それよかマシじゃないか……。
昨日は結局寝るところが見つからず、学校の体育館で寝る羽目になった。寒くて死にそうでした。
と、言う訳で住む場所を確保するのに、隣町の不動産屋に来た。金はある程度ロリ校長に貰い、余裕がある。しかし、不動産屋が隣町に行かないとに無いとは、さすが田舎。
片道三時間程歩くと、町が見えてきた。学園がある村と違って、それなりに発展している。
町の不動産屋に着き、扉を開ける。正面に新聞を読んでいるおっさんがいたので話しかける。
「すいません、住むところを探しに来たんですけど」
「お客さんか、そこに座りな」
僕は、おっさんと机を挟んで座る。
「住む場所に希望はあるかい」
「この金額で住める所なら」
ロリ校長に貰った金を出して見せる。するとおっさんは、少し険しい顔をした。
「この金額じゃ、隣の田舎しか無いね」
「あ、いいですそこで」
学校に通うんだから、近い方がいいだろう。
「じゃぁ、この中から探しな」
おっさんは、村の地図が載ってる紙を出して、俺の前に置いた。おっさんは所々ペンで赤丸を付けていく。ここが空き家と言うことだろう。
「えーと、ここが学校だから、一番近い所は……ここがいいです」
学校から一番近い所にあった物件に決めた。しかも、ちょっと大きいし。
「ここは、ルームシェアだけどいいかい?」
「あ、そうなんですか」
ルームシェアか、うん、悪くない。はっきり言って、この世界の事全然知らないから、常識のある人と住むのは好都合だ。美人さんなら、なおも良し!
「いいです、ここにします!」
「そうかい、家賃は今払ってくれれば、月ごと払わないていい事になってるから」
なにそれ、めっちゃお得じゃん、水道代とか払わなくていいんだ。
「じゃ、これで」
ロリ校長から貰った金と引き換えに、家の鍵を貰って、村に帰った。いやーワクワクするなぁ、どんな美人さんかなぁ。
帰り道はスキップで戻った。
「えーと、確かここだよな」
外見は二階建てで、基本的に木製で出来ている。扉の前に立ち、気持ちを落ち着かせている。
美人さんいるかなぁ、何人居るんだろう、男の人もいるかなぁ、いや、いらないなぁ。
少し浮かれ気分の心を整え、鍵を開ける。ゆっくりと扉を開き中を確認する。誰もいないかな。
「お邪魔しまーす」
「はーい!」
女性の声! これは期待できる!
足音がドタドタと近ずき、奥の扉を開けて出てきたのは、エプロン姿のカレン……。
「おい、何でひろあきがいる」
「それはこっちのセリフですよ、カレン」
「……」
「……」
なんてこったぁー。やらかしたー、完全にやらかしたよ俺、まさかルームシェアする家族が、クラスメイト! いやまて、これはこれで…………悪くない。
「なぁ、カレン、俺もここで暮らす事になったから、よろしくな」
「気安く話し掛けないで」
バタンッ、と扉を閉められた。前言撤回だ、この家は、最悪だ。
とりあえず、靴を脱ぎ、廊下を歩き抜け、正面の扉を開けて、中に入る。エプロン姿のカレン、料理を作っていた。それは分かる。しかし、ソファーには黒い物体が置かれていた。
なんだこれ?
その黒い物体に近づくと、黒い物体はこちらを向く。
「あれ? ひろあき!」
「何でそんなに黒いの?」
「いや、そこは「何でここに居るの?」 だろ!」
相変わらず黒い大成がなぜか、この家に居る、まさか、同じ世界から来た奴と住む所まで被るなんて。しかし、この展開はまずい、ここで何としても食い止めたい!
「ただいま」
俺の予想は的中し、一人の女性が帰ってくる。しかも、聞き覚えのある声。
扉が開き、黒髪でロングの女性が現れる。
「お、何で尻が居るんだ?」
「尻じゃないです、 ひろあきです」
リンさんは、尻ネタが気に入ったらしい。やめてくれよ頼むから。
「夕食出来たから、席ついて」
カレンが鍋をテーブルの中央に置き、リンさんと、大成が席に着く。俺も空いてる席に座る。
「ひろあき、そこは先客がいる」
「おい、また増えるのかよ」
リンさんが、何やらテーブルの下のボタンを押す。すると、俺が座ろうとした席が自動で後に下がる。
「おい、なんだこれ」
椅子がズレた場所の床が正方形に開き、下から、何かが上がってくる。
「おお、今日はなべかぁ!」
エレベーターの様に下から上がってきたのは、ロリ校長だった。
「あれれ? ひろあき君何でいるの?」
「かくかくしかじかです」
「なるほど、どうでもいいや! それより早く食べよ!」
どうでもいいなら聞かないでくださいね。イライラします。
誕生日席にロリ校長、その右に、リンさん大成、向かいに俺とカレンが座る。
「皆さん、お手を拝借!」
なんだそれ。
「「「「いただきます!」」」」
独特な食前の挨拶をして、僕は食事を口に運ぶ前に、カレンに話しかける。
「カレン料理出来るんだ」
「……」
「得意料理はなに?」
「……」
「おーい」
「……」
「なんか答えてー?」
カレンは、何も答えてくれない。
「コホンッ」
「ひろあきくんお話中ちょっといいかな?」
「いやいやお話って、俺が一方的に話しかけてるだけですけど……でなんですか?ロリこ、じゃなくて、校長先生」
ロリ校長と言いそうになった。危ない危ない、リンさんに殺されるところだった。
「じゃあ家も見つかったみたいだし、自分でバイトなりダンジョンなりでお金稼いでちゃんと返してね? 利子は10日で三倍でいいかしら」
「もちろん返しますよ……10日で三倍って言いました?」
「いいましたよ?」
「10日で三倍、三倍、さんばい……」
絶望に手に持っていた箸がこぼれ落ちる。
「確か300万借りてたからー……10日で900万?」
「……はい」
「もちろん、今日から20日間返せなかった場合は、2700万になりますね。」
「それを、言うなら借りる時に言ってくださいよ」
「まぁどんまい」
ここでカレンが初めて口を開いた。
「ああ見えて校長は金の事となるとあぁなのよ」
「まぁ俺も全くひろあきと同じ事になったけど、ダンジョン行ってレア鉱石やら赤龍の牙やらを取って来て売ってちゃんと返したさ」
「じゃあ俺もダンジョンとやらに行けばいいのか」
と、ここでカレンが口を開く
「けど、ここから最も近いダンジョンのディバニス洞窟までは馬車で飛ばしたとしても最低6日はかかるわ」
「まぁ、900万は校長に払うってわけだよ。屁こきあきくん!」
最後の『屁こき』は余計だっつうの
「しかし、どうやってその、ディバニス洞窟までいくか……」
「けど明日も学校だぞひろあき学校休む気か?」
「あぁ、そうだった、ここの学校の校則を見て貰えばわかるけど、ダンジョン攻略や、魔法に関しての遠出の場合は、学校にさえ連絡して貰えれば、1年365日中、360日までなら欠席を許可しているからな」
と、ロリ校長が話し出す。今更だがこのロリ校長の名前はロリーラ・ゼルティという。名前からして小さそうな名前だった。
「いやいやちょっと待ってください? それ1年の9割以上も休んでいいって事ですか? 学校ある意味あるんですか?」
「もちろん、学校では基礎的なことを教える。基礎的な知識とある程度の能力がないと遠出したって、のたれ死ぬだけだ」
てことは今ダンジョン行ったら俺、やばいんじゃなね? いや、大成でも行けたんだし大丈夫だろ。
「ところで大成どうやってダンジョン行ったの?」
「なんか、地図見せて貰って、ここいいなあとか思ってたら、いつの間にかダンジョン入り口前まで瞬間移動してた」
「なんなんだお前」
瞬間移動とかチートじゃね? いや大成ができるなら俺もできるはず!
地図を見せてもらい、場所を確認する。
「なかなか遠いな」
地図に書いてあるディバニス洞窟まで相当の距離があるのが分かる。俺は頭の中に地図に載っている場所を想像する。
すると、頭の中で思い浮かべた場所に吸い込まれる様な感覚に襲われ、浮遊感に襲われる。
瞬時に尻に衝撃が加わり、落下したのだと理解する。辺りを見渡すと、薄暗く、岩で出来ている壁。
ふと、光を感じる方を向くと、金色に光るトゲトゲしい鉱石があった。
(これ、ロリ校長が言ってた石じゃね?)
ロリ校長から教えて貰った外見と寸分変わらない鉱石を見つけ、あとは、これを持ち帰るだけだと思い近寄ると、鉱石の後に紫紺に輝く双眼が出現する。
目を見張り、暗闇から姿を表したのは、2つの首を持つ、黒く頑丈そうな鱗で覆われた龍だった。
「詰みですね」
人生を諦めた瞬間でした。
・シェアハウスのリビング
ひろあきが突然消えた事に驚いている一同。しかし、1人だけ不気味な笑を浮かべる黒い生命体。
「ひろあき君が急に消えたです!」
ロリ校長が叫ぶ。
「あ、心配しないでください、俺が洞窟まで飛ばしただけなので」
大成が言う。ひろあきは、自分の力で飛んだと思っているが、実は大成に飛ばされていた。