第3話 魔法の授業
思わぬ再開をした俺と大成。まさか地獄がここってこと?
「大成、お前地獄に落ちたんじゃ」
「はっ、何言ってんだおめぇ、あははっ!」
お前こそ何言ってんだ。さすが大成、いつも通り、キチガイMAXですね。
「冗談冗談、実は地獄に落ちた時さぁ……」
・大成 地獄編
「お、ここが地獄か、なんか予想と違うな」
そこは、よく会社とかにあるオフィスだった。綺麗に並べられた机の上にパソコンが乗っており、皆んなパソコンをいじっている。
「君、新人かね」
後から声を掛けられ、振り向くと五十代ぐらいのおっさんがいた。
「はい、新人です!」
何となく答えてみた。何の新人かよく分からんが、目上の人には社交辞令ってやつが必要だって聞いたぞ。
「そうか、ではこちらに来なさい」
おっさんの後について行くと、誰も座ってないパソコンの前まで連れてこられた。
「君、名前は?」
「大成です!」
「そうか、じゃ座ってこれ見といて」
イスに座り、おっさんがパソコンに電源をいれて、他の所へ行ってしまう。すると、画面に「地獄へようこそ」と出てきた。画面が移り変わる。
「えーなになに、ここは天国と地獄に行く人の分別や、資料をまとめる作業をしています? なんじゃこら、意味わからん」
とりあえず、画面に説明が書いてあるから、真似して操作してみる。なるほど、意味が分からん。おっさん呼ぶか。
「あのーすいませーん」
おっさんが来る。意味が分からないと言うと、おっさんは、マウスを掴み操作する。
「ここをこうして、ここを押す」
「なるほど、ここを押す……」
「まだ押さなくていい!」
いや、今押す言うたやん、何言ってだこのおっさん、頭いかれてんじゃねぇーの?
おっさんは、一通り今の分からんことをして、自分の所に戻っていった。
意味が分からん。パソコンを適当にいじっていると、㊙︎ファイル、と書いてあるファイルを見つけた。
(おいおい、こりゃ開けって言ってるようなもんじゃねぇか)
ファイルをクリックすると、色々な画像が出てきた。画像の下には、ドラゴンの世界、剣の世界、ゲームの中の世界、魔法の世界、と色々な世界が書いてあった。
魔法の世界って面白そうだな。クリックしてみると、ステータスと書いてある画面が出てきた。なんかゲームみたいだな、全部MAXにしてみよ。
次の画面に行くと、「準備はよろしいですか」と書いてある画面。クリックすると、パソコンの画面が真っ赤になり、オフィス全体から警報が鳴り響く。
「警報、異世界への不正アクセス確認、直ちに停止してください」
「なんだこれは!」
「誰がやった!」
「解析終わりました! 55番のパソコンからです!」
一斉に俺の方を向くオフィスの方々。同時に、俺の足元に魔方陣が発生し、回り出す。
「おい、お前何やってんだ! あのパスコードを解除したのか?」
「え、なんか、適当にやってたら出来ちゃった、あははっ」
おっさんが、怖い顔してこちらを向く。おうおう、毛細血管切れちゃいますぜ。
「大成、お前は絶対に逃がさねぇからな、異世界の果てまで追い回して、絶対に捕まえてやる!」
「はっ、出来るもんならやってみろ、ばーか!」
光に包まれ、目を閉じる、再び目を開けると、高そうなイスに座っていた。すると、目の前の扉が開く。茶髪の少女が入ってくる。
「し、侵入者ですぅ~!」
「お、おう」
・ひろあき5時間目
「と言うわけさ!」
大成が胸を張り、威張ってる。お前、地獄を敵に回してよくそんな気楽でいられるな、尊敬するぜ、肌の黒さ以外。
「お前らー、授業始めるぞー」
リンさんが呼びかけ、皆んなが集まる。
「たいせい、話はまた後でな」
「おう」
リンさんと、他の教師が前に立ち、AからCまでが並ぶ。こうして見ると、やっぱりC組って少ないよな。
「それじゃあ今日の授業は、昨日言ってあったと思うが実技テストを行う」
「合格した人から教室戻っていいっすかー?」
「ああ。合格したらな……後受かんなかった奴はC組に落とすからな気合い入れてけよ」
待て待て、そもそも実技テストってなにやるんだよ。魔法出すのかな?
ドォーン。
なんだか物がぶつかったような音が鳴り響く。
「合格だ。次……合格、合格、合格」
「なんだ? 魔法で? 的に当てろってのか? あんな遠くて小さいの無理じゃん」
とその時、大成が出てきた。
「じゃあいっくよーん」
と大成が言うとA組の人がなにやらざわつき始める。
「一発かましちゃってくれよ大成」
とその時だった。一瞬なにが起きたのかわからなかった。大成が手を前に出し拳を握った瞬間にあの直径50センチほど、距離は100メートルはあろう的が一瞬で砕け散った。
「合格だ」
「じゃあ教室戻ろうぜ」
あっという間にA組は、全員合格し、教室へもどってく。
「じゃあせいぜい頑張れよーい」
A組の人っち半端なく強いけど大成、お前は次元超えすぎじゃね? あいつが使えるだろうことは俺も使えるってことだろ。多分。
A組の人達言い方むかつくよなあ。見返したいなあ。
「おい、次は誰がやる? 早く出てこないか」
「先生、これって合格したらクラス上がるんですか? 合格できなかった人がCに落とすってことは……」
「まぁ、魔法の実力次第ではな」
カレンが先生に話しかける。
「じゃあ私行くわ」
「ちょ、カレン」
カレンが魔法使おうとすると。
「おいおいおいC組の癖になに威張ってんの? どうせ受からないんだからさあ」
B組の生徒が野次を飛ばしてきた。しかし、すごい言われっぷりだな、カレンっそんなに魔法下手なのかな。
「あんたちょっと黙ってなさい、消し飛ばすわよ」
「…………すみません」
B組弱っ。それよりカレン怖っ。なにあの目付き、人殺したことあるんですか?
「先生、お願いします」
「よし、やれ」
カレンが左腕を前に伸ばす、アイツ左利きだったのか。
「くっ」
おい、なんか苦しそうだぞ。大丈夫か、カレン。すると、的の数メートル横で空気が歪んだように見えた。
「……あっ」
カレンが間抜けな声を出すと同時に、空気が歪んでた場所を中心に、爆風が起きた。
「うわぁぁぉ!!」
数メートル吹き飛んだ俺は、何とか綺麗に着地して、爆風の発生源を見ると、地面が円状に穴が空いていた。
「はぁ、また失敗か、カレン。お前は、魔力量は多いいが、コントロールが出来ておらん」
「はぁ、はぁ…………」
すげぇ、疲れてるなアイツ。大丈夫かな。カレンの方に駆け寄り、声を掛ける。
「お前、大丈夫か」
「うるさいわね、あっち行ってて!」
お、おう。なんか機嫌が悪いですね。そっとしておいてあげよう。カレンはグランドの端の方に行き、俯いている。
その後、何人かが試験に合格し、教室に帰って行った。
「おい、ひろあき、あとお前だけだぞ」
「え、うそぉ」
周りに何人か残っていたが、ラストの俺を見ていくつもりらしい。まぁ、転入生がどれくらい魔法を使えるか気になるよな。ごめんなさい、全く使えません。
「先生、まだ俺、魔法の使い方教えて貰ってないんですけど」
「へぇー…………で?」
「え、だから出来ないんですよ?」
「だから?」
「えーと、やる意味ないと思うんですけど」
「それで?」
おい! あんたは、小学生か! 出来ないものは出来ないの! いいや、この先生は、何がなんでも、やらせる気だ。これ以上言っても、無駄だろう。
まあ、大成が出来たんだ、俺だってやろうと思えば、魔法ぐらいできるさ。
周りのクラスの視線が痛い。俯いていたカレンも、こちらを見ている。校内のベランダからも、A組の奴らが見ている。その中には、大成もいる。おい、大成、なんでお前は、そんなにニヤニヤしている。気持ち悪いぞ。
が、再び、前を向き、右手を突き出す。
大成みたいに右手出してっと、あの的を壊すようなイメージで拳を握るかな……
「えいっ……」
が、なにも起こらない。なんでもいいから魔法出てくれよおー、これじゃあこの学園の笑われ者じゃねーか。
と言いつつももう一度右手を差し出す
「えいっ……」
またしてもなにも起こらない。もういいや、やめだやめ。もう学校なんて放棄だ。
諦めてやめようと後ろを向き歩き始めた時だった。
「そんなんで諦めていいのか? 俺に負けて悔しくないのーん?」
この口調、この声、大成しかいなかった。
「もっとこう、お腹に力を込めてあの的をぶっ壊すイメージで拳を握るんだよ。わかるか?」
実にむかつく口調で上から目線の大成、しかし大成のようなキチガイに負けるのは絶対に嫌だ。
「最後だけやってみるか」
また、右手を前へ差し出す。
「お腹に力を込めてと、あの的をぶっ壊す……ぶっ壊す」
みんながひろあきに注目した。
「えいっ」
ぼおーん。
ぶっ、ぶりぶりっ。
それは同時だった。
「なんだ? あいつも大成と同じ魔法使えんのか?」
そう言ってまた一斉にひろあきに注目する。
だがひろあきは小さく疼くまっている。そう、ひろあきはやってしまったのだ
「やっちまった……」
説明しよう。ひろあきは、大成に教えてもらったようにお腹に力を込めて拳を握った時、的がこっぱみじんに砕け散ったと同時に超特大の屁をこいてしまったのだ。
それもみんなの前で……しかもよりによってカレンや他の生徒の前で。
が、皆なにも言わない。むしろC組の俺がこんな魔法を使えたことにびっくりしているようだ。
「あれ? 誰も気づいてないのかな?」
「よし、合格だ」
「あれ? 的がなくなってるんですけど……」
「今お前が見事に当て壊したじゃないか」
「へ? 本当に?」
とその時だった。
ぐぅーー。
「まずい、第二波が襲ってきた。こんな時になんで……」
「どうした」
「ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」
「あともう少しで授業が終わるから、我慢しろ」
なんてこった、これは、まずい。あ、でるよー、3、2、1。
ぶーーーー。
「おい、アイツいま屁、こかなかったか?」
「確かに聞こえたぞ」
「ち、違う、これは…………魔法だ!」
苦し紛れの言い訳。通じるだろうか。
皆が、静まり返る。なんだこの空気、おかしいぞ。なんか言えよおまえら。
「…………あ、くさっ!」
「うわ、くさっ!」
「え、お、くさっ!」
「くさっ!」
次々と犠牲者が増えていく。これは、終わりましたね。俺の学園生活。バッドエンドです。
その後、俺のあだ名は『屁』になった。
最悪だ。